緋色の奪還
安室さんの話を遮ってしまったのでまた話を聞いてみると第一発見者がこの人だったらしい。設定どれだけ増やしてくの、この人? 探偵と捜査官の推理によると(というか安室さんの推理によると)学校の職員室で殴られたあと、車で杯戸公園へ連れていかれ、階段から突き落とされたと。うーん、俺のシルビアが怪しまれるのも仕方ない。 と、容疑者は俺たち+ここの体育教師(菅本先生)だそうだ。菅本先生は澁谷先生のストーカーだったらしい。探偵としての安室さんに澁谷先生はストーカー被害を申し出た、と。こう言っては変だが、実害がないとストーカー対策には警察も動けないので、いい探偵に相談したなあと思う。 「#名前2#さんさあ、植野さんより前に来てて植野さんに会ったなら容疑者から外れるんじゃなあい? ねえ、高木刑事」 「あ、ああ、確かに……」 「ですが、彼がその人を殺しご友人か誰かを澁谷さんに成り済ませてここに座っていたとも考えられませんか? 彼にはご友人は多いようですから」 「そっすねえ、それも出来なくはないすけどねえ」 「ちょっと、#名前2#くん。まさか、貴方本当に……?」 「いや、やってないすけど平等に疑われるのが筋でしょう?」 俺の言葉に皆様、微妙な顔をしなさった。真面目に話してるのに一体どういうことか。別に犯人にして欲しいわけじゃないんだがなあ。 「んじゃあ#名前2#さんはさ、呼び出しの時にこの職員室でやった?」 「いや、どっか別の部屋に行かされたけど? なんか対面式の机んとこ」 ひょい、と指さした方向に他の人たちはええっ!?という顔をした。 「私は普通に職員室の先生の席に行きましたわ」 「俺は学校に入れなかったが、普段はそこの部屋は使わねえんじゃないのか?」 「そうなんすか?」 「あ、多分それは……」 俺たち容疑者の後ろにいた先生がおずおずと手を挙げて話し出した。つまりは、俺がイジメ問題で呼び出しを受けたからだろうということだった。 「デリケートな問題ですし、もし誰かに聞かれたら嫌がられるでしょうからそういった配慮かと」 なるほど、という声が刑事さんたちから聞こえる。同じように俺も関心してしまった。 「なら、答案用紙とか見てない?」という質問に「お、おう? 何の話だ?」と聞き返した俺は犯人から外れることになった。 答案用紙の採点してるところを犯人は見ていただろうし、それを持ち帰らせたことはないだろうとそういう話らしい。俺が先生を殴って連れ去ったとしたら職員室の席ではなくその部屋になるだろうからという理由だ。確かにそうだな。 「それに、#名前2#さんが殺したとしたら他に人が来るって知ってなきゃそこで殴ったりしないでしょ?」 うーん、正論だ。俺が先生の携帯を見ていたらーって発言しても、そのスマホにはロックがかかっていて誰が来るかなんて見れない状況。容疑者であるが限りなくその線は薄いということになった。 持ち去られた答案用紙の写真を刑事と探偵とFBIが囲って見ている。ここらへん一帯、2時間ドラマの主役になれる人多いよなあー。一応まだ容疑者の1人なので写真は見ないようにして窓を見ながら世祖と待っていた。すると突然世祖が「FBIせんりゅー」とボソリとつぶやく。 抱き上げて耳を近づけると「それでもか、それだけなのか、えふびーあい」と声真似をしてこしょこしょ笑う。俺も思わず笑ってしまった。(いや馬鹿にしてるわけじゃないんだけど、世祖がまじめくさった顔で節をつけるから)必死に笑い声をたてないように我慢していたら安室さんの推理ショーが始まった。 現場写真に写っている答案用紙には2種類の丸付けのしかたがあったらいい。つまり、アメリカでのペケが正解マーク(まるは間違ってるからよく見てねっていう意味らしい。)と日本でのペケはばつの意味っていうやり方だ。 じゃあその日本式をわざと書いたのはだーれだ、ってことになるが満点の花丸の書き方から左利きの神立さんが犯人だろうということになった。安室さんはさらに追及をゆるめず、車を調べれば決定的な証拠になるだろうと言う。神立さんもそこまで言われると流石に犯行を認めた。とにかくこの事件は終わりを迎えたのだ。 推理ショーが終わったのとタイミングを計ったように澁谷先生が重体になったという知らせがきた。友人だと言っていたジョディ先生と依頼人のことだからと安室さんたちが出ていく。俺はと言えば友人でもないし、見舞いにはまた今度でいいよなという結論になった。 家に帰ると留守電にて包丁藤四郎から連絡があった。『家に帰ったらすぐに来てくれよな!』という彼の声はとても明るくて、いじめを受けている様には思えなかった。 