03 友愛・親愛・熱のすぎた心

title: 自作

 おかしい……。#名前2#さんは一人暮らしの設定だったはず。なんでうちに下宿してるの!? っていうか、なんでわたしはそのことを忘れて家に帰ってきたの!? さっき返事したじゃん!!!! 「どうかしたー? 虫でもいる? 倒した方がいい?」 「なんでも! なんでもないです!」 「そう……。今日、お母さんは夜勤でお父さんはいつも通りらしいからおれが料理つくるからね」 「はーい!」  #名前2#さんの料理おいしいんだよなあ……じゃなくて! えっ、ええーっ。どうしよう、原作(この場合はわたしの書いた夢小説)と最初から違う! わたしの書いたノートの意味!!! 「どうしよう……」 「蒼子ちゃん、もう料理できるからね~~」 「はい、食べます……」  夢小説を書くのに、大事なことがある。それは書かないことだ。いちいちモブのことなんて追いかけてられないし、キャラクターの家族構成も追いかけていられない。わたしの書いた世祖という夢主にも家族はいない。いや、いたけれど。ほぼ絶縁状態にしている。  #名前2#さんの家族関係もそう。ほぼ、書いていない。大学生活、一人暮らしをはじめたとだけしていた。家族は生きている。世祖と、今度挨拶しにいかないとと話していた。わたしがそうさせたのだけれど。  でも、今はわたしの家に下宿していて家族関係もよく知っている。うちの母と#名前2#さんの母はものすごく仲がいい。家族ぐるみの仲の良さである。わたしは小さい頃から#名前2#さんと遊んでいた。#名前2#さんが大学に通うにあたって、1年生の間は必ずあるキャンパスに通わなきゃ行けなくて、2年生になると学部に合わせてキャンパスが分かれる。1年で引越しするのは大変だから、と#名前2#さんは最初のこの1年だけはうちに下宿ということになっている。微妙に家の契約とズレるけれど、交通費出すよりはマシと言っていた。  わたしも年頃の女子高生なのに、と思ったのか父はわたしの部屋に鍵を付けて#名前2#さんは許可なく共用の部屋と自分の部屋以外に入らないようにルールを言い渡した。#名前2#さんは律儀にそれを守っている。わたしの家は看護師の母とサラリーマンの父とで、バラバラな時間で過ごしているので#名前2#さんが家のことを手伝ってくれるとすごく助かる。来年から#名前2#さんがいないのは結構寂しい。  わたしは、世祖の恋愛相手とした#名前1##名前2#ではなくひとりの生きている#名前1##名前2#と対面しているのだ。 「蒼子ちゃん? ごめん、今日の料理気に食わなかった?」 「う、ううん。おいしい。明日のお弁当にも入る?」 「うん。入れる予定」  わたしは、もしかしたら、自分の書いた夢小説のせいで死ぬのかもしれない。馬鹿みたいな話、それはリアルにありうる。なにせ、世祖という女は超ド級と独占欲をもった女だ。我ながらひどい設定にしてしまった。いや、めちゃくちゃ強い女が冴えない男にベタ惚れの状況が好きだったから仕方がない。でも、女子高生と一緒に住んでいるという状況であの夢主はわたしを殺そうとしてもおかしくないなと思った。 「#名前2#さん……。わたしが死んでもわたしのこと忘れないでね……」 「急に何!? えっっ本当にどうしたの、学校が嫌なら行かなくてもいいんだよ!?」 「ごめん、特に自殺とかの予定はないから安心して」  わたしの言い方が悪かったようだ。  お湯につかりながら夢小説のことを考えていた。当然、わたしが使っていたサイトには入れなかった。というか、URLはあったが別の人がサイトを運営していた。わたしの知らないジャンルだった。映画らしい、ということを知って検索してみるがわたしの元いた世界と同じ映画なのか分からなかった。呪術廻戦の世界ではなんだっけ、○○人間とか言ってたような。順平が映画を観てた気がする。あと、そうだ。虎杖悠仁も映画を観ていたっけ。  ここはわたしが知ってるようでよく知らない世界だ。だから、#名前2#さんの後ろに今まで見たことないような人間なんかが見えるようになったのだと思う。美しい男が、#名前2#さんのことを見守っていた。  お風呂からあがって部屋に戻った。虎杖悠仁が高校生。ということは、漫画のスタートはもうすぐだ。宿儺の指を彼が食べる。  世祖は虎杖悠仁を助ける。そうして問いかけるのだ。#名前1##名前2#は知っているか、と。病院で会ったことがあるだろう、と。 「……あれ? もしかして、うちのお母さんもヤバい?」  #名前2#さんが病院に行くのは怪我とかじゃなく、大体うちの母の様子を見に行くためだ。忘れ物を届けに行ったり、緊急事態でバタバタしているときは着替えとかを持っていくのも#名前2#さんがしてくれている。それを世祖が見ていたとすると……。 「あぁもう! 死亡フラグ!!」  作者のわたし!! わたしのことを殺そうとしないで!!