眠る男と欲しがる男
社畜。最近でもないがネット上ではよく見られるようになったこの言葉は会社の家畜という意味らしい。残業に早朝出勤に働いて働いてとにかく働く俺達の様なことを意味する。嘘だ。俺はそんなに働いていない。でも最近は就活も色々あってか面接面接面接の嵐である。作り笑いで話を聞いて質問をする。マニュアル通りの質問をしたり、意地悪な役になってみたり。慣れないことをやれば人のキャパシティは簡単に壊れてしまう。 「つかれた」 キャパシティの壊れた人間は語彙力すらもなくなってしまう。そして疲れすぎると溜まるものは溜まる。 「大丈夫かい?」 「零くん……。うん、平気。ごめんトイレ入るわ」 「うん……」 トイレで抜く方が楽と気づいたのはいつだったか。同棲相手がいると自慰をするのにも気遣ってしまう。部屋に鍵かけるわけにもいかないし、風呂場は精液がパイプに詰まりやすいからあんまりよろしくない。最終的にスマホ持ってトイレ籠るのが一番と考えた。 萎えてるそれを擦りあげると簡単に持ち上がった。馬鹿な自分だと思う。トイレットペーパーを手に取って扱くがあんまり気持ちよくない。オナホもないし疲れすぎた体じゃ頭がうまく働かない。適当なグラビア画像を見ながら何とかヌいた。 零くんは俺のカレシというべきか。よくわからない存在だ。仕事も知らないし、何歳かも知らない。告白されてOKを出した。零くんは俺に秘密があることを嫌がっていたが、悪いことじゃないのだし気にしていなかった。浮気したら別れるとは言ったが。 同棲を始めたのは最近…でもない。社畜という言葉が出てくる前には同棲を始めていた。零くんが一緒に住みませんかと誘ってくれた。有難くその言葉に縋ったのは、俺が零くんに対してもっと大切にしてやりたいなあという気持ちがあったからだ。それまでの俺のアパートはまあ駅からそれなりに近いけど古かったので防音もあんまり……という状態。おいそれといちゃいちゃ遊ぶのは出来なかった。 同棲を始めてから俺は前までのアパートよりもかなりの金が必要になった。そりゃあいい所に零くんはマンションを借りたのである。家賃は桁から違っていた。今まで以上に働かなければいけない、と思った。金が急に増えることはないが、零くんにおんぶに抱っこではいけないと俺は思っているのである。 ベッドには零くんがひっそりと入っていた。俺がマンションに来た時にはもう用意されていたダブルベッドである。ダブルで大丈夫なのか心配だったが、日本製の木製ベッドは男2人をきちんと受け止めてくれた。 「#名前2#くん」 「……すまん、起こしたか」 「#名前2#くん」 手が近寄ってきた。するりと撫でられる。零くん?と覗いた顔は何かを期待したような顔だった。真っ赤で、声が少しだけ低くてかすれてる。 「僕は恋人でしょう?」 その言葉の意味がわからないほど俺はバカじゃない。真っ赤になった。お前の仕事はどうなんだよと言おうかと思ったがやめた。 「……いいのかよ」 「いいから言っています」 ふへ、と笑った零くんは男のはずなのに女神みたいに見えた。俺の目は疲れすぎてやばいのかもしれない。 零くんは俺の手を取り、自分の胸にあてた。筋肉がついて引き締まった胸だ。俺とは大違いだ。あ、少し悲しくなった。だめだ、疲れて涙腺もおかしくなってやがる。 「疲れてる時は胸を触るといいって」 「聞いたのか?」 「ネットからですが」 嘘かどうか確かめてみようか。服の上から胸の形を沿うように撫でると零くんの可愛い声が聞こえた。香水はつけてないらしいから、香ってくるこれは零くんの体臭ということになる。俺は意外とこの臭いが好きだった。 鼻をくっつけてぷすぷす笑う。零くんは「何してるんですか、」とくすぐったそうだ。 「ごめん」 顔を離してまた手でなぞる。しっとりと汗ばんできた肌が気持ちいい。胸の真ん中を掠めるように少し力を込めながら揉んでいたら零くんがしかめつらをした。口がとんがるように動く。 「そこだけでいいんですか」 「うーんと。良くないです」 俺はその時、ちょっと意地悪なことを思い浮かべた。零くんの胸をくしゅくしゅと弄りながら「どこを触ろうか?」と聞いてみた。 「ッ! 意地悪な……」 「ごめん。でも零くんが気持ちいいとこ知りたいから」 いつもはセックスの中でもストイックを貫いてる零くんが珍しく指を咥えた。幼児化したみたいで可愛いなあーと思う反面、抜いたばかりの体はどうにも気分が乗ってこない。零くんを気持ちよくさせることしか出来ない。