非公開ラプソディー

!近親相姦ネタ注意 !スコッチの背景を大きく捏造  スコッチというコードネームを持った男を見た時、ああこの人はおれの兄だと思った。記憶喪失でこの組織に入って数年。最近ようやく自分の過去を思い出してきたところで、止めの1発のように自分が恋した過去の男は自分の兄と気づいたおれは大馬鹿者だろう。おれを産んでくれた父と母に申し訳ない。血を分けた兄弟におれは恋をしてあまつさえ結婚したいと宣言していたとは。 メスカルという幹部が弟と気づいた俺はどうにかして彼に近付こうとした。弟を家族としてもう1度迎え入れたかった訳では無い。記憶喪失が本当なのかどうかを確かめたかったのだ。 7月16日。某所での火事に巻き込まれた#名前2#。俺のたった1人の弟で、俺が一生かけて大切にすると誓った相手。あいつが好きで好きでたまらなかったけど、兄の俺はこの世界が兄弟での結婚を許さないと知っていた。この国では同性婚すらも禁止だ。俺達は細々と誰にも知られずに結婚の約束をした。弟の#名前2#はその約束を信じていた。 だがもう弟の戸籍は火事で死亡したとされてなくなった。#名前2#は俺の弟ではなくなった。それは俺にとってとても有難い話だった。#名前2#……いや、もういない男の名前を呼ぶのはよそう。メスカルはスコッチと外国に行けば結婚だって出来るのだ。だが、それらは全てメスカルが本当に俺の弟だった場合に限る。記憶喪失の彼がいつ、どこで、記憶喪失になったのか、首から背中にかけての火傷について聞かなければならない。スコッチはニッコリと笑ってメスカルに近づく。何年も離れたまま熟された恋心は凶暴に、愛されたいがためにはどんな事もしてやるという決意で固められていた。 兄さん、と呼ばないように気を付けながらスコッチとはなぜかよく会話するようになった。記憶喪失だと思っているおれを助けてくれるのかもしれない。兄さんは優しい人だったから。今の彼がなぜこんな組織にいるのかおれには分からないが何かしらの事情があるのだろう。おれのように自分の名前すら記憶にない、戸籍もないような人間はこうやって犯罪組織に入って働くしかなかったのだが。兄さんの夢は確か警察のはずだったのに、真反対だ。だが現実なんてそんなもの。おれのことを殆ど覚えてないような兄さんはきっとあの時の結婚の約束など昔の昔に白紙にしたのだろう。せめて弟がいた、と肯定してほしかった。そしたらおれは兄さんへの恋心をそのまま忘れられたのに。 メスカルにスコッチに兄弟はいたのか?と聞かれて戸惑った。メスカルが弟であろう確証はついたが(火事のことが記憶にあったのと、右肘の自分では見えないところに五角形のようなアザがあったのだ。あれは弟にしかない。)、記憶が本当に戻っていないかどうかは分からない。ここでいる、と答えておれがその弟だよと言われれば俺達はもう結婚など出来なくなる。それだけは避けなければならなかった。いや、いないよと答えた俺の声は震えていてメスカルがどんな顔をしていたか見れなかった。 スコッチとバーボン、ライがスリーマンセルをよく組むようになった。おれは元からカルバトスと一緒に行動することが多かったのであまり文句は言えないのだがモヤモヤした気持ちはたまっていく。スコッチと電話する度にバーボンが邪魔をするのだ。あいつ、スコッチのことが好きなんだろうか。………もしそうだとして、スコッチは弟に似ていると思っているおれよりもバーボンのことを好きになるのは仕方ないだろう。(スコッチの中ではおれはいないんだし、それっておれのことは忘れたいってことだろう?) 電話するとスコッチは快く出てくれるけど、もしかしてそれはおれがスコッチの……兄さんの、優しさに漬け込んでいるだけなのだろうか。スコッチは優しい人だから、おれのことを傷つけないように、でもバーボンはそんな電話を嫌がってて、………。そうか、おれは邪魔なのか。 メスカルとの電話が最近じゃあほとんど出来なくなった。かなり続けていたし、このままいけば恋人に戻れるとそう思ったのに。バーボンを恨めしそうに睨むと、「スコッチの方が悪いでしょう」と声を潜めていう。 