おそらのくじらを撃ち落とせ

!付き合ってない !主人公も安室さんもくずですごめんね。沖矢さんだけがこの世の救い。 !名字の変換が別の人の名前です。名前は主人公のもの。 「あのね安室さん、これだけは信じてほしいんだけど」 「言い訳ですか聞きましょう」 「わー怒ってんね。あのね、沖矢さんとは何にもないの。UC?」 「NO」 「全否定かよ」 「そうやって時間稼ぎしようとしても無駄だよ、君に助けは来ない」  安室さんは笑いながら怒ってた。この人、怒るか笑うかどっちかに出来ないのかなんて考えながらベッドに横たわる。恋人じゃないのにこんなことをするのはただの利害の一致だ。この人は俺に似た誰かを好きになった。何でも最近はガードの硬かった妹に認められたらしく、少しだけ仲良くなれたのだとか。まさか俺をその妹思いの人に重ねてセックスするなんて、と思うがこれはこの人なりの自虐らしい。俺とセックスしてる自分を傷つけてその好きな人に慰められるものにしようというのか何なのか。とりあえず、俺がバリネコだったのでトップをやっているがボトムをしたいのだと随分前に聞いた。俺としては家族に金が回るならどうでもいい。話が逸れたが今日、大嫌いな背面からのセックスを受け入れているのは沖矢って人と色々あったのだ。  出会いは電車の中で、ある人と間違えられたのだ。「#名前1#くん?」と。安室さんの時もそうだった。だから俺は安室さんの本命と間違える人がここにもいたんだな、と振り返って人違いだと教えてやった。 「そう、でしたか。すみません」 「いえいえ」 間違えられてるのは慣れてます、と言ったらこの人のトラウマを刺激しそうだった。どうやら色々あったらしく、世話焼きの俺はどうかしたんすか?と話を聞いてしまった。 最近、その#名前1#って人に色んな人が集まるらしい。みんな昔からの連れらしく、仲睦まじく付け入るすきがないとかそういったことを話してくれた。困ったもんですねえーと話を聞きながらコンビニでコーヒーを買った。飲みながら話をしていたら、前から大勢の学生さんたち。いいなああんな青春、と呟いたら君は学生さんじゃないんですか?と言われた。 「これでも大学出て働いてます……」 「!?」 めちゃくちゃ驚かれてしまった。すみません、と頭を下げた沖矢さんにいえいえと手を振っていたら先ほどの学生さんたちがちょうど横を通り過ぎた。どん、と倒れてくる沖矢さんの体。慌ててどけられたコーヒー缶。ぶつかる唇。 「っと、すんません……!?」 沖矢さんは顔を真っ赤にさせてすみません、と頭を下げてまたコンビニに入りウェットティッシュを買ってきてくれた。口をふけと言いたいらしい。あざいます、と大人しく口をふくと「君は口調も似てるんですね」と悲しそうに言われた。 俺とその#名前1#って人は顔だけでなく口調も似てるのか。なるほど、道理で安室さんは本命代わりにしても俺のことをセフレでないにしても俺とセックスしたがるわけだ。 沖矢さんの表情の変わり方を見る限り、俺とのキスで#名前1#さんとのキスを考えて、でも別人だとティッシュを買って落ち着いたらしい。大変だな、恋をしてる人って。   「君ばかりも沖矢にとられてたまるか」  いやいや意味わかんないですよ、というセリフを飲み込んだ。触らぬ神に祟りなし。好きにさせればいい。 「お仕置きですね」 「はぁ!?」 「あの男と近付くな、と言っておいたのに」 「……いつの話だよ」 「先月」 「忘れたわ、んなもん! お前、近付くなリスト多いんだよ!!」 「君の存在がバレると面倒なんですよ」 この発言。本当に俺のことは身代わり人形らしいな。まあ、俺もそれで構わない。俺だってこの人が大好きな人と同じ声で、かつ病院にいる兄に寄付をしてくれる人じゃなかったらセックスしようなんて思わない。体の相性なんて二の次だ。 「……何やらせるんすか」 「君の嫌いなバックですかね」 げえ、と喉から声が出た。バックは楽だが嫌な思い出があるのだ。それを分かっててこの人はセックスしようとしてやがる。笑ったまま怒るこの人に俺はイエスしか答えられない。 「ぁむろっ、さん…! ふっあ、っ……。ぁっ、」 時たま聞こえる本音の声を隠すように声を出す。#名前1#くんと呼ぶ声が聞こえる。俺の顔を見ずにセックスするのはさぞかし楽だろう。いくらでも妄想できるのだから。 振り乱れた髪の毛を押さえつけられてガツガツと奥へ突き刺される。こっちの快感などお構い無しに自分だけが良くなるためのセックスだ。 「い、だぃ! いだ、ぅう、むりっ、むりっ……!」 「ッ…! んっむ、」 「ぁあ゛、んぅ、う゛ぅううう!!」 首筋を噛まれながら今度は乳首を強く引っ張られた。ぎりぎりと傷んで射精感が遠のく。さっきまでの獣のようなセックスがの方が何倍もよかったのに。 「あ゛あ゛あっっ、や、おぅっ、ぐぅ、」 「締め付けが、甘いですよ!」 「んう゛ううッ!」 尻を思っきし強く叩かれた。痛い。下っ腹に力を込める。#名前2#と聞こえることのないこの無意味な行為に何の価値もない。いつか#名前1#って人と知り合えたなら俺はきっとこう言うだろう。 「アンタに抱かれることが何よりの復讐だ」