零くんにもそれが分かったのか下からぎゅっと睨まれた。 「年のせいにして」 「ごめーん」 零くんが起き上がってきた。裸のまま抱きしめ合うとあったかい気持ちになった。くい、と零くんが膝立ちになる。自然と俺の顔は零くんの胸のところにあたった。頭を抱えられて撫で付けられる。 「最近、頑張りすぎです」 「………」 「でも、僕のためと知ってるから何も言いません」 「ごめん……」 「だから、ありがとうと言います」 うわ、きゅんときた。今のセリフはずるいだろ、なんだコイツ。 「零くん、ごめん」 「はい?」 「勃ったわ、」 俺の言葉に零くんはにんまりと笑って「いい子ですね」と言う。エロ本の読みすぎだな、俺もお前も。 「あっ~~、ぁう、ふっぅう、」 「息ちゃんと吐いて……」 バックからやるのは久々だった。負担が少ないのは分かってはいるが、零くんは正常位が好きだと言ってきかないのだ。 ほぐした中は入れたローションと舐めた唾液で痛いくらいに気持ちいい。ほぐしたと言っても奥の方は広げていない。ぐっと中に入れ込むとみちみちとした感覚があった。 「っあ、いた、いたいィ。やら、いら……」 「好きなくせに」 あうと零くんが口を閉じた。端から流れ出た唾液をなめとる。ヒゲを剃ったあとの肌のザラザラがきもちいい。変態っぽいとは思うが好きなんだから仕方ない。零くんの痛みが消えるのを待ってから体を動かし始めた。 尻を捕まえてゆっくりと動かし始める。きつく締まったままなので気を抜くと持ってかれそうだ。 「零くん、キッツ……」 「んっ、らって、ひさびさすぎて…! もう、閉じちゃったの、ぅン」 呂律の回らない口にキスをする。汗で口の中が少し変な味だ。零くんをこのまま食べたい気分に駆られる。性欲ではなくて食欲の方。好きな相手を見ているとそのまま食べたくなる。異状性癖でもなく、ただ美味しそうと思ってしまうのだ。 突く度に背中がしなる。汗ばんだ肌が暑い。べたりとのしかかった俺に零くんが体を落とした。獣みたいな姿になってハァハァ息を切らしている。 「うまそ……」 理性が焼きちぎれそうだった。汗で張り付いた髪の毛を持ち上げて項を晒した。ちょっと色黒で、ハリのある肌。いつもカミソリで髪の端を俺が剃っているからプツプツと毛の残りが見えている。 べろりと舐めると零くんは怖がるように動き出した。 「やめ、やめて…! そこは、」 「おいしそうなんだよ」 体重をかけて動けないようにする。舐めてみると汗の味がした。首の骨をぐりぐりと舌先で舐めながら体を動かした。 ぬろぉりぬろぉり。ゆっくりと抜いて入れるを繰り返す。離すまいとしがみつく体の中は快楽にとても弱い。零くんはもはや泣いていた。年のこともあるし、何回もイケる体じゃない。それは分かっているが、理解と行動は別物だ。 快楽だって条件付けができる。ひと通り舐め終えて1度全部抜いた。零くんはもはや逃げる気も起こしてない。はふはふと息を切らすだけだ。 いただきます。呟いて、首に噛みつきながら俺はまた中に入れた。先走りで濡れたゴムを外して新しいゴムをつけている。零くんの体は待ち構えていたようにざわざわとしていた。 流石に噛んだままは無理がある。体を起こしてイクためのストロークを始めた。零くんのペニスも同じように握ってやる。もうほとんど出し尽くしたとは思うが念の為、だ。 「ひゃ、ああっ……、うぇ、うあ……」 「きもちい。零くん、きもちいよ」 頭に刷り込むように何度も何度も口にした。トロンとした目が段々見えなくなっていく。もう疲れてしまったようだ。 さすがに寝る人の体を使ってセックスは出来ない。体を引き抜いてシャワーを浴びにいった。これが最近のいつも通りのセックスだった。 「まったく」 鏡の中の自分に話しかけているのかと思ったらその声はどうやら俺にかけられているらしい。零くんは鏡越しにギロりと俺を睨んだ。 「あなたという人は! どうしてそう学ばないんですか!!」 「うーん?」 学ばないというよりは零くんの体が持たないだけだろうと思った。が、それを口にするとさらに怒られそうだった。「ごめんごめん」と軽く謝れば「連呼しない!」と叫ばれた。軽く上司へのトラウマを思い出した。 「それじゃあ俺、出かけるから」 「……。サビ残はダメですからね」 「分かってる」 分かってはいるがしない訳にもいかないのだ。扉を開いたら日差しが眩しくてそこから心が折れそうになった。誰だ、気持ちいい朝なんて言葉を生み出したのは。 ちょっとイライラしたまま家を出た。今日も一日頑張ろう。