世紀末の魔術師

 階段を進み、平面になった。道は一本、まっすぐに進んでいる。ふぇえ、こんな暗いところ怖いよぉ!と言う人は誰もいないのが救いだ。スムーズに進められる。道幅が大きなところに出るといくつかの道筋というか穴が何個かあった。かたん、とその1つから音が聞こえる。 「僕見てくる!」 「あ、じゃあ私も…」 「いえ、僕が見てくるので蘭さんはここにいて下さい」  キッドの面倒見の良さのスペックがくそ高いのを褒めながら周りを見回していたら青蘭さんと乾さんが居なくなっていた。あれぇー? 「後藤」 「うん?」 「乾さんか青蘭さんが来たら見張れ。怪しい」 「信濃にも言うか?」 「……両方戻ってきたら伝えろ。そうでなかったら、夏美の護衛につくようにいえ」 「分かった」  洞窟内なので些細な音も反響してしまう。手で会話出来るようにしていてよかったーと思うのは、事件に巻き込まれすぎている弊害かもしれない。  コナンたちが帰ってきたら、一緒に少年探偵団たちもいた。お宝探しの旅をしていたら本当に合流してしまったのだ。楽しそうな彼らは歌を歌いながら進んでいく。うへへ、楽しい気分になってきた。  歌声にまぎれて帰ってきたのは青蘭さんのみ。乾さんは帰ってこなかった。少年探偵団たちがいることでカモフラージュされてしまったが、いないのは確かだ。後藤と信濃が頷き立ち位置を少しずつ変える。  壁画の仕掛けを越えて着いたのは教会のような厳かな雰囲気のあるホールだった。座には西洋造りの桐の棺桶。夏美の持ってた鍵を開けて中を開くと遺骨と赤いエッグがあった。やっぱりエッグは2つあったのだ。緑のエッグはキッドが持ってきていた。これをどうしようか、と言おうとしたが歩美ちゃんがヒントをくれた。 「それ、マトリョーシカなの?」 「え?」 「マトリョーシカって、なんすか?」 「ロシアの人形の一つです。開くと中に一回り小さな人形が入ってるんです」  なるほど、と小五郎さんがエッグを見比べる。赤色の方が小さそうだ。緑のエッグを開けてもらって赤色のエッグを中に入れるとぴったし当てはまった。エッグは2つで1つだったのだ。緑が赤に入ったー、ウケるーと信濃が呟いたのは許せない。思わず笑いそうになった。  コナンはホールにあった台をじっと見つめている。確かに変に設置されているなあとは思うが、何か仕掛けがあるんだろうなあと思ってた。コナンはその仕掛けも考えてるのだ。 「セルゲイさん! そのエッグ貸して!」 「コナンくん、なにか手伝うことは?」 「ライトの光を細くして台の中に」  コナンが急に変なことしでかした、と思ったら台に設置されたエッグが透けてきた。中に設置された方の人形が動いた途端光が人形の持つ本に集まる。パラアアアというような綺麗な音で周りに写真が現れた。いわゆる魔鏡だ。 「皇帝が見てたのはただの本じゃなかったんだ」 「アルバム……」  だからメモリーズエッグなんだなー。スクリーンになった壁に映った写真はみんないい笑顔をしていた。夏美の方を見ると泣きそうな顔をしてる。 「大丈夫か、なっちゃん」 「あ、はい……。あれが、私の家族なんだと、嬉しくって」 「うん、よかった」  存分に楽しんだところでエッグのもとに光が返ってきた。エッグは夏美が持ってるのがいい、と全員一致だった。真っ暗闇の中。敵が動き出した。一緒に後藤と信濃も動き出す。 「夏美! 伏せろ!」 「っああ! エッグが!」 「後藤、お前だけ追いかけろ! あとの人達はここから脱出するから着いてきてください!」  犯人、青蘭さんをきっと後藤は捕まえてくれるだろう。なにせ、コナンとキッドという強い味方がいるんだから。  前の入口は恐らく犯人に潰されているので少年探偵団たちが降りてきた場所を目指すしかない。