番外編4

 前後不覚になるほど酒を飲んだことは今はない。昔はあったが、時臣の兄になってからは優雅だなんだと浴びるほど飲んだことは無かった。  そのツケが来てしまったのか。暴飲したせいで記憶が曖昧だ。そして……やってしまった。これはいけない。  全裸になっている俺と横で同じように全裸になっている綺礼。ベッドの横では洋服が散乱していてシーツには白濁したそれがついている。 「………」  どうしたものか。頭を巡らせるがうまくいかない。まずここがどこかも……いや。世祖がいなくなって寂しさを感じてしまった俺に綺礼が酒を飲もうと誘ってきたのだ。それで、それでーー。ああ、酒を飲みすぎて頭が痛い。何も思い出せない。………俺の腰は痛くないってことは、まさか綺礼が女役をしたのか。  サーヴァントを座に還すんじゃなかった。今は何時なんだ。携帯を確認しようとベッドから抜け出たら綺礼の腕が腰に絡みついた。 「綺礼……」 「う、ん……」 「綺礼ー?」 「……。#名前2#さん。どこへ?」 「いや、携帯取りに行くだけだから」  だからそんな風に手を動かさないでほしい。反応しなくていい所も反応しはじめる。綺礼はにまにまと笑って「昨日のあれでは満足できませんでしたか?」 「あー、やっぱり昨日……」 「はい」  ハートがつきそうな物言いだった。 「綺礼、あーっと、」 「過ちとするなら殺します」  冷や汗が出てきた。綺礼は冗談は言わない。さっきのようににまにまとと笑って太ももの上を滑らせた。 「体を繋げたという事実は変わりません。神父に結婚は出来ませんが、私たちはそんなカトリックとは違うと知ってるでしょう?」 「……俺と結婚するってか? お前、奥さんいただろ」 「彼女のことを愛してはいませんでした。彼女の死をもってそれを確認しました。……愛してなければ俺は体を捧げません」  ほら、と見せつけるように綺礼は自分の体を晒した。筋肉質の体の上に赤いそれがちらちらとある。 「だからって、同性だと結婚はないだろ」  無理やり体を離して上着を確認するといつもいれてるポケットに携帯がない。ズボンも確認したがやっぱりない。 「っかしいなあ」 「おかしくなんかありませんよ」  ベッドの中にいた綺礼が俺の携帯を持っていた。そして、サイドテーブルに置かれたコップの中に落とそうと構えていた。 「……あのさあ、綺礼。俺、仕事あるんだけど」 「#名前2#さんのことを養えるくらいはあります」 「いや、俺は仕事したいからしてるんだけど……」 「………仕事と俺とどっちが大事なんですか」 「話聞いてくれよ」  何をやってるんだと自分でも思うが綺礼は返事を待っている。正直に仕事と言ったら殺されるか監禁されるか……どうあがいてもバッドエンドだな。うん、頭が世祖に鍛えられてる。だが綺礼と言ってもこれは危ない。なら俺が養うのでいいですよね!とか言って俺のことを監禁しそうだ。なんだこれ、詰んでる。 「あー、男の面子もあるんで綺礼のために仕事してるって感じ……?」  考えながら言ったらもう訳の分からないことになった。が、綺礼にとってはOKだったようだ。携帯をサイドテーブルに置いてこちらを見つめる。あー、世祖で慣れている自分が辛い。  さすがに全裸で動くのは嫌でズボンを履こうとするが綺礼が「あー、手がコップに当たりそう」という声で下着だけ履いて近寄った。 「綺礼、お前……」 「既成事実があったらしょうがないですよ、#名前2#さん」  貴方は俺を愛するしかないんです、と。もう俺の逃げる道はないようだ。三日月が頭に浮かんできた。不貞は俺の一番嫌うものだ。それは許されないことなのだ。綺礼の顔が近づいてくる。受け入れれば楽なのに、それだけはどうしても無理だった。  