「おっじゃましまーす」 「おーう」 不動にスリッパをもらい、家の中に進むと包丁ともう一人知らないやつがいた。……いや、その少年は知らないんだが見覚えのある顔だった。 「あ、#名前2#さん? 俺がいじめ受けてると思ったんだって??」 「うん、まあ、そんな感じ」 「ごめんなさい! 包君は僕がいじめられてたのを助けてくれたんです!!」 「そうだったん? 君はへーき?」 「でも大丈夫だよ! さっきあいつら公園で遊んでた時に釘さしてきたから!!」 世間ではそれを禁止してるんだぞ、と言いたいが先に手を出したのは向こうなのだし言わないでおこう。ていうか包帯…頭、ぐるぐる……。あー、やっぱりこれは謝りに行かなきゃいけないか。 「いじめの証拠もちゃんとあるぞ」と不動がアナログのボイスレコーダーとインスタントカメラの写真を何気に用意していた。俺の考えてることは筒抜けなのだろうか。裁判沙汰について考えてるってよく分かったなあ。そう思いながら不動の頭を撫でて大事に保管しとけよと金庫の方に押し出した。ごめんなさい、と頭をさげる少年ーー菊池ーーは三日月にやっぱり顔が似ていた。 菓子折りを持って謝罪に行くと、いじめをしていた主犯の少年とその親には問題があったらしく昨日はその3人のくずんだ糸をほぐすためにつきっきりだった。家族仲をよく見せるために本音は中へためこんでいたら辛くなってきて外へ当たるようになったんだとか。はた迷惑すぎる。まあ今はそういった荷物もなく軽い様なのでいいんだけど。 朝から大学を休んで工藤ん家にいるアパシー学生とは俺のことです。ちなみにコナンと世祖も一緒だ。なんでもこれから(おそらく夜。なら、どうして朝集めた。)安室さんが仲間を連れて乗り込んでくるらしい。もしかしてヤクザのNOCなの?と聞いた俺にコナンはマジレスして「おそらく、公安の人だよ…」と言う。ごめん、ネタを挟もうとしめごめんコナン。 コナン曰く安室さんを罠にはめるため俺を沖矢さんに仕上げたいそうだ。正直変装よりも世祖の力に頼るのが一番だと思う。そうしてくれれば俺も楽だ。何とか誘導しようかと思ったら変装のスペシャリストである有希子さんが「#名前2#君、なにか策があるの?」と聞いてくれた。 「そーなの、#名前2#さん?」 「うん、まあ……。変装のマスクはいらないし、変声機も本当はいらないけどコナンがアフレコするならマスクしますって感じなんすけど……」 「それ、本気?」 「ああ」 「……」 コナンと数秒見つめ合ってわかったよ、とうなずかれた。こればっかりは"原理"を説明できないのだが2人とも何か聞く事はやめてくれた。それと、今ここには見当たらないけれど赤井さんはキャメルさんの車に身を隠すそうなのでアメリカにいたころに作った合鍵をわたすとコナンに「#名前2#さんって超能力者じゃないよね?」と言われた。ちがうよー、俺じゃなくて世祖だよー。 「それじゃあ#名前2#くんに任せてもいいかしら? 私、優作の方に行かないといけないのよ…」 「あ、マカデミーノミネートおめでとうございますとお伝えください」 「さい」 「ありがとうねー!!」 頭をさげた世祖が可愛かったのかめちゃくちゃなでまわしていった。じゃあねーと明るく出て行く彼女はとても一児の母に見えない。美人すぎてアレのネタにできないが。見送りをした後、部屋に閉じこもらせていただいた。カメラや盗聴器、部屋の外に誰もいないことを確認して世祖に俺を沖矢昴へと変えてもらう。なんだかすごく不思議な感じだった。 5分ほど待ってから部屋を出るといつの間に帰ってきたのか赤井さんとコナンが仲睦まじくしゃべっていた。しーっと黙っていたら、世祖に服をひっぱられた。ウフフフと笑いながら「マカデミー、みる」と言うが……。うん、たぶん無理そうかも。 「僕も見たいですが公安の方々が来るんですから仕方ありません。ワンセグでも見られますよ」 「やんや」 「今回、レオナルド・Dが主演男優賞にノミネートされているそうなので僕の代わりにお願いしますね」 笑いかけた俺にわざとらしい咳が聞こえた。見やると、コナンと赤井さんがこっちを見つめていた。どうも、ドッペルゲンガーですって言った方がよかったかな。 「本当に昴さんだね」 「でしょう? 怪盗キッドには及びませんが」 気が抜けるとすぐに素に戻っちゃうしね。俺の言葉にコナンは勢いよく首を振った。予想以上だよ…!と顔が言っている。 「ううん、すごいよ…! ねえ、赤井さん?」 「ああ、そうだな……」 赤井さんの驚いた顔というのも珍しい。その珍しさのままこの後の展開もうまくいってくれるといいのだが。昴さんとしてこのまま安室さんと対決するのかあ。面倒だなあ。