世紀末の魔術師

 食事はデッキでも出来ると言われたが部屋に持ってきてもらった。これ以上、怪しまれるのはゴメンだ。 その晩、疲れ果てて寝ていた俺は後藤と信濃に叩き起された。んあ?と思ったら口を塞がれて「よく聞いてね」と言われる。 「#名前2#さん」 「ほーひは」 「船で銃が発砲されたみたい。音が聞こえたんだ」 「………」 コナンのせいでどこにいても安心出来ない気がする。信濃曰く、もしかしたら犯人は俺を狙うかもしれないので一緒のベッドにいさせろとのことだった。好きにしてくれ、と寝そうになったけど後藤がつつくので寝れなかった。明日は寝不足決定かなー。  翌朝、寒川さんが殺されたというのが広められた。朝食はせめてとらせてください、と願い出て警察が来るまではみんなで団体行動していた。こんな時でも食事はやっぱり美味しかった。 警察が来たあと、広間に集められて寒川さんが殺された7:30に何をしていたか聞かれた。アリバイのない俺は容疑者の1人だったが、西野さんが最有力になった。そんなことしそうにないのになー、と思いながらも俺はただ見送るだけだった。 ………。変な視線を感じるなあ。 「おい、信濃。後藤」 「うん。いるね、」 「あれ、キッドだよなー」 めんどくせーなー、もう!!  寒川さんを殺した犯人は西野さんじゃないよね、という結論は早々に出てきた。羽毛アレルギーの人は寒川さんの部屋で枕を切り裂けないよ!というものだった。うんうん、そうだね。あたってるよ。というか、眠過ぎて体が倒れそうだ。 毛利さんの推理ショーが始まるのに頭がついていかない。2つのエッグに2つの事件に……2人の小五郎さん? あれ? 視界が変なことに……。 「#名前2#さん…?」 「ご、め……」 ばたん、と倒れた俺が最後に見えたのは豪華客船の赤いカーペットだった。 「#名前2#さん!? 大丈夫!?」 「ああ、……これはただの貧血ですね。ストレスが溜まっていたんでしょう」 「白鳥警部」 「残念ですが彼は城には連れていかない方が、」 「でも! #名前2#さんは一緒に行ってくれると! ちゃんと約束しました!」 「夏美、さん?」 「あ、ごめんなさい……。私ったら、大声出して……」 「いえ、いいんですよ。約束したならば行かないわけなはいきませんね」  どこに犯人がいるか分からないので、とりあえず#名前2#は2人がけのソファーに横たえられて近くに信濃と後藤が陣取った。心配そうに#名前2#を見つめる夏美に、園子がははぁーんと勘ぐったらしく蘭に擦り寄った。 「ねえ、蘭! さっきの夏美さん、見た?」 「うん……。すごかったね」 「あれ、絶対#名前2#さんのこと好きでしょう!」 「ええっ!?」 「絶対よ、絶対! でなかったら、あんなこと言わないわよ!」 約束。夏美の言ったそれは確かに園子の言う通り嘘だ。夏美と一緒にいた蘭たちは知っている。けれど、今の発言はどうも違うような……?  澤部さんの車に乗せられて夏美と#名前2#と信濃と後藤が席に座った。夏美がどうしても彼らと座りたい、と願い出たのだ。 「あ、あの……」 「どうかしましたか?」 「私達、昔に会ったことがありませんか!?」 「へ?」 「まだ幼かった時、#名前2#さんは妹を連れてらして、三条グループのパーティーで!」 「………。?? あ、もしかして、ハンバーガーを食べたことのなかったなっちゃん…?」 「はい!! あの時、お城へ連れていってあげると私、約束したのに……」 「はは、なんだ、なっちゃんだったのかー。いやぁ、約束なんて別にいいんだよ。三条んとこ出なくなったのはこっちの事情だし」  「……! 今度、パリに来たらまた遊びましょう! 昔みたいに!」 「ああ、ぜひ」 握手をしているが、2人の会話の噛み合わなさは聞いてても耳障りが悪い。夏美の方はそれでいいのか、と顔を見ると普通に笑っているので良さそうだ。