からだを巡るきらめきを追いかけて

※スカラビアのストーリー終了後  実習と称して外に出ていた#名前2#さんは学園に戻り次第勢いよく俺の頭を叩いた。ぁあっと寮生の声が聞こえる。カリムは黙って俺たちを見ていた。#名前2#さんが戻るのはもっと後だったはずなのに。後から分かったことだが騒動をマジカメLiveで確認してすぐに実習を中断して戻ってきたらしい。4年生は基本的に寮のことに関与しない。それぞれの進路があるのでむしろ寮にいることの方が珍しいのだ。そんな中でも#名前2#さんはカリムを支える側の人間として寮で過ごす時間が長かった人だ。彼がいない間にカリムから寮長の座を奪う予定だったが失敗してしまった。怒られるだろうなという予感はあった。だが、想定していたよりも#名前2#さんは俺をののしることもなく怒ることもなく恨むこともなかった。泣きそうな顔で俺を見て「お前が生きてて本当に良かった」と泣いた。俺の生き方はカリムによって決まっている。それは当たり前のことだが#名前2#さんに泣かれるとは思ってなかった。 「これで俺も怒られるならいいんだけどな」 「……。すみませんでした」 「謝罪する気もないって顔してんな」  #名前2#さんはそう言うがこれでもしおらしい顔をしているつもりである。確かに計画が崩れて暴走はしたが……ある意味では吹っ切れたとも言える。ここで怒られても気分は落ち込まなかった。#名前2#さんはアジーム家の親戚だが従者の血筋ではない。学園を卒業したら自由に、いや、夢を叶えて教師になるそうだ。  最初は魔法士の道をあきらめることが夢だなんて呆れてしまうと思っていた。俺たちが入学する前にもゴタゴタがあってNRCってのはそんなにヤバい場所なのかとも思っていた。ヤバいのはあの学園長ってことが入学してから知ったこと。それまでは#名前2#さんはトラブルメーカーのイメージしかなかった。ただ魔法が使えると分かってからはこの人が俺たちの遊び相手であり、助けに来てくれる人でもあったから「学校に行ってグレたんじゃないか」とまで言われていた。学園に入って#名前2#さんは教師をめざしていること。未発達の地域に飛んで夢を叶える予定であることなどを聞かされた。俺がカリムのことで手一杯で夢なんか考える暇もない間、#名前2#さんはどんどん先に行ってしまう。俺の方が魔力もある。賢い。なのに、俺は#名前2#さんのような人にはなれそうになかった。 「ジャミル、お前の強さは俺もちゃんと知ってるけどだからといって……オーバーブロットまでやらかすのはまずったな」 「……バイパー家にも報せが来たそうですね」 「カリムに助けられたな。アイツのおかげで助かったようなもんだぞ」  わかっている。両親の反応がとてもめんどくさかった。従者の一族に生まれた忖度のせいで自分はとてつもないほどの我慢をさせられていた。別段、従者として生活することが嫌と思ったことはない。ジャミルはカリムという男が嫌いだっただけだ。もしも仕える男がカリムではなかったら……きっとよき右腕になれただろうと思う。#名前2#からも始まった説教にまたカリムが首を突っ込む。ジャミルは悪いやつだったけど、もう大丈夫だなんて。信じ切った善性の言動は相変わらず好きになれなかった。  スカラビア寮の暴動は一部の生徒にのみ伝わっていたらしいが一か月もすれば学園中のほとんどに知れ渡っていた。ひそひそと噂されることも多かったが気にすることもなかった。噂でしか語れない男たちなど相手にする気もなかった。それに、大体の生徒よりも自分の方が強いという自覚がある。自信ではなく「そうだろう」という事実を信じているというべきか、予感と言うべきか。そういった気持ちを持っていたので全く気にすることがなかった。 「ジャミル。今大丈夫か」 「#名前2#さん」 「……意外と、元気にしてるな。お前」 「うだうだ言っている男たちなんて気にしてても無駄でしょう?」 「ははっ、言うねえ。そういうタフさは嫌いじゃないぞ」  がしがしと頭をなでられる。#名前2#さんにそうされるのは嫌いじゃないがカリムに見つかるとすぐに離れていくその手がいやだ。遠くから昼飯を誘おうとするカリムの声が聞こえてくる。 「……#名前2#さんが見てない間、副寮長として鍛えられましたから」  精一杯笑ってみせると#名前2#さんは俺の頭をつかみ額を重ねた。#名前2#さんの顔が視界いっぱいに広がる。久々に#名前2#さんの匂いをかいだ。懐かしささえ感じるそれにじんわりと涙が浮かぶ。 「辛かったらちゃんと言えよ。もう、一人で暴走するな。お前がいなくなるのが一番怖いよ」  まるで告白だ。#名前2#さんにその気持ちがなかったとしても俺にはそう聞こえた。顔を離した#名前2#さんは真っ赤な顔で泣いている俺を見てふはっと吹き出した。 「なあ、その表情。期待していいのかな」  俺は小さくうなずき返した。カリムが俺たちを見つけて近寄ってくる。それまでにこの顔を早くなんとかしたかった。