世紀末の魔術師
Note
刀剣男士の偽名
四藤信(よつふじ まこと):信濃藤四郎。
四藤後(よつふじ あとり):後藤藤四郎。
俺達も招いてもらってすみません、と信濃が頭を下げた。同じように横で後藤も頭を下げる。今日は鈴木会長の手元にあるエッグを怪盗キッドが狙ったという件の日なのだが、なぜ彼らも一緒にいるかと言うと、話が長くなる。四藤での決定権というのは鯰尾と骨喰にあるのだが、後藤と信濃でどこかへ行くこともままある。今回は2人で#名前2#たちのもとへ行きたい!と言い張り、長期休みに遊びにきたのだ。まさかこのキッド逮捕に誘われるとは思っておらず、信濃たちがいるからーと断った#名前2#であったがそこは鈴木財閥の娘が黙っていなかった。 「なら、その子達も連れてくればいいんじゃないですか?」 この後輩とても優しいのだが、その優しさが時に仇となる。#名前2#は面倒くささを押し殺して鈴木近代美術館にやってきた。(大阪に建てられたのだが、そこに行くまでの旅費も出してくれた。太っ腹すぎて足を向けて寝れない。)今回の目玉であるエッグはロシア皇帝から皇后へ向けての贈り物の1つらしいのだが#名前2#は詳しいことは専門家に聞いてくれ、という状態だ。 近代美術館に着くと、ものすごい警備にビビり持ち物チェックを受けてキッドでないかほっぺたを引っ張られてようやく会長に会えた。 「やあやあ、#名前1#くん」 「あはは、こんにちはー鈴木会長。お世話になりますー」 「いやいや、君のようなボディガードがいてくれた方が心強いからね。三条でも評判だそうじゃないか」 「あははは……。あ、今日は信濃と後藤が一緒につきます。よろしくお願いします」 「シナノくんにゴトウくんだね」 「信濃です!」 「後藤ですー」 今回は三条でたまにやる、ボディガードというやつである。ちなみに対象は人間ではなく人間の作った宝物、エッグの方だ。警察の方が預かるまで頼みたい、と言われた。取ってつけたような理由だが金持ちってのは得てしてこうやって人を呼ぶ。 「ああ、紹介しましょう。左からロシア大使館からセルゲイ・オフチンニコフさん。 美術商の乾将一さん。 ロマノフ王朝研究家の浦思青蘭さん。 フリーの映像作家、寒川竜さん。毛利さんたちは知っているね。 最後にわが秘書の西野真人くん」 「#名前1##名前2#です。よろしくお願いします」 ちら、と視線をよこされるが頭を下げる人はいない。いやまあ、秘書の西野さんはしてくれたけど。まあ、ボディガードっていうのはそんなもんかな。 この人たちは俺に紹介されるために残ってたらしく早々にいなくなって西野さんがエッグを持ってきてくれた。ご好意に甘えて信濃と後藤も座らせようとしたが、奴らは頑として立ったままで俺も立ったままだ。 緑色の小さなエッグは不思議なことにあんまり力は感じなかった。世祖がいたら何か感じ取れるかもしれないが……。さすがに今回はボディガードとして呼ばれてるから一緒にこさせてはいない。まあ、陸奥たちと一緒にいるから俺のとこに来たがるだろうけど……。 「いやあー、君のような子が三条さんのところにいるなんてねえ。羨ましかったんだよ」 「はぁ、どうも……」 インペリアル・イースターエッグ(正式名)は警察に持っていかれたので俺はもうお役御免かと思いきや鈴木会長に呼ばれて小五郎さんと一緒に残っている。少しだけご一緒させてもらってから、妹が心配ですのでと料亭から出させてもらった。ひー、疲れた。 「おかえりー、#名前2#さん」 「信濃……後藤……。お前らひでえぞ、酒のめねーからって料理ばかすか食いやがって」 「美味しそうだったから!」 「仕方ない!」 「お返し大変だろうがこんにゃろうめ!!」 ぱっと停電になった。え?