哀と信濃を組ませて斥候の役割を果たしてもらいながら小走りで目的地へ向かう。心配だったのは壁画の階段だが、壁にあったボタンを押したら普通に通れた。えー、拍子抜けだぜ。 「なっちゃん、大丈夫か?」 「ええ、かすり傷です……」 「信濃ー、行けそうかー?」 「大丈夫みたいー!」 「哀ー、博士本当に来るんだよなあー?」 「ええ! すぐに縄を取ってきてくれると思うわ!」  乾さんがいないことに誰も気づいてなかったらしく、なんでいないの!?と今更ビックリされた。そうか、コナンたちが消えた時、誰も2人がいなくなったのは気づかなかったのか。 「コナン、大丈夫かなあ?」 「大丈夫だって」 「え?」 「#名前2#さんから聞いてるよ。君たちの活躍は。それに、コナンくんの不死身具合もね」 「不死身って、そんな…!」 「コナンは守るためなら頑張れるんだろうね。だったら、僕らは信じてあげないと」 彼のことを。心の底から生き返るって信じないとね。 信濃のくせにいい事言うなあと思ったら、世祖が前に言ってたんだと教えてくれた。 「そうなのか。世祖がなあ」 「……」 アンタのことを思って世祖は言ったんだぞ、と信濃は思ったが何も言わなかった。  青蘭さんがコナンの正面に来た時。彼は青蘭に挑戦させた。「自分を撃ってみろ」と。勝機はあったし、やれると思った。だが、周りは彼の勝機を知らない。燃え盛る炎の中から少年が現れた時はそこにいた誰もが驚いただろう。飛び出し、壁を蹴り、ぐるっと一回転して青蘭の肩に足を引っ掛けて思いっきり後ろに倒れさせた。 「後藤!?」 「コナン、あぶねえだろうが!!」  いや危ないのはお前の方だろ、とツッコミが内心で入る。後藤はすぐに青蘭を担ぎあげて(この時点で驚きしかない。)出口を探すぞ!と叫んだ。 「コナンくん! 後藤くん!」 「白鳥警部!」  ははっ!と笑った後藤に、コナンは床に突き刺さっていたカードを見つけた。すぐに燃えてしまったが今のは……。 「後藤くん、彼女は僕が運ぼう」 「あ、ああ」  ほいっと軽く手渡されているが成人女性だからそれなりに重いはず。後藤という少年は何者なのか訳が分からない。 「コナン! 行くぞ!」  後藤に手を掴まれて走り出す。どこを行けば外に出られるのか、彼にはもう分かっているらしかった。  #名前2#たちが出た時には相当に焼けていて、キッドは青蘭さんと共にどこかへいなくなっていた。こんなにも素晴らしいお城なのに消えてしまうのはもったいない。切ないなぁ、これは。 「後藤、お疲れ」 「へへっ、どんなもんだい!」 「信濃もな」 「さすが信濃って感じだよね!」  むぎゅーっと抱きしめたらほこりくさーいと笑われた。お前達もホコリ臭いからな、言っておくけど!! 「#名前2#さん」 「なっちゃん」 「本当に、ありがとうございます」  深々と頭を下げられた。こんな結果なのに、俺のことをよく思ってくれるなんてなあ。 「こちらこそ、ありがとう。また会えて、良かったよ」 「……! ハイッ!」  いいお返事だな、と頷いたら後藤と信濃に小突かれた。痛いって、お前達。  ベランダに人影があった。マントをはためかして立っていた。なんでここに居るんだろう。世祖はすぐに考えることをやめた。彼はこっちをじっと見つめてきたからだ。昔、彼と会ったことがある。そうだ、花を、もらった。 キッドは笑った。泣きそうな顔をしていた。 「フッ。お嬢さん、雨に濡れては風邪をひきますよ」 「……あなたもぬれてる」 「私はいいのですよ」 「……。おつかれさま」 その言葉で何かが伝わったらしい。それ以上の言葉は交わさず、怪盗キッドは一礼してまた飛んでいった。 ばいあい、と世祖が手を振る。真っ白な点はすぐに見えなくなった。 お題セリフ概要「MVPセリフに絡めたもの」 信濃くんのMVPはちょっと難しかった!