「弟であろうと彼がノックでないことは明らかです。彼は犯罪者です。情はないほうが、捕まえた時楽ですよ」 それは分かっている。だけど何年も積み重ねた恋心は同僚の言葉で変えられるようなものでもない。にがく笑った俺にバーボンはため息をついた。 スコッチが粛清されるとカルバトスが教えてくれた。カルバトスはベルモットのために生きていると言っても過言ではなく、時たま情報が零されてくる。幹部の中でも別チームのおれたちはそうやって少ない接点で情報を交わし合う。粛清するのはジンのチームだ。彼は命の取りこぼしは認めない。…………スコッチが死ぬとこの世界は何も変わったりしないだろう。風は吹いて、木花は光を浴びて、人々は歩き続ける。バーボンは悲しんだりするのだろうか。……いや、おれの方が泣くだろう。スコッチはおれのことを愛してなくてもおれは兄さんでもスコッチでも何でもいいけどあの人を愛してる。愛されなくてもいい。ただ、生きてくれてればいい。おれは1度しかかけたことのない番号に電話をかけた。彼はとても警戒していて、おれは必死に話を聞かせた。彼の見返りに合う条件を何個も出してようやく頷いてもらった。スコッチを助けたいと思うおれは、ここで死んでも構わないほどに入れ込んでるらしい。大丈夫、例え死ぬようになったらおれのことを忘れないでって言うだけだ。 兄さん、おれは貴方を愛しています。生まれ変わっても永遠に。 目が覚めたら知らない場所に寝ていた。何が起きたのか分からないけれど、とにかくライが味方だとあの時初めて知った。自殺用の拳銃をスナイパーに弾き飛ばされて、もう殺されるのだと思った。自殺するのだって嫌だったのに。どうせ粛清にメスカルは加わらないからここで死にたかったのに。涙がふと流れ落ちた。ライは俺の拳銃をどこかへ蹴り捨て、なぜ泣くんだ?と聞いた。 「お前は今ここで死んだことになる」 「……は?」 「メスカルは、お前の弟だと記憶があるようだ。兄を助けたいと泣き付かれた」 「…………いや、待ってくれ。メスカルは、記憶喪失で、」 「お前を見て思い出したそうだ。…そろそろ誰か来るな」 「!」 「この下にワゴンが止まっている。飛び移れ」 「待ってくれ! これは、一体、誰が……」 「メスカルは、お前が死んだら困ると。こんな世界で生きられないと言っていた」 ずるり、と錆び付いたロッカーから誰かの死体が出てきた。バーベキュー用の油をどくどくとかけて燃やされていく。俺の代わりの死体か、と思いながら窓から飛び降りた。メスカルがどうしてこんなことをするのか分からない。俺がいないと困る。それは…家族が恋しいということだろうか。俺のことは、何と思ってるだろうか? 響いてきた声がバーボンだと教えてくれた。同僚なのに、騙してしまって申し訳ないと思っている。だけど……。飛び降りたワゴンの中にメスカルが居てくれた。そのことに俺は泣きそうだった。 「ありがとう、ライ。カルバトス」 タバコを吸いながら、死んでいったスコッチの身代わりを弔うように煙を吐く。スコッチは燃やさた風を装った。これで良かったのかおれにも分からない。警察の立場を捨てさせてまでスコッチと一緒にいたかったのか、と聞かれたら即答で肯く。 ーーそうさ。おれは兄さんがいなきゃこの世界で生きてく価値がない。 おれが勝手にやったことだ。だというのに、兄さんは嬉しそうにありがとうと言うものだから期待してしまう。馬鹿みたいにおれの心は兄さんの言葉一つで揺れ動くのだ。 #名前2#は寝る時に泣いていた。俺がいるから邪魔なのかと思ったけど、そうではないらしい。#名前2#にあいされてるのは分かってる。だけど俺から好きだと言うと、悲しそうな顔で「おれと兄さんの好きは種類が違うよ」と言うのだ。いつの間にかスコッチと呼ばれず、兄さんと呼ばれるようになって、そして家から出してもらえなくなった。そのことが嫌だと言うわけじゃない。死人なんだからそれぐらい当たり前だ。だけど#名前2#はそれを罪悪感のように思っているのか、ごめんなさいと寝る時に泣いていた。そんなに泣かなくても俺は#名前2#が好きだと言っても信じてもらえないならば、俺はどうすればいいのか。