と思ったが小五郎さんたちは動じた様子はない。というか、月見をして楽しんでる。慌てて部屋に来た女中さんに「今は月見酒をしてらっしゃいますから」とアドバイスだけしてお暇させてもらう。 料亭の外に出て世祖に電話するとワンコールで出た。こわ。 「世祖? ああ、うん、怪盗キッドのやつ終わったから明日朝イチで帰れると思うけど……うん、ああ、またな」 「#名前2#さん、あれ」 電話を切ってからぐいぐい袖を引っ張る後藤に釣られて上を見たら怪盗キッドらしい白い影が見えた。 「わぁー」 世祖、帰れないかもしれないやー。 昨日の俺の不安は半分的中した。キッドは盗んだがコナン曰く撃たれたらしく海に落っこちたとか。エッグはキッドが落としたため急遽展示を取り止めて鈴木家のクルーザーで大阪に帰ることになった。人生初ではないがクルーザーなんて滅多に乗れるものじゃない。有難く楽しんでおこうとしたら後藤と信濃に可哀想な目で見られた。 今日は新しいお客さんがいる。エッグの細工をしたという人を曽祖父に持つ香坂夏美さんとその執事の澤部蔵之介さんだ。曽祖父の書いた図面と思われるものが家から出てきたらしいのだ。MEMORIESと書かれた紙は確かにメモリーズエッグの図面だった。だが、この図面通りだとするとメモリーズエッグは会長の持ってるものとは違うということになる。うーん、と空気が重くなりそうになったとき信濃がひょいっと紙を抜き取った。 「これ、2つだったんじゃないかなあ」 「ああ?」 「なんかさ、サイズ合わないじゃん? 斜めにビリッ!ってやったにしても縦と横キレイだし。きっと横に長い長方形の紙でエッグが2つ並んでたんだよ。上っかわは会長のエッグと似てるし」 「なるほど…! これはすごい!」 「えへへ」 信濃ぉー、よくやったなーと頭を撫でるとニコニコしながら「今度、プリン作ってね」と強請ってきた。くそ。 「ねえねえ、シナノくん」 「ああ、俺のことは信濃でいいよ、コナン。こっちは後藤ね」 「あ、うん……。ねえねえ、エッグ見せてくれる?」 「はい」 「ありがとうー」 まるで子どもっぽいフリしてるが、ふとした時にどうも刀剣の時の気配を出してしまう。カチャン、とコナンがエッグの底についていたガラスを落としそうになった時も信濃が即座にキャッチした。人間業じゃない……。 「あ、あれ? どこいった?」 「はいよ、コナン」 「あり、がとう」 爽やかにしてるけど怪しまれてるぞ、信濃。 ガラスは魔鏡でしたー、と言うオチには俺も驚きだったが世祖ならすぐに分かってそうだなと普通の顔に戻した。鏡には船が加工されていた。香坂さん曰く横須賀のお城、らしい。お城を所持していた学校とかやべーな。 「夏美さん、エッグはもしかしたらあなたの曽祖父が作ったんじゃないでしょうか」 ここで毛利さんが推理を始めた。いつものええー?という推理じゃなくて論理的なかっこいい方だ。エッグは2つあって、片方はこの横須賀のお城にあるはずだ!という推理だ。 東京に着いたら家に帰ろうと思っていたのに、いつの間にかお城へ同行することになっていた。今回は後藤が戦犯だ。くそぉ……。 コンコン、とノックされた。出ようとしたら、後藤に止められて信濃が扉にくっついた。しー、と声をひそめるようにして扉を開けた瞬間信濃はペン先を寒川さんの喉元につきつけていた。 「………ッ!」 「寒川さん!? うわあ、すみません、知らない気配だったので!」 「あ、ああ……こっちもすまない」 逃げるように寒川さんは去っていった。トラウマ作っちゃったかなあ。申し訳ないなあ。これ、誰かに見られてないよな。 うん、うん……。 「#名前2#さん、コナンに見られたっぽいけど大丈夫だったかなあ?」 大丈夫じゃないですコノヤロー!!