尊敬しない後輩たち

「先輩、落ちてました」 「あ、ありがとうー」 「いえいえ、これくらい」  ルーク・ハント。新しい一年生。美しい人にはとっても親切で、そうでない人には普通の対応というかなんというか、絶対に裏があるだろうなっていうタイプの男。そして、彼のお気に入りはカームだった。まあ、ポムフィオーレ寮のプリンセスかっこ笑いの存在だから当たり前かもしれない。ルークはカームの下っ端か?というくらいに甲斐甲斐しく尽くしてくる。それでもって、俺のことをちょっと見ていつも通りの俺に「ああ」という顔をして戻っていく。「ああ」ってなんだよ、ああって!!! 俺のことを見てカームはルークが帰った後けたけたと笑っている。 「ルークのやつ……」 「それだけ気に入られてるってことだよ」 「俺が? あいつに?」  カームは笑いながらうなずいた。僕はこの見た目で言われてるのかもしれないけどさ、#名前2#の場合はそういうの関係なしに人目をひくんだよ、と言われる。#名前2#も自分のことを考えてみたが「人目をひく」のはカームの方だ。カームが髪の毛をゆらせば誰かの嘆息が聞こえてくる。カームの声は甘くてなんだか人の耳に侵入してくる感じがする。#名前2#はカームが愛嬌があるのは認めるが、最初に出会ったときの無理やりこける状態にさせられたのは忘れていない。 「そうなのか?」 「そうなんだよ」  カームはふふっと笑って自分の席に戻っていく。#名前2#には聞こえないがカームにはトレイン先生の靴音がちゃんと聞こえているらしい。がらり、とトレイン先生が入ってきて生徒たちを見まわす。後ろの席でこそこそと声が聞こえた。レオナ・キングスカラーが留年したらしい。キングスカラーとはあのマジフトの花形選手のキングスカラーで合ってるのだろうか。後ろを見て話を聞いてみたかったがトレイン先生の授業でそんなことをしたら怒られてしまう。あとでカームに話を聞いてみよう、と思っていたら授業のことで頭がいっぱいになってすっかり忘れてしまった。  思い出したのは自分が食堂に来てからだ。カームはいつも通りポムフィオーレ寮の誰かにとってもらった席に座ることになっていて、#名前2#もその横に座る予定だったのだが見覚えのある茶髪を見つけてついつい背中を叩いた。 「やあキングスカラー」 「やあって、お前……」 「名前はちゃんと覚えてもらってたかな。#名前2#・#名前1#だけど」 「覚えてる。邪魔すんな」 「ナイトじゃないからね、あいつの隣で食べなくてもいいんだ。そこ空いてる?」  そういって#名前2#はキングスカラーの荷物が置いてあった席を指さした。キングスカラーは無視しようかとも思ったが#名前2#のことだから人の話を聞いてても自分を押し通すに決まっている。ちらりと見てみると彼はにこにこと笑って待っていた。しぶしぶと椅子の下に荷物を下ろすと#名前2#は「ありがとう」とうなずいて席に座った。食堂の中がちょっとだけどよめく。#名前2#がカームの隣ではないところにわざわざ来たことがそれなりに衝撃をもって伝わった。  そんなことも知らないまま#名前2#は頼んだミートソーススパゲティを食べながら「うちの1年生がね」と話を始める。 「ポムフィオーレ寮だからね、一癖ある生徒たちってことはわかるんだけど。なんだかうちの後輩腹立つんだよなあ。キングスカラーはどうなの」 「なんでそれを俺のところで言うんだよ」 「花形くんも先輩になってるだろ?」  #名前2#の何気ない言葉にキングスカラーはぐっと言葉を飲み込んだ。言葉と一緒に鶏がらスープも喉の奥にひっついてむせてしまった。#名前2#は悪気がないのだ。だが、そういう言葉が一番たちが悪い。キングスカラーはナプキンで綺麗に口を吹くと「俺が、レオナ・キングスカラーだってこと、お前知らねえのか?」と不遜に言ってみせた。さっきスープでむせてゴホゴホした姿を見ていなければかなりかっこいい姿に見えただろう。#名前2#は名前を聞いてトレイン先生の授業で聞いた噂をようやく思い出した。 「あ、ああーーーー。そおっか、そうだったのか」 「ようやくわかったのか」  じゃあさっさと行けよ、とレオナは思ったが#名前2#は「じゃあ今度からキングスカラーに会いに行くときはヴィルたちの授業に合わせた方がいいってことだな」と納得していた。 「は? ヴィル?」 「うちの後輩だよ。ルーク……さっき言ってた腹の立つ後輩とがカームと俺の部屋の後釜になったんだ」  話がころころと変わっていくがそのヴィルという男とルークという男と自分は同学年だから授業とかも把握されるということだろうか。怖い。レオナは#名前2#が明らかにやばい男では、と思ったが人の頭を袋に入れて無造作に運んでいるような男なのだから当たり前なのかもしれない。#名前2#は綺麗にスパゲティを食べ終わると「キングスカラーも授業に遅れないようにな」と歩いていってしまう。一体なんだったのか。もう考えるのも面倒だった。  レオナはクラスに行くと問題の「ヴィル」と「ルーク」が自分のクラスにいないか心配になりいつもは聞き流している出席確認をきちんと聞いてみた。気づいたのは#名前2#が腹を立てていたルークがいるということ。 「めんどくせえなあ……」  こんなことなら留年するんじゃなかった、と本気で思った瞬間だった。