時間は破壊可能か?「三秒」「愛せない」「予言された」

フランクの話続編です。  三秒間。それが僕らの会話の時間だった。#名前2#はいつも僕より忙しそうにしていた。食事時はどの怖がらせ屋も大事にしている。大勢が並ぶ中でへんに会話でもしようものなら怒られてしまう。だから僕はいつも「ありがとう」の一言ぐらいしかかけられなかった。#名前2#はそんな大勢のお客がいても、必ず好みを考えてくれる。優しいのだ、彼は。彼の見た目も好きだったけれど、何よりもその優し気な声が好きだった。 「こちらこそ」  そう言って笑う#名前2#が大好きで、その姿をずっと見ていたかったのに。いつか彼のアドレスをゲットするって思っていたのに。それを、それを……。 「お前、俺と一緒に組むか!」  ターナーのせいで僕の計画は台無しだった。僕が頑張って話しかけようとしていたあの何か月という時間を返してほしい。ばーか! ターナーのばーーか!!! ターナーも3か月通ったというけれど、僕はそれ以上の時間かけて彼のことを追いかけてたのに!!  ターナーに背中を押されて、というかしびれを切らした彼に無理やりくっつけられたというか。僕は#名前2#のパートナーの座を射止めることができたのだった。  僕は運命の愛だとか、予言された相手だとかを全く気にしないタイプだ。自分の好きなものを信じているし、そんな決められたもの全部破り捨ててやりたいと思う。だけど……#名前2#はその場合には当てはまらないみたいだった。まだ食堂で働いていたころの#名前2#のリサーチは完璧だ。彼に話しかけられない僕は彼の周りの女の子から落とした。そして彼の「理想」について聞きだしてもらったのだった。彼の理想はまるでお伽噺で僕にはアレルギーでもあるのかと思う位に好きになれなかったのだが、それでも我慢していた。僕は彼のために念入りに計画をした。  偶然を装って彼と会ってみれば彼のおめでたい頭でも僕のことを運命の相手だと思ってくれるかもしれない、と。僕のけなげな努力である。 「それが逆効果だったんだねえ」  僕の恥ずかしそうな声に#名前2#はげらげらと笑っていた。彼は僕が思っているよりもしたたかな一面を持っていた。僕に対して引け目があるものの、あのターナーの新しい相棒を務めている彼はそれなりに自信をつけたようだった。酒を飲む彼はちょっとだけ顔を赤くさせてスキンシップも多い。前だったら考えられないその距離感に僕の方がテンパっていた。言わなくてもいいことまでしゃべってしまった気がする。 「そりゃあ俺は兄貴との出会いが運命だと思うしさ。でも、俺は見るだけでよかったんだ。それだけで、満足できてたのに。兄貴に引っ張られちゃったからね。自分も舞台に立ってみて、そんな甘い考えは捨てたほうがいいって思ったんだ」  #名前2#に言われて僕は彼のことをよく見れていなかったのかな、と反省した。僕の知らない#名前2#が顔を出しているようで、僕はそれについていけるのか心配になったのだ。ショットをもう一杯お願いすると#名前2#に止められてしまった。 「フランク。そんなに飲みすぎると明日に響くぞ」 「……だって」  心も弱っていたんだと思う。僕はこの#名前2#のことを愛せるのか心配になっていたのかもしれない。僕は心の中で「#名前2#」という偶像を作り上げていた気がする。いざ、会話してみればどうだろう。分からないことだらけで頭がいっぱいいっぱいだ。 「そんな、#名前2#のこと僕知らなくて。好きになったって、そう、思ってるのに。愛せるのか、分からなくなって」 「あーー、つまり、素の俺が愛せないかもって心配してるわけ?」  #名前2#の言葉にうなずいた。彼はまた笑いだしそうになっていたけれど、僕には一大事だ。 「フランク。ありがとう、そう言ってくれて。別に付き合えなくてもいいんだ。俺はさっきも言った通り、見てるだけで満足できる。好きって気持ちを、持ってるままでもいいのならそれでいいんだ」  #名前2#はまた食堂で見せたような顔を見せた。僕はまた寂しくなってしまった。折角彼の素顔を見れたのに、僕はまた遠ざかってしまった気がする。自分でも何をすればいいのか分からなくなった。僕は肩を優しく叩く彼に甘えていた。  だって、今、この瞬間でやっぱり#名前2#が好きだと思ったのだ。馬鹿な僕は、#名前2#の好きだと言ってくれた気持ちを無駄にしてしまった。#名前2#はもう僕の方を見てくれなかった。ちょっとだけ。ちょっとだけ、不安に思った気持ちのせいで。僕は、大きな失敗をしてしまった。