ステキな匂いにご用心

 放課後はユウたちはタルトを作るから遅くなるらしい。了解、とうなずいたらユウはじっと俺を見詰めてきた。 「? ……ほら、トラッポラたちが呼んでるぞ」 「あの」 「ん?」 「さっき、会った人にお前は特別扱いでいいよなって言われたんですが」 「特別扱いぃ? 誰が? 誰を?」 「わ、わたしを、先生が、です」  わけわからない、という顔をしたらユウは顔を真っ赤にして「すみませんでした!」と行ってしまった。一体さっきの言葉は誰から聞いたんだか。教師は特別目をかける生徒がいたとしてもひいきはしないんだが。 「いや、まさか……」  オンボロ寮が特別扱い? いやいや、それはないだろう……。魔法を使える者がこの学校に入り、グレートセブンをモチーフにした寮に入れるんだから廃墟になってたオンボロ寮を使いたいって思うやつが……。 「いる、のか?」 「何をぶつくさ言ってるんだね、君は」 「あ、トレイン先生」  補習終わったんですか?と聞くと今日は私の担当ではない、と返された。 「あれ? 違いましたっけ……」 「それを言いに来たのだ。クルーウェルが補習の担当を交代する」 「それは大丈夫ですけど、何かありましたか?」 「わが愛猫の元気がないので見てほしいのだ」  あ、それで珍しくトレイン先生が俺のところに連絡にきたのか。見ると風邪気味になっているらしい。薬は今手元にない。オンボロ寮に行ってとってこないといけない。 「すみません、オンボロ寮に行って取ってきますので……」 「食堂で待っていよう」 「風邪の症状だったので暖かいもの、消化がよいものを食べさせてあげてください」 「わかった」  トレイン先生は割と俺のことを苦手としているというか、気軽に話す方ではない。むしろ学園長の方が気安く話しかけられるのではないだろうか。おかしい……文系を担ってくれるトレイン先生の方がえらい方に見える……。オンボロ寮に来るとゴーストたちがわらわらと寄ってきた。 「なあなあ、その小瓶の中身はなんなんだ?」 「帰ってきたのにまたどこか行くのか?」 「はいはい、帰ってきたら話を聞くから」  ちぇーっとゴーストたちがまた消える。帰ってきたら相手をするのが面倒だ……。あと、あんまりトレイン先生を待たせるのも怒られる。箒に乗って食堂に急ぐと下の方で「めずらしっ」とか声が聞こえる。下を見たらトラッポラとスペードの二人が上を向いていた。首輪をつけたままのエースは上を向くのもしんどそうだ。手を振ると二人がまたわっと叫ぶ。面白い。  食堂に着くとトレイン先生は外の声が聞こえていたのか「相変わらず大人気のようですな」ととげとげしい声で言われる。 「は、あはは。ありがたいことですね」  小瓶を渡すと小さく礼を言われてトレイン先生は行ってしまった。コックのゴーストに様子を聞いてみたらいつもと変わらなかったらしい。よかった。怒ってはない気がする。 「ああ、でも生徒たちの声が聞こえてきたら一気に眉間に皺がよってたな」  前言撤回。遊んでたと思われそうな気がする。  寮を掃除して夕飯を冷やさないようカバーをかけていたらクローバーから連絡がきた。エース・トラッポラがうちにまた泊まる、と。ふむ……明日の朝食は増やすか。いや、明日はなんでもない日のパーティーだ。あんまり多すぎるとリドルに叱られるかもしれない。サンドイッチにでもしておこう。ゴーストたちの「俺たちは昔はすごかった自慢」を聞きながら卵をゆでてかぼちゃを切っていたら二人が帰ってきた。リドルに詫びタルトとしてマロンタルトを持っていくらしい。なんでもない日のパーティーにタルトを持っていくのだそうだ。 「ユウも行くのか?」 「はい」 「いってらっしゃい」  はい!とユウはうなずいてトラッポラとグリムにつかまりトランプをさせられることになっていた。途中で寝るぞー、と乱入したがグリムは駄々をこねまくり、ルールを覚えたら#名前2#もやってもらうからな!!!と叫ばれた。なんで俺がそんなことまで、と思ったがハウスマスターだし我慢しよう。