聖人君子の脳髄液は甘いもんだね
好きで彼と関わっているわけじゃない。花御がやるっていうからついてきたんだ。そしたら、向こうがおれのことを気に入ったのかなんなのかずっとくっついてきた。ずばり、と治癒能力の低いおれの手を切ったりしては甦らせる。 「わあ、頑張れ頑張れ。ならやれるよ」と声をかけながら向こうはにこにこ笑っている。まるでおれはオモチャである。花御の方をむくと夏油とかいう男となにやら会話していた。こっちのことなんか向きやしない。 力を込めて作り直せば真人は切り取ったおれの手をまじまじと見て「これもらってもいいー?」と聞いてくる。 「……好きにしてくれ」 「やったー! あ、#名前2#も俺の好きな箇所とかもってく? 交換しよっか!?」 絶対したくない。花御にやられるならまだしも。おれは少し考えたあと「指とかでいい」と返した。いらない、と言っても角が立つし何かもらっても大事にしないだろう。適当に指先などだったらまだ……と思ったのだが、真人は顔を真っ赤にさせていた。 「なんだよ!?」 「えっっ、あ、いや。えーー、これ何……?」 「おれのほうが知りたいっての……」 真人はおれにはい、と人差し指を切り取って渡してきた。どうすればいいか困り、宿儺の器が指を飲み込んでいたことを思い出す。おれもこれを食べれば呪力が上がったりするのだろうか。どうしようもないので飲み込もうと口を開いたら真人が「えっ、ここで食べるの!? ちょっとーー! 恥ずかしいよー!!!」と叫んで消えた。何が起きたのかおれの方がよく分からなかった。 真人がを気に入ったのなら何よりです、と花御がいう。ほかの呪霊たちはおれのことなんか気にもしない。むしろ真人がおれの所に来るから清々している表情である。おれはこの中で1番弱い生き物だからどうなってもいいのだ。いや、それは構わない。呪霊として何かやりたいという気持ちもないし、長く生き続けたせいで呪いになっただけだと思うし。ただ、真人は違う。たぶん、呪霊として自我を持てるようになったのはつい最近とかだ。気持ち悪いくらいに自分に素直かつ、真面目だ。ふざけながら自分のやりたいことを貫き通す生き物だ。だからこそ怖い。おれは、自分の存在が彼によって否定されるかもしれないという恐怖と向き合いながら彼のオモチャになっている。 真人はおれが嫌だ怖いと言うのも聞かずに人間の性行為について調べてきた。 「脳姦って言うんだって~~」 にこにこと花を咲かせたように笑う真人はおれの肩に手を置くとぐちゅぐちゅと音を立てて人間の陰茎を作り出した。気持ち悪い。元々なかったものが生み出されてどうしようというのか。真人はにこにこ笑ったまま「それでさ、俺の頭をついてみてくれない?」と言う。 「……はぁ?」 「え? 分かんなかった?」 じゅぽり、と気色悪い音がして真人の脳が割れていく、いや、ほじくられていると言えばいいのか。穿つための穴が彼の後頭部にできていた。 「ね、入れるだけ。簡単でしょ?」 背を向けている真人の顔は見えない。だが、その声は明るく残酷だった。 元々三兄弟たちのように服のようなものは着ていない。あるのは植物によって編み込まれた何かだ。それを汚さないようにそっとどけて真人の頭にあてる。入るのか、と当ててみるが全く入らない。 「ねえー、ちゃんとやってよー?」 「っ……。わかってる」 おそるおそるそれを握ると、ちゃんと感覚があった。人間はこんなのを外に出て辛くないのだろうか。夏油のことを考えて急所を外に出して生きているのはしんどいだろうなと思った。 ふにゃふにゃのそれを持ち上げ、真人の頭に入れるように狙いを定めた。髪の毛にかくれているそこはにゅるりと陰茎を飲み込んだ。 「ひっ……」 「ねえ、気持ちいい?」 「……あ、あぁっ」 「怖がらなくていいんだよォ」 こわい。泣きそうだった。真人がおれのことを殺すかもしれないという怯えも忘れて頭にしがみつく。体は気持ちよさを感じていた。おそらく、これが。快楽だった。初めての感覚だった。 動ける? と言われて手を振ると「そうじゃないよ、は馬鹿だね」と笑われた。穴に抜き差しするんだよ、とおれの手を掴み真人は舐め上げた。ぐちゅり、と脳にしびれが走る。なにかが込み上げてきていた。怖くて引き抜こうとしているのに真人の脳はおれのことを捉えて離さない。真人に掴まれた手はぎりぎりとひどい力で握りしめられていた。 「こういうこと、俺以外としちゃダメだからね」 しない、しないから!! おれの叫び声に真人は満足そうに「やったあ」と笑った。 起きた時には股の間にあれはなかった。よかった……と起き上がると脹相がおれのことを睨んでいた。 「な、なに……」 「お前のせいで、あの男がうるさい」 「えっ」 「結婚式をあげるとかいってるぞ」 「えぇっっ」