たくさん好かれる主人公にならないでね。お願いだよ
!ゴマイベあと 「も、もうアンタのことなんか嫌いよ!!顔も見たくない!!!」 売り言葉に買い言葉ってやつだった。俺の方が最初に失言をしてしまった。そこから盛大に喧嘩してしまった。俺が悪かったのだと思う。ヴィルがどれだけ自分の美しさ、ひいては自分の見られ方を気にしているのかわかってなかったのだ。 せっかくゴーストたちがいなくなって二人でゆっくり過ごせる時間が作れたのに失敗した。俺はどうすればいいのか分からずただただヴィルを見ていた。ここが俺の部屋で、ヴィルが遊びに来てくれたって言うのもまずかった。だってヴィルはここじゃなくてもいいのだから。彼の居場所は他にもあるのだ。 「そん、そんなの嫌だ!!」 俺は謝罪の前にくるりと背中を向けてしまったヴィルの腕をつかんでいた。うわ、何か言わなきゃ。ゆっくりとヴィルがこっちを向いた。泣きそうな顔で俺を見ていた。その顔を見て胸がぎゅっと苦しくなった。ヴィルがこの手を離したらどうしよう、と自分勝手にもそんなことを考えてしまった。 「俺は、ヴィルの恋人だから! えっと、会えないのはいやだ!!」 言った俺もよく分からなかった。ヴィルはぽかんとした顔で俺を見て「なによそれ」と泣きそうな顔で笑った。 「い、いや、だって。これしかいうことがなくて」 「……ごめんなさい」 「お、俺もごめん」 変な謝罪になった。俺の方から先に謝らなきゃいけなかったのに、と反省もした。俺はヴィルのことをたくさん知りたくなるけれどヴィルはそうじゃないのだ、と忘れていた。具体的に謝るのって難しい。もごもごと「嫉妬してごめん」と言ったらヴィルに「やめてよ」と怒られた。 「今回のはアタシの方が悪かったわ」 「……怒ってないの」 「ちょっとイライラした、の。ごめんなさい」 「い、いや……それは平気なんだけど」 「……」 ヴィルは何か言おうか迷うポーズをした。俺、まだ会話したいよっていう意味もこめて「座ろっか」と声をかける。ヴィルは俺の手を取っておずおずとソファーに戻ってきた。 「………ヴィルが、ゴーストに求婚しにいったって聞いて。本当にどうしたのかと思った」 「ごめんなさい、あの話は……ちょっと。アタシも嫌なことがあって」 「なんかね。ゴーストがヴィルの求婚を断ったのって腹が立つんだけどさ。でも、そんな見る目のない幽霊じゃなかったらヴィルは本当に結婚式をあげちゃうんだ、と思ったら泣けてきたんだよね」 そのせいでわざとらしく、当てこすりのように「俺には告白なんてしたことないくせに」と言ってしまったのだ。ヴィルの気持ちを全く考えていなかった。 「……。あれは、お芝居だったもの」 「お芝居?」 「ええ。ゴーストの理想に見合ったお芝居よ。犬を飼ってないってそれだけで断られたけど」 「ははは、犬かぁ」 「………。#名前2#は、犬は欲しい?」 「え? 別にいてもいなくてもどっちでも。ヴィルは?」 ヴィルは恥ずかしそうに「いらないわよ」と笑った。アンタを独り占めするのはアタシだけで十分だわ、とヴィルがいう。 「……」 「……。まって、いまの、あの」 「ヴィル、今のってさ」 「待って!! 本当に待ってよ!!!」 真っ赤な顔でヴィルは俺を突き放そうとするがそうはいかない。両手をとって体を抱き締めればヴィルは大人しくなった。 「……あー、もう。ヴィルは俺の何倍も先にいるからたまにどうにかなりそう」 「アタシだって追いかけてもらわないと困るのよ」 「先にいるのは否定しないんだ」 そりゃあそうよ、アタシそこらへんにいる人間とは違うのよとヴィルは笑った。そんな彼に「嫌い」って言葉を撤回させるなんて、俺はそれなりに愛されてるんだろうなあ。