後藤と信濃は2人で1つの助手席に座っているが、なんでそうさせたのかようやく理解出来た。この澤部という執事は夏美に対して甘いのだろう。世祖がいなくて助かった。じゃなかったら大変なことになってしまっただろう。 「じゃあ、あの時の包み紙まだ持ってたのか?」 「私の宝物でしたから!」 「そっかー、懐かしいなぁー。あれ? そういえば、なっちゃん、パティシエになった理由って、」 「それはーー」 積もる昔話をしていたらすぐに横須賀のお城に着いてしまった。ドイツ風の気品溢れるお城だ。夏美が来たかった城はここではなくて、別のところであるがまあ似たようなものだ。 「あ、これ俺の連絡先」 「いいんですか?」 「パリで連絡とれなかったら困るだろー」 とりあえず、今はその少女漫画みたいな空気を止めさせよう。と、後藤と信濃は決意した。 「#名前2#さん、その人たちはだーれー?」 「信濃と後藤だよ。信濃、後藤。こっちは少年探偵団のみんなだ。1年生だけどかしこいぞー」 「えへへ、そうですか?」 「私、吉田歩美! こっちが元太くんで、光彦くんに哀ちゃん! コナンくんも私たちの仲間よ!」 「へー、すごいなぁ」 後藤も信濃も自分の弟を思い出してるのか物凄く顔が綻んでいた。思わず笑いそうになった俺をなっちゃんがどうかしましたか?と聞いてくる。 「いんや、何でもーー」 っとと。なんでか怪盗キッドこと白鳥警部に睨まれている。何してんだろう。  お城の鍵をかけて色々と見て回る。と、乾さんがトイレに行った瞬間後藤も姿を消した。信濃に「どこに行ったんだ?」と聞いても教えてくれない。なんてこった、俺だけのけ者らしい。教えろよー、と肩を揺らしたら今度はコナンに睨まれた。俺、やっぱり犯人にターゲットにされてるのかな。 「んおおおああ!?」 乾さんの声が聞こえたと思ったら刀と刀がぶつかった音と金属が切られる音がした。信濃を見ると「てへぺろ」と言うような顔をしている。やっぱりくそだ。 声が聞こえた貴婦人の間に行くと金庫近くで腰を抜かしていた乾さんと、天井からぶら下がってるナイフとその1つを持って満足げにしている後藤がいた。 抜け駆けしようとして危なかった乾さんを後藤が助けたらしい。澤部さんに「これを切ったのですか……?」と驚かれた。やべえ、人間業じゃないっぽいぞ。コナンと白鳥警部の視線が痛い。後藤からの視線もやばい。褒めろ褒めろ光線を出していらっしゃる……!  書斎に行ってコナンが秘密の部屋へ行く暗号を入れるパネルを発見した。ロシア語のローマ字だ。セルゲイさんが座って入力しますよという雰囲気を出す。 毛利さんのボスポミナーニェ(思い出)も乾さんの喜一香坂も違った。あとは……何かあったかな? 「ねえねえ、夏美さんが言ってたあれ、ロシア語じゃない?」 「なんだそれ?」 「バルシェニクカッタベカ、のこと?」 「ばるしぇ、にく、かった、べか?」 セルゲイさんは訳が分からないって顔をしている。きっとロシア語じゃないか、音節が違うか、だ。 「#名前2#さん、私、昔なんて言ってたかしら…?」 「あー、そうだなあ。……あ、そういえば。忘れちゃいけないって教わった言葉で、ぼるせー、うんちゃらとか言ってたような」 「! それってヴァルシェーブニック カンツァー ベカじゃないかしら」 「そうか、それだ!」 「それってどういう意味?」 「英語だとザ ラストウィザード オブ ザ センチュリー えーと日本語では、」 「世紀末の魔術師、だな。キッドの予告に出てた」 「#名前2#さん、これって偶然かな?」 「……いや、これは、」 とにかく入力してみましょう、ということで入力したら階段が現れた。暗くてジメッとしている。なぜか準備していた後藤からライトを受け取った。信濃が持ってきた分は澤部さんに回しておく。短刀2人は暗闇になれているのでいらないそうだ。ならなぜ持ってきたのか。