綺礼とてこんなに大胆になるつもりはなかった。ただ酔った#名前2#が綺礼のことを好きだと言うからひた隠しにしていた思いが溢れてしまった。 「きれぇー、お前は名前の通り綺麗だなぁ」 「面白くないです」 「うるさっ! 褒めてんだからそのまま受け取れよ……」 「……そんなに飲んで平気ですか? 明日仕事は?」 「休みだよ……」 「なるほど」  きれぇーと名前を呼ばれる。はいはいと適当に返事をすると怒ったように肩をどつかれた。 「返事はいっかい! だろぉー」 「すみません」 「……きれえ、こっち向けよ」  さっきまでと声の雰囲気が違う。ゆっくりと振り向くと色気をたたえた#名前2#が口を半開きにしてとろんと綺礼を見つめていた。正直目の毒だったが視線を逸らしたくなかった。 「お前は美しいなァ」 「……ありがとうございます」 「おれが、もし……マスターじゃなかったら、お前に惚れてたのかなぁ」  こんなに美しいのに惹かれないなんて、有り得ないなあ。 「あの、それはーー」  唇が、塞がれた。酒臭いキスだった。触れ合わせるだけの簡単なそれ。一瞬だったのが長い時間のように思えた。 「これで、終わりにする」  #名前2#がそう言って寂しそうに笑うから、綺礼は我慢できなくなったのだ。この思いを捨てなくてはいいのではないか。#名前2#を引き止めてもいいのではないか。  邪な感情が綺礼を支配して囁いてくる。奪ってしまえ、と。手が#名前2#の体へ伸びた。  テレビを見てもつまらない。扉で繋がった部屋の向こうには#名前2#さんがパソコンを使いながら仕事をしている。仕事なのは分かっている。分かっているのだが、今日は久々に#名前2#が家に呼んでくれた日なのだ。期待したって仕方ない。  テレビを消してそーっと近づくと#名前2#は何も言わずにパソコンと向き合いキーボードを叩いている。つけているヘッドホンからはBGMなのかピアノの音が流れていた。 「#名前2#さん」  声をかけても振り向いてくれない。ムッとした気分になり、年も忘れてイタズラでも仕掛けようかと思った。近づいて背もたれをあいだにその腹に抱きつくと「きれい?」と声がかかった。 「綺礼、もう少しで終わらせるからちょっと待っててくれ」 「まつ……」 「ん゛っ、? あー、疲れてるなら先に寝ててもいいんだが」  膝立ちになり#名前2#さんの顔を見ようとすると腕で塞がれている。それなりに体は鍛えているという自負はある。押し倒すように力を入れると反撃するように腕をふり抜かれた。真っ赤な顔をしている。いつも自分ばかり好きになっていると思っていたので#名前2#さんがこんな風な顔で私を見てくれているのかと思うと恥ずかしくなった。 「…何でお前も赤くなってんだよ」 「! い、いえ、これは違います。……暑くなった、だけだす」 「あっそぉ」  #名前2#さんが不機嫌な顔になったと思ったらそのまま押し倒されていた。痛かったか?と聞かれるが畳なのでまだ痛みは少ない。 「ここで、ですか」 「……もうベッド行くのもめんどくさくて」  嫌ですと連呼してベッドまで#名前2#さんを連れてきた。先ほどとは逆で今度は自分が上になっている。#名前2#さんがニヤニヤとしながら太ももを撫でる。オヤジくさいと言うと「もうオヤジだよ」と返された。  年齢のことは#名前2#さんは地雷のような所がある。苦々しい表情を見るのは好きなのだがこのままだと有耶無耶に夜を終わらされそうだった。  首筋に吸い付く。シャワーを浴びていないせいで臭いがついている。シャワー行きたいと言い出した#名前2#さんに体重をかけてやった。腰を擦りつけるように顔を上げると#名前2#さんはもう意識を落としそうになっている。普段のストイックさの反動か快楽に堕ちるとこの人は弱い。 「ねえ、#名前2#さん。シたいでしょう? 食べていいんですよ」  シャツがめくられる。触りやすいようにシャツの裾を持っていると寝転んでいた#名前2#さんも起き上がってきた。胸を押し上げられる。女のような柔らかい胸ではない。撫でられた体が熱い。じわりじわりと募らせていくようだ。筋肉が詰まった硬い胸に#名前2#さんはへらっと笑って吸い付いた。シャツから見える頭が愛おしく見えてしまう。シャツは口に噛み、その頭を撫で回した。ちらりと頭が上に向いた。シャツで見えないが笑っているのは雰囲気でわかった。じゅっと力強く吸われる。 「んいぃっ! うう、ぁっ」 「綺礼かわいい。ああ、片方だけじゃ可哀想か」 「ふぁ、ああっ、ぁっ、っう」 「ここやられるの好きだもんなあ」  乳首の先を親指で押し込まれる。無理矢理に押しつぶされる感覚が快感となって体を走った。#名前2#さんがわざと胸毛を剃ったところを舐めてくる。離そうとしても体重をかけられて腕だけでは勝てない。  #名前2#さんが満足したころにはシャツも脱がされて胸は唾液でベトベトになっていた。  枕を腰の裏に差し込まれる 「綺礼キャンディみたい。甘くて美味しい」 「……。舐める、だけですか」  つまらんと思ったのが伝わったのか#名前2#さんは顔を手でおおってため息をついている。最初の頃は呆れられたのかと思っていたが今は#名前2#さんが気持ちをセーブしようとしているのだと知っている。足を上げて#名前2#さんの腕に絡ませた。 「舐めるだけですか」 「そんな訳」 「ごめん、久々で止まんな…」 「あ゙ッ、あ゙ッ、おっ、ンアッ!」 「~ッ、は、あ、やば、イぐっ…」 「! はや、やら、まだ足りなっ…」  ゴムの感触が強まる。#名前2#さんがごめんと謝りながら抜いてしまった。口を結んだスキンを捨てて新しいものを探すが見当たらないはず。スキンはそこまで用意してない。 「……ここで止めるっていうのは」 「殺しますよ」 「やっぱり?」 「あっ、んっ…んっ、はぁ、きもちぃ…っ」 「きれい、しめすぎ…っ。出ちゃう、からッ!」 「やら、らして…、らして、なか、」 「ダメだって! お前、自分で掻き出さないだろ!」  生での挿入は#名前2#さんが嫌がる。病気はないと確認しているのに。足を絡め#名前2#さんの腰を自分の元から離れないようにホールドした。#名前2#さんが前に倒れて顔が近づいた。  #名前2#さんの唇はきつく結ばれている。頭を撫でて耳をくすぐる。舌でつつき少しずつ口を開かせた。てらりと光る舌に自分のそれを絡ませた。水音が響き脳内で麻薬のように快感に浸からせる。ナカのそれがまた硬くなった。 「ちゃんと掻き出してもらう。#名前2#さんに」 「……。仕事終わってないんだけどなあ」 「フフ。可愛い嫁のためです」  自分で嫁というのは恥ずかしいが#名前2#さんはもっと恥ずかしそうだった。にゅちゅにゅちゅと#名前2#さんが動き始めた。足を広げ動かしやすくしてやる。太ももを捕まれ#名前2#さんがズプズプと挿れている姿を目の当たりにさせられた。肉が当たる音とローションの濡れた音、#名前2#さんと自分の荒い息。何もかもが自分の嫌いだったものなのに、今はその中にいることが嬉しくなっていた。  #名前2#さんと手を握られた。音の間隔が狭くなる。 「はぁっ、ああ゙~~~ッ、あ゙っ、はァッ!」  どくどくと体の中を血が流れている。#名前2#さんの方も脱力して覆いかぶさってきた。ぐちゅりと抜かれたそれに白いものが垂れてくる。舐めた私に#名前2#さんが嫌そうな顔をした。そんな顔をされるからもっとやりたくなるのに。