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 結局リドルはリドル家の当主となった。半純血である彼が貴族の当主になったことは他の一族の反感を買ったがアルンハイムの支援を見て何も言わなくなった。アルンハイムに逆らうことの方がデメリットが大きいとみな分かっていたのだろう。  アルンハイムは正義の味方ではない。自分に都合のいい人間を助けるだけだ。その性格は沖野さん…今はグラハムだが、彼にとてもよく似ていた。アルンハイム曰くグラハムが自分に似てるそうだが#名前2#にはどちらでもよかった。このまま行けばリドルは闇の帝王にはならなさそうだ、と安心したのもつかの間でキャリーはまた現れた。 「ダメです、まだ帰れません!」 「どうしてだい?」 「まだスネイプ先生が死ぬかもしれないことには変わりないんです!!」  キャリーはそれ以上何か言うことは無かったが繰り返し、まだ帰せない、スネイプが危ないと言った。スネイプなどといったら自分にとっては息子の世代にあたる。彼が死なないようにするために主人公のハリーポッターまで待っていたら自分たちはもうおじいちゃんである。想像してみると自分がそんな年齢になるまで生きた覚えがないと思い当たった。ここで平和に暮らせればそれでいいか? いや、沖野さんにも言われたように世祖を探さなければならない。やっぱり安全な場所でぬくぬくと幸せに生活することは#名前2#には合わなかった。 「お願いします、力を貸してください!!」  #名前2#は頷こうとしたがそれを時臣が手で制した。幽体のキャリーを睨み「兄様に何させるつもりだ」とうなる。 「兄様も私もお前のわがままでここにいるんだ。その上、まだ働かせるのか? お前の召喚では私達は日本には帰れない。イギリスでも宛がないまま、どうしろと」 「あの…わたし…そんなつもりじゃ……」 「説明をしろと言っているんだが、聞こえなかったかい」  時臣に睨まれてキャリーは小さな悲鳴をあげたが#名前2#も流石に助け舟は出せなかった。今の返事はキャリーの方がよろしくない。 「キャリー、君はどこかで寝てるという話だったが……それは、あれか? 君はどこかでちゃんと生きてるのか? 初めて会った時と姿は変わってないだろう」 「……生きています。でも、詳しいことは言えないんです。それがこの力を使うための約束」 「君はセブルス・スネイプを助けるためにここにいる、んだよな。まあ幽霊になってるけど。俺を召喚して、君に使われることは別に構わないが俺も人間だ。使われることに対して色々と考えたりもする」 「……えっと、はい」 「何が言いたいかって言うと今のところ君を信用できる術がなくてだな」 「……」 「リドルはもう大丈夫だと思ってる。あいつを助けろって言うのが最初の命令だったはずだ。俺達にまだ命令するって言うのならもう聞けない。百歩譲ってもあのタイムスリップで俺と君の契約は終わりだ」  キャリーは何か言いたげにしていたが起きる時間なのだろう、そのまま帰って行った。彼女には彼女なりに何か理由があって行動をしているのだろうがあまりにも情報がなさすぎる。それに信頼関係も上下関係もないまま一方的に仕事を押し付けられるのはうんざりだった。世祖や沖野さんだけで#名前2#には手一杯なのだから。 「兄様、すみません。私が出張ってしまい」 「いいや、俺も言いたいことあったから嬉しいよ」  頭を撫でてもらい時臣はへにゃりと力を抜いて笑った。やはりこの人は自分の兄なのだと言い聞かせる。そして同時に思うのは自分は兄弟じゃなかったらこの人から1度だって視線を貰うことはないんだろうということだった。  リドルは寮監だけでなく、ダンブルドアとの個別相談も経て闇祓いなど仕事を決めるのではなく貴族社会で生きていくことを決めたらしい。それを聞いた時のスラグホーンの落胆ぷりと言ったらない。彼はリドルがホグワーツに戻り教師となることを望んでいた。  その代わりというように#名前2#の方がホグワーツに居残ることになった。天文学の教師に気に入られたのだ。スネイプを守るのに丁度いいと#名前2#は頷いた。時臣は卒業後も日本には帰れないといい、#名前2#と共にアルンハイムの庇護に置かれることが決まった。アルンハイムはダンブルドアと同じくらいには歳をとっているように見えたがわざとその姿をしていたらしく本物の姿を見るとどうにも沖野さんにしか見えなかった。こうやって見ると沖野さんはもしかしたら外国人の血が流れているのではないかと疑うが、2205年の日本はどうなっているのかサッパリ分からないので何も聞かないことにした。  談話室でアルンハイムに向けた手紙を書いていたらリドルが駆け寄ってきた。ねえ#名前2#と口を開いた時の顔は昔、人見知りで前を向けないリドルにそっくりだった。