とんとん肩車、赤信号
空を飛びたいってのは誰もが願う話だ。アニメの中ではぴょーんと簡単に飛んでるけど人間は重力から逃れられないから空を飛べないってのは分かってる。 風が下からすごい勢いで飛ばして浮くっていうスポーツもあるが、あれを1度お試しにやらせてもらったらものすごい勢いで頭をぶつけた。ヘルメットをつけていたからまだいいが、それにしたってすごい衝撃だった。ガラスにぶつかるとか交通事故以来だったし。 結局、頭をぶつけたってことで病院に運ばれた。何かあったらヤバいので友人が経営に関わってるらしいでかい病院を指定して。見舞いにきた友人は話を聞いて「なら私に頼めば良かったじゃないか」と言い出した。 友人はヒーローをやっていたので空を飛ぶことも簡単に出来るのだ。 「私のスーツを君に一つあげよう。それなら空が飛べるだろう?」 それはそうなんだが俺がしたいのはそういうことじゃない。純粋に空を飛ぶってどんなことか知りたいのだ。スーツ着たら空も見れないし。 「なんだって? その言い方じゃ私のスーツが欠陥品みたいじゃないか」 そんなことは思ってない。どちらかと言えば褒めてる、はずだ。 「#名前1#、私が下手に出るからって言っていいことと悪いことがあるぞ」 「すまないスターク」 きちんと謝ってから空を飛ぶ方法を一緒に考えてもらった。すると、提案されたのがカミサマに頼るというものだった。 「………カミサマか」 「私たちの神じゃないがな」 「カミサマは空を飛ぶのか」 「飛ぶぞ。かなり遠くまで」 スタークがそんなに言うのならそんなに飛ぶのだろう。うんうんと頷いた俺はスタークにカミサマにあわせてくれと願い出た。 カミサマはカミサマらしく男を連れて飛びたくないということだった。なんかそんな気はしてた。カミサマの彼女(カミサマには人間の彼女がいるらしい。スタークがポッツとどっちが素敵かを俺に語った。)の用事があるので俺に体を貸してくれないそうだ。 「ということで私が君を連れてくからな」 「ありがとう