番外編5
今日は特に何か自分のことに目的を持って出てきたわけではい。段々と春も近づいてきたので桜に何か服を買おうと思っていたのだ。世祖は龍之介とキャスターが面倒を見てくれるそうなのでお願いして桜を甘やかそうと思っていた。 「桜、準備できたかー」 「ま、まってー!」 余所行きのアイロンとのりのきいたワンピースにキューブのついたゴムで結んだ髪の毛、名前と同じ桜の柄のポシェット。これぞ平成初期の女の子、という感じがする。まだ肌寒いので少し緩めのカーディガンを着せた。俺はといえば流行とは程遠くジーパンにシャツと革靴を合わせ上から薄手のコートを羽織る。 「うん、まあいいかな」 「歌仙のファッションチェック終了ー。よし、行くか」 鞄を片手に、もう片方は桜と手を繋いで。車はここでは持ってないので電車とバスを乗り継いで少し遠い店に行く。ショッピングモールなどは都市部にしかないのでそっちまで行くことにしたのだ。所謂ファストファッションなどもこの時代はよくわからない流行りに呑まれてしまってダサいと思われないか心配だ。とにかく桜がダサくならないようこちらも細心の注意を払わなければ。 バスに乗り、電車に乗り、またバスに乗る。着くころには桜はもう少し疲れていて最初に入ったお店は中に設置されていたスーパーマーケットだった。買い与えた飲み物をぐびりと飲んだ。桜はぷはあっと息をついてマップの書かれたパンフレットを持ってこっちにやってきた。 子供向けの服を確認する。あんまり高いものを何着も持ってるといじめに遭いやすい気がするのでここで買うのは遊びに行ったり時臣の家にお邪魔する時用だ。桜もそれを分かってるのかマップを見ながらしかめツラでじっと見ている。 「リクレットというお店がよさそうですよ」 今の声は誰の声だろうか。後ろを振り向くとお客がどこどこに行きたいとか話をしている。桜が心配そうに俺を見ていた。大丈夫?と口が動く。 「ごめんごめん、なんか虫が首にくっついた気がしてさ。リクレットっていうお店に行こうか」 「……うん、わかった」 桜と手を繋ぎまずは二階に向かった。そのリクレットという店は子ども用玩具と一緒に服も売っているお店だった。記事の縫い目を確認、素材を確認。誰かにおすすめされるだけあっていい感じだったが、まあまあ値段も高かった。 「何かお探しですかー?」 「娘に服を買ってあげたくて」 「なるほどー。うちのお店はファクトリーブランドなので他のお店とは少し違うデザインなのも魅力の1つなんですよー。ぜひぜひ、他の子たちと差をつけていきましょう!」 店員さんの熱量に負かされて桜に試着をさせてみることにした。ずっと着ていたら嫌にならないか、違和感を持ってないか。桜は紫色のパンツとレース地の七分袖を買いたいと言った。イメージしていた春っぽさはなかったが桜っぽさはある。OKしてその二着を買った。 「あ、やっべ。ポイントカード忘れ……」 財布の中にさっきまで入ってなかったはずの黄色いカードが見える。無言でそれを差し出した俺に店員さんが「良かったですね、見つかって」と謎のフォローを入れてくれた。そうですね、と曖昧に笑ったが俺もそろそろ気づいている。絶対にこれはサーヴァントの仕業だ。世祖がいないので確実なことは言えないがこれはサーヴァントだ。普通に考えて忍者みたいなこの手助けはアサシンのサーヴァント、だろう。確か綺礼に名前を聞いたときはハサンって言ってたような。 マップを開いて「次はどこにする?」と聞いてみる。桜はやっぱり悩んだいた。何か風を感じたと思ったら桜がここがいい!と地図を見せてくれる。赤い○が何か所かについている。きちんと子供用の服屋さんだった。……。無言になった俺に桜が一緒に地図を見た。あれ?呟いた。そりゃあ今まで持っていた地図に突然何かついたら驚くだろう。俺と地図とを何度も見る桜にとりあえずもう何着か服を買うことにした。 「桜、どうだー?」 「うんと、ちょっと脇が痛い」 「ゴム当たるのか?」 「たぶん…」 サイズではなさそうなので違うワンピースを持ってきた。渡すといつ着替えたのかさっきのワンピースがハンガーにかけられて渡された。店員さんが戻してくれるそうなのでお願いして試着室を睨んだ。中に、いるんだろうか。いや、でもハサンの中でも女性の個体がいるとは聞いていたし大丈夫だと思うんだが。 桜はワンピースと帽子を買って家に帰ろうと言いだした。せっかくだしキッズスペースで遊んでってもいいぞ?と言ったが首を振られた。刀剣男士の分までお土産を買うのは無理なのでみんなで遊んで食べられるようにホットケーキミックスを大量に買って帰ることにした。バス停に行こうとすると見覚えのある男のシルエットがあった。桜は「あれ、きれーさんかな?」と俺に現実逃避をさせてくれない。一応サーヴァントの話は聞かせているにしてもハサンに俺らを尾行させていたとそのまま伝えるのも変な話だ。 「綺礼も用事があってこっちに来たのかもなー」 「#名前2#さん、重そうな荷物でしたので迎えに上がりました」 「……そっか」 桜はまた驚いて俺と綺礼を交互に見ている。桜の荷物を任せようとすると俺の持っていた片方の袋も持ってくれた。 「すまん、ありがとう」 「いえいえ」 綺礼は笑っているがやってることはストーカーと変わらない。桜はあっけにとられた顔で綺礼を見ていた。バスの中でこっそりと「きれーさんは魔法使いなの?」と耳打ちされた。思わず笑ってしまったのは仕方ない。