眠れぬ夜の悪い子は誰だ

「ぅあっくしょい!!」 鼻水は鼻から出るまでかまない方がいいって前に塾の先生に言われたがそんなこと無視したくなるレベルで鼻がつまっていた。びよーんと垂れた鼻水をティッシュでぬぐってから鼻をかんだ。鼻セレブなんて高級なやつじゃなくて、前に母が車検の時にもらってきたやっすい箱ティッシュなのでもう鼻が真っ赤になってしまった。メンタムをぬって座布団の上でぼーっと窓を見ていた。一人暮らしでの風邪は割と多かったのだが今回みたいな長引くやつは初めてだった。ついでに寝覚めの悪い夢で風邪をひくのも初めてだ。いつかの事件で知り合った探偵とかいう2人に全力で追いかけられるという謎の夢だったのだが、おかげで汗びっしょりのまま朝がきて風邪をひくことになった。 そして厄っていうのはどうしてこうも続くんだろう。ピンポーンと鳴らされたチャイムに嫌な予感しかなかった。 「あーい」 「げえっ、#名前2#さん大丈夫かよ…?」 「おお、コナンー」 来て欲しくないNo.1が来やがった。こいつといるとろくな事にならない。というか初対面の時からひどい。容疑者として俺が1番疑われて、なんかメチャクチャ人のバックグラウンド調べられてから開放された。俺は母が金持ちのジジイの娘だなんてどーでもよかったんだから。しかもそのジジイがこいつにとってキーパーソンだったらしくすごい話を聞かされた。全て適当に交わした。 「風邪ひいたのか?」 「おーう」 「飯は?」 「果物とかそんなもん。あ、ラーメンの汁でおじや作った」 「………。ちょっと待ってて」 子どものくせに子どもじゃないとか言うこのコナンという坊主は本当は高校生らしい。まだお盛んな時に可哀想に、と同情してやったら真っ赤な顔で睨まれた。今どきこんな純情なやついねーよなあ。 コナンが戻るまでに部屋を少しでも片付けようと洗濯物を洗濯機につめこんでいたら慌ただしく階段を駆け上がってくる音がした。さっきよりも嫌な予感がする。 「#名前2#くん、風邪ひいて食事してないって本当!!?」 はいきたー。やばいのがきたー。来て欲しくないやつNo.0がきたー。喫茶店ポアロで働いてる三十路(笑)なイケメン店員のおでましだー。 「仕事、今急いで抜けてきたから!」 「#名前2#にーちゃん、はい布団に入ってー」 この安室さんの前ではコナンはいつも小学生らしく振舞ってくる。この温度差に俺というグッピーが死んでしまうことをいい加減こいつは理解すべきだ。 「今からお粥、作るから!」 「やめて! 俺、かゆは嫌いなんす!」 ここから5分、粥についての論争が起きた。かゆを食わせたい安室さんとゼリーがたべたい俺と、布団に入れて話をじっくり聞き出そうとするコナンの三つ巴だった。 「じゃあ何なら食べるの?」 「え、普通に飯食べるよ」 「普通のご飯じゃ消化に悪いでしょう……」 「えー。なら春雨食いたい」 それでいいかな。いいんじゃないかな。という2人の会話が聞き取れてなーんか嫌な気持ちになる。年上と年下のタッグに世話される俺って……。 「冷蔵庫の中身は……あんまりいいものないですが、まあいいでしょう」 「あ。玉ねぎとじゃがいもは外っすよー。あとにんじんは前にゆでたの冷凍してて、干ししいたけは自家製のやつが上の棚に」 言ったやつが全て実家から送られてきたものというのが悲しいがとりあえず後は春雨を買ってくればほとんどオーケーだ。ネギもあるし。 安室さんが作ってくれた春雨スープを食べながらコナンが来た用を聞いたらきゃつは笑顔で俺が忘れようとしていたことを爆弾のように放り投げてきた。 「あのね、#名前2#さんを追いかける夢を見てね。もしかしたら正夢かなーって思って」 「ぶっふ…! え、なに、俺はお前にとって犯罪者になりそうな人ナンバーワンなの?」 俺がお前を疫病神で来てほしくないやつNo.1とか言ってたせいか? 「あ、それ俺も見ましたよ。あー、やっぱり#名前2#くんだったんですね」 ……俺は、もう何も突っ込まない……。 「匂いがそれっぽかったんだけど、顔は見えなかったんですよね、僕の夢」 「……へ、へえ」 「…あ。…しょ、職業柄! 探偵だといろいろ匂いをかぎ分けることもあるからです!」 言い訳がましい言葉だが俺は何も突っ込まないぞ……。コナンに足をこづかれてアイコンタクトで「なにかしゃべれ」って言われてるが俺は春雨で口が満杯だ。誰かこの微妙な空気から俺を連れ出してくれ。 ピンポーン、と間抜けな音がした。出ようとした安室さんたちを止め薄っぺらいドアのところに駆け寄る。また母さんからしそとか送りに来たのかもしれない。 「今あけまーす」 「やあ」 「お帰り下さいませ」 おい、死んだはずのFBI。はやく帰ってくれ。中にいるイケメン店員が怒りだす前に。マジで俺の風邪を悪化させてくれるな。