無駄なことして生きている

 なんでもない日のパーティーはどうなったかと思えばどうやらユウがリドルに皆が思っても言わなかったことをぶちまけてしまったらしい。まだ入学してすぐだというのによくトラブルを起こす生徒だ。笑い事じゃありませんよ、とダイアモンドは言うが俺には笑い事にしか思えない。 「いいじゃん、寮の中がどんどん変わってくぞ」 「先生ってば自分の寮生にあまーーい」 「ユウのことか? あいつはそれなりに可愛い生徒だからなあ」 「可愛い生徒はトラブルメーカーなんですけど」 「魔法を持たないしここの常識も知らない子だからなあ。最初はめんどくさいと思ってたが、懐いてくれるとこっちだって可愛がるさ」  #名前2#の言葉にケイトは苦笑いをしてパーティーが終わりましたという報告を出して帰っていく。横で話を聞いていたトレインとクルーウェルは#名前2#をまじまじと見つめていた。 「あの……なんでしょうかね」 「#名前1#先生が一人の生徒に、いや、一人と一匹の生徒に入れ込むのは珍しいと思ったまでです」 「俺も。#名前1#は絶対に生徒を特別扱いしないし、名前で呼ぶこともなかっただろうに」  クルーウェルは笑ってそういうので#名前2#はニヤニヤとあいつ、青臭くて好きなんだよなあと笑う。下卑ているな、とトレインに言われてクルーウェルはも#名前2#も口を開けて大声で笑いだした。 「そりゃあ仕方ないですよ、トレイン先生。コイツの魔法的に」 「クルーウェルに言われるのは腹も立ちますけど、」 #名前2#はトレイを待ち伏せしたい、と言われたから図書室に張り込めと教えただけだ。そこからどうなったかなんて知らないですよ~と#名前2#は笑っていた。その後、クロウリーが職員のたまり場となっている秘密の空き教室にやってきた。あのトラッポラやスペードたちがローズハートに決闘を申し込むことになったらしい。学園長立ち合いじゃないか、と笑うと「もちろんハウスマスターの#名前2#も一緒にいてもらいますよ」と言い出した。 「おい! 俺は関係ないだろ、今は!」 「オンボロ寮の生徒も関係しているんです。これぐらいはしてもらわないと」  めんどくさいな、と思ったが面白そうなのは確かだ。仕事するか、と立ち上がるとクルーウェルが「金を払うから今日はこっちで食べる」と言い出した。 「おい、自分の家があるだろうが。鏡で直通にしてやっただろ」 「いいじゃないか。あのバッドボーイズたちが何をするのか気になる」  勝手にしろ、というと革の財布を取り出して金を渡してきた。私だって#名前2#の料理食べたいんですが!?という声は無視した。   その晩のオンボロ寮での夕飯にはクルーウェルもいたのでユウは「うわっ」と声をあげてしまった。もちろんグリムも「なんでお前がここに!?」と驚いている。 「#名前2#に誘われたんだ、それに……お前が何をやらかしたのか、興味があったからな」 「マスター……」 「いいじゃないか、来るのぐらい」 「でも、今日はエースたちもいるんですよ?」 「そう思って三人分は残してある」  後ろからエースとデュースも来てクルーウェルを見て「げっ」という顔をしていたが#名前2#の料理の方が大事だった。匂いにつられて「今日はなんすか?」と目を輝かせて聞いてくる。今日はたまごのスープにハンバーグだ。おなかすいたー、と最早固定になった座席に着いたのでユウも慌てて席に座った。はっとして#名前2#を手伝おうとしたが#名前2#は魔法で器用に皿を持ってきていた。ユウのいた世界に魔法はない。魔法といえばハリーポッターか、ドラえもんで見た映画くらいだ。この世界の人はちんたらほい、という言葉もエクスペリアームス!みたいな言葉も使わずに魔法をひょいひょい使ってみせる。当たり前の価値観なのだ。ユウにはそれになれるのが難しかった。  #名前2#の手料理を食べながら三人は今日あったことを話してくれた。トレイ先輩からリドル寮長の過去の話を聞いたこと、クロウリー学園長に寮長になればいいんです、と解決方法を教わったこと。そして…… 「決闘って、魔法しか使っちゃいけないんすよね」 「そうだな」 「俺たちこの首輪あるのにおかしくないっすか」 「水平の公平か、垂直の公平か。今回は前者だ、仕方ない。諦めろ」  挑む機会は平等に与えられる。クルーウェルは意地悪く「これからどうなるか見物じゃないか」と笑った。 「作戦を考えたらどうなるかは分からないぞ」 「そうですか?」 「作戦っていうのは、相手に関して油断せず考えた方が勝つんだ。頑張るしかないな」  じゃあ俺はクルーウェルを送ってくから、というとユウが少し微妙な顔をした。クルーウェルに肘でつつかれ、「鏡の移動でも見てみるか?」と声をかけると「はい!!」と一緒にきた。ユウはどうせオンボロ寮の生徒なので関係ない……いや、グリムのことがあるか。あいつに関しては後で何か考えないと。でも、それを考えるとユウのこともあるし。めんどくさい。 「#名前2#先生とクルーウェル先生って仲がいいんですね」 「教師の中では年が近いんだ」 「へぇー」 「ユウ、お前もリドルに歯向かったんだからあとであいつらの作戦手伝ってやれよ」 「はーい」  ユウは楽しそうに俺の横を歩いていく。クルーウェルは犬に懐かれたようだな、と笑うがこれはそういうやつじゃない。むしろ、もっとめんどくさいものだ。 「でもクルーウェル先生も魔法使えるのになんで送っていくことに?」 「#名前2#のユニーク魔法の方が便利だからな」 「先生のユニーク魔法…!」 「おい、そんな大したものじゃないぞ」 「知りたいです、先生の魔法! 普通の家事してるところしか見たことないですから!」  それはそれで傷つく発言だ。クルーウェルは口を開けて笑っていた。 「こいつのユニーク魔法はオーネストジョン。物に道しるべを与える」 「道しるべ……」 「ゴール地点ってこと。物や人に魔法をかけて、そこまで導くんだ」 「すごい……」 「帰るのが面倒なときはこの魔法に助けてもらうのさ」 「タクシー代わり…」 「タクシー?」 「あ、い、いえ、なんでもないです!」  #名前2#はもしかして今、キャブみたいなものと思われたのだろうかとニュアンスをくみ取ったが何も言わなかった。オンボロ寮の外に設置してある謎の大きな鏡は#名前2#の私物らしく、ここに魔法をかけて道を作るらしい。 「あの鏡の道を作るのは本当はもっと面倒な手段を使うんだが#名前2#は魔法を少しかければ終わる」 「人間には同意が必要だし、ゴールにつくまでは俺は他のものに魔法をかけられない。だからこうやって個人で少し使うくらいにしか道は作れないんだが」 「そうだったんですね」 「部屋の中に設置してもよかったんだが、生徒を緊急で運ぶときにいちいち中に入るのは面倒だからな。ゴーストたちにも許可をもらってここに作った」  オーネストジョン!という掛け声とともに、普通にあった鏡が黒く濁って溶け込むようになる。クルーウェルは#名前2#にだけ手を振ってもぐっていった。あの人ちょっと嫌味ですよね、とユウが言うとお前もだぞ、と頭をこづかれた。