番外編4

【新シンの恋愛相談(IF)】  恋愛相談を、受けている。しかもサーヴァントに。サーヴァンていうのも問題だが、そこにプラスして自分の好きな人という問題がある。 「どうしよう、今日もすごくかっこよかった」 「…良かったね」 「ほんとね!!」  大きく頷かれた。新宿のアサシン、通称新シン。真名が分からないけど好きになった自分と、こんなにひたむきな感情が向けられてるのに何も返さないその人と。全くどちらが罪深いのか。  世祖に話したらきっと笑われてしまう。そんなの恋愛しているお前が1番罪深い、と言われそうだ。恋愛なんかに現を抜かすなんて、とか。  恋愛に対して否定的な考えを持ってるくせにそうやって好きになって苦しんでるのは自業自得だ。新シンさんが楽しそうに話しているのを何とか聞いているぐらいしかない。 「今日はね、ランチセットのA頼んでてね、美味しそうに唐揚げに齧り付いてたんだあ。やっぱり食べる姿ってかっこいいよね。ブーディカさんと仲良く話してたのはちょっと妬けるけど」 「あー、いいですよねえ。ブーディカさん、上手くなってましたし仕方ないですよ」  Aセットの唐揚げは美味かった。ブーディカさんの味付けが段々と進化を重ね、今回はただの唐揚げではなく1段階味を上に持ってきていた。どうやって作ったのか、と歌仙がやけに気にしていた。  ふと新シンが何も言わずにこっちを見ている。 「………」 「……。新シン?」 「今日の唐揚げはブーディカが最初だけ担当しててすぐにエミヤと交代したんだよねー」 「……!!?」  新シンがニマニマした顔で指を絡めた。分かってたのかと聞くと、遊んでてごめんねと返事をする。ずるいアサシンだ。 【クー・フーリンオルタは離れない(ss)】  しゅるりと尻尾が動く。本人曰く尻尾ではないとのことだが、#名前2#からしたら尻尾にしか見えなかった。立ち上がろうとした#名前2#に絡みすとんとベッドに戻させる。 「あー、狂王?」 「オルタだ」 「いやいや、セイバーオルタとか他にもオルタ沢山いるんだから」 「オルタだ」 「……はいはい、分かりましたよ」  彼に何か言っても仕方ないことは#名前2#も分かっている。尻尾は痛がる#名前2#のために戦闘時以外では棘の先を丸くするようにしてくれた。アメリカでの彼とカルデアにいる彼はやっぱり違うのかと思うと同時に、あちらの記憶があるのかと感心する。#名前2#にはアメリカでの記憶は薄らぼんやり持っているだけだからだ。 「それで、どこに行こうとしてた」 「まあ特に意味は無いんだけど、どこか歩きに行けばサーヴァントたちと会うかなって」 「………。俺じゃ不満か」  ふぁ、と#名前2#の口から音が漏れた。何言ってるんだこの男は、という気持ちが勝る。執着されていることに勘づいていてもその奥にまさか好かれているなんていうことがあるとは思っていなかった。 「オルタ、何かあったのか。マスターのところ、一緒に行こうか」 「ちげえ。何でそうなる」  #名前2#が全くデリカシーのない発言をするくらいにはオルタの気持ちは伝わっていないのだ。 【一人称】  マスターの一人称が僕というのは中々に上品さがある。裕福な家なのかと思ったら環境は普通の家族だった。 「母さん、母がすごく細かくて。箸の使い方とか、喋り方とか。#名前2#さんにたまに敬語使いそうになるのは母の躾のせいなんだよね」 「そんなに厳しかったのか。所作が綺麗だもんな」 「母は昔ホテルで働いてたらしくて、その時に厳しく言われてたみたい。多分、普通のしつけなんて分からない人だったんだろうなって思ってる。父はよく母を射止めたなあって思ってた」 「そういうのって大体逆に母親の方が父親に一目惚れしてたりするよなあ」 「うちもそれだった。母が一目惚れして、ホテルは後輩に仕事を引き継いで辞めたって」 「そっかあ。お母さん、かっこいい人だったんだなあ」  マスターは母親の躾により、言い訳はしない、僕という一人称を使う、困っている人を助けるなど彼の美点を作り上げたようだ。自分の母親がそれなりにクズだった俺にはなんだか眩しい話だった。 「マスター、最近何かラッキーとかあったか?」 「ラッキーなこと? えー、突然言われても……。あ、この前初めてにゅうめんって知りました。そうめんって冷たいものだけなのかと!」  ぶふっと思わず笑ってしまった。そうか、にゅうめんだけでそんなに笑顔になるのか。マスターの素直さには恐れ入る。#名前2#はふふふと笑いながら「またリクエストしなきゃだな」と言った。 【スーツ】  #名前2#のスーツってなんか、かっこいいよね。布団に寝転んだビリーが俺のスーツの裾を引っ張った。戦闘でもシワにならないよう加工されたスーツは日本の作りではなくイギリス仕様になっている。  ビリーの服はアメリカの西部劇に出てくるようなそれだ。彼自身がこういった服を着ていたのか、後世のイメージからこの服になったのか。映画好きとしてはビリーの服はかっこよくて好きだ。 「#名前2#?」 「んー?」 「かっこいいよねって言ったんだけど」 「あー、ありがとう」 「えー、それだけー」 「それだけーって」  ビリーはごろんと仰向けになると「僕、こんな見た目だしさ。どう足掻いたって少年悪漢王にしかならないんだ」と呟いた。英雄たちにはたまに別人になりたくなる気持ちが起こるらしい。属性によって差が大きく出てしまうところなのだが、ビリーは性根と相まってその気持ちが一層強かった。  着替えたところビリー・ザ・キッドという男が変わることはないのだが。ビリーはじろりとこちらを見て「ちょこっとその服貸してみてくれない?」と頼んできた。  着替えてみると思った通り丈感が合ってない。スーツは一人一人に合わせて着るものだからだ。その不格好さに2人でゲラゲラと笑った。ダボダボのズボンに緩すぎるシャツ、長すぎるタイにジャケットは着るのも面倒になった。 「いいね、これ。馬鹿みたいで」 「これは酷すぎるけどな」 「着てみると分かるけど僕のより動きにくくない、これ」 「ちょっとだよ。ビリーのもかなりきついだろ」 「僕のやつは魔力で編んでるけど#名前2#のは本物の服を魔力で覆ってるんだろ? たまに穴あくし」 「バレてたか」 「ほとんどの人が知ってるって」  魔力の方に変えたりしないのと言われるが、あまりそれは考えていない。気に入っている服であるし、魔力で編むのは何だか感覚が合わなかった。そのおかげで霊衣は沢山持っていることになる。 「はい、ありがと」 「ん」  自分も服を着替えるとビリーは「僕も筋トレしようかなあ」と呟いた。 「筋トレ?」 「そー。なんか、胸板が厚いのってずるい」 「意味がわからん……」 「ロビンもまあまあ胸筋あるんだよ。何か周りにそういう人多いとやらなきゃって気持ちになる。分かる?」 「何となく」  ただそれをビリーが言い出すとは思わなかった。ビリーはニヤリと笑って「君は胸が大きい人が好きだものね」と言う。  一瞬その意味が分からなかったが言いたいことが伝わり顔が赤くなった。ビリーはゲラゲラと笑いながら部屋を出ていく。遊びに来たと思ったらなんて物を最後に置いていくのか。 「はー、やられた」  #名前2#は赤く火照った顔を冷ますように手で扇ぐことしかできなかった。