堕ちた帝国「美しさ」「証人」「所有する」
#名前2#はハーバード大学に突然飛び込んできた男だった。決して私ほど頭がいいというわけではない。とにかく明るいキャラクターと物怖じせず勉強に挑む性格が周りに受け入れられてなんとか卒業するに至った男だ。 彼と仲良くなったきっかけは、#名前2#の方があまりにも分からなすぎて私に泣きついてきたのだった。彼と勉強していると分からない人にどうやって教えればいいのかわかるので貴重な体験だった。人心掌握の術は手に入れたと思っていたけれど、#名前2#には効いてるのか違うのかイマイチ分からなかった。バカにはきかないのかと思ったけれど、彼には裏表が無さすぎてそんな風にひねっても意味がなかった。たまには直球で進むのもいい。#名前2#とはそうやって友達になった。私は段々と彼の隣に立つことに固執していた。彼はあぶなっかしい男だった、私が見てやらないと、と思っていた。 成績としては輝かしくなくても彼のハーバード大学卒という経歴は日本でも好意的に受け入れられていた。 しかし彼はそんな経歴とは関係なく自分の家業を継ぐと言った。私は塾を開き、彼は畳屋になった。彼は海外に畳を売ることを覚えた。彼には商売の方の才能があったが、あくまでも「畳屋」として通していた。彼のそんな姿が好きだった。 #名前2#のために一軒家をひとつ買い、別荘として作らせたが#名前2#に笑われた。今どきこんなに畳を買うやつなんていないぞ、と言われたけれど私は「普通」ではない。天才であり、親友思いの男なのだ。 #名前2#に恋人ができないことは私にも疑問だった。あんなにいい男になぜ恋人が作られないのか。ちょっと考えてみたが、それこそ1秒で答えが出た。#名前2#に釣り合う女がいないのだ。仕方ない、私が探してやろう。そう思った。しかし私が考えているうちに彼は恋人を作り私に紹介してくれた。彼の横に女がいることにひどく腹の中が疼いた。怒りと憎しみと羨望だった。私はなぜ自分がそんな気持ちを抱くのか分からなかった。 私は教え子の死を通じて教育の概念を変えた。99パーセントの働きアリと1パーセントの怠け者のアリ。それを体現させたEクラス。塾として使っていた場所をそのままE組にあてた。あんなことが二度と起きてはならないという戒めだった。#名前2#は学校が開校したときには結婚していた。結婚式には妻となる彼女のウエディングドレスを見て吐き気もしたが#名前2#の白いタキシード姿と相まってなんとか耐えることができた。彼らにはきっと子どもができるだろう。その時には私の子どもも横にいた方がいいかもしれない。#名前2#と会話することも増えるし、うまくいけば子どもたちを結婚させて#名前2#と親戚になれる。うん、それがいい。理想の学習環境と、生活環境。それを作るためなら私はなんだってできる。優秀な女性の遺伝子もほしいところだが、どうしようか。 #名前2#のためのスピーチを喋りながら私はそんなことを考えていた。