ゆっくりと落ち着いた雰囲気で#名前2#が返事をする。 「君はホグワーツに残るって…」 「まあな」 「………君が残るなら僕も教師になればよかった」 「何言ってんだよ、リドル家の復興がお前の願いだったろ。ここ卒業したらめんどくさい奴らに揉まれるんだから頑張れよ」 「…ありがと」  リドルは#名前2#がホグワーツにいるのなら、と理事長に名前を連ねることを考えた。身内に甘いアルンハイムに願い出れば自分もまたすぐに理事長になれるだろうとも。そういえば弟君はどうするのか決めてるのかい?とさり気なく聞いてみた。目下リドルのライバルはブラコンをこじらせている時臣だった。 「行く宛がないならアルンハイムが引き取ってくれるらしいからお願いする。時臣には役所仕事とか無理だし、アルンハイムの所で貴族とは何たるか覚えた方がいいと思って」  つまりリドルと同じように時臣も#名前2#とは別れることになるのか。だが兄弟というアドバンテージがある。そっかあと寂しそうに笑うリドルに#名前2#はニマニマと笑った。 「何だよ、俺がいなくて寂しいのか? 変わってないなあ」 「……僕のこと放っておいてしかもずっと忘れてた人にそんなこと言われたくないなあ」 「忘れてたって……覚えてたら逆に怖いだろ。どんなタイムパラドックスだよ」  #名前2#の言葉にリドルは何も言わなかった。ただじっと見つめる視線は覚えがある。だが、応えることはできなかった。#名前2#は吹っ切れた訳では無い。また青いあの付喪神に会えるのではないかという未練があった。 「元気でやれよ、リドル」 「君もね」  キャシーからの連絡が来ないまま数ヶ月が経た。一応元スリザリン生としてスラグホーンに副官になるよう言われたのだがどうしようか困っていた。寮監と言うと何かと面倒な役職なのだ。役職は遠慮してとにかくまずは助手として仕事したいと言うと納得してくれた。9月になると新入生たちが入ってくる。#名前2#が教師側の座席に座っていると扉が開き新入生たちが天井を見上げたり周りを見回したりしながらぞろぞろと歩いてきた。昔はリドルもあんな姿だったのだろうかと考えると少し楽しい。最初の授業はまずまずの出来だったが、#名前2#が求めているのはもっと面白い授業であってこんな所で終わらない、と頑張っていた。  天文学の助手を3年務め、今は自分が教師で恩師が助手となった。恩師は既に辞めたがっていたがダンブルドアに引き留められて一応は助手という名目になっている。だが授業に出ることはほとんどなく、基本的に#名前2#が授業を進めテストを作っていた。  天文学は星を実際に見ないと分からない、というのが恩師の言葉で#名前2#もできるだけ夜に近い時間に授業を組んでもらうようにしていた。辛くないと言ったら嘘になるがそれなりに楽しみながらやっていたので授業で困るということは無かった。彼らが来るまでは。  ある年にブラック家の双子がホグワーツに入学すると聞いた。#名前2#の記憶では彼に弟はいても双子ではなかったはずだ。時臣に聞いてもブラック家はシリウスとレギュラスの2人だけのはず、という返事が来た。ついでに質問したキャリーのことも、時臣はもうずっと見ていないと言うのだった。  彼女はいつの時代の人なんだろうか、と考えながら新入生を見ていたがその年には#名前2#は驚くことに出会った。「ブラック・キャリー」と名前が呼ばれたのだ。隣にいるのはあのシリウス・ブラックの小さい頃の姿! まさかブラック家の双子が彼女だとは思わなかったが、スネイプを守りたいと言っていた彼女のことだから身内の懐柔作戦と言ったところだろうか。#名前2#はニコニコと彼女の組み分けを見守っていた。キャリーの方も帽子のところまで歩いていくと#名前2#が座っていることに気づいたらしい。俯いたままそっと椅子に座った。キャリーとは喧嘩別れをしていたことを#名前2#はその時突然思い出した。このままでは良くないだろうと思うが彼女の方から夢に来てもらわないと困る。とにかく今は彼女がどの寮に行くかで今後のことを考えようと思った。帽子は考え込んでいた。#名前2#とは比べられないくらいに考えていた。キャリーの性格はグリフィンドールかもしくはハッフルパフでこそ育つものだが、本人の希望はスリザリンだった。このままスリザリンへ送っていいのか、それとも育つ方にするか。悩んでいた。帽子はついにキャリーに聞いてみた。なぜそんなにスリザリンがいいのか、と聞く。ブラック家のことを言われたならば絶対にスリザリンではない所にしようと思いながら。キャリーは小声で囁いた。 「私、#名前2#の元で学びたいの」  その言葉は心からの本気のものだった。あの男に感化されたのだな、と帽子は笑い高らかにスリザリン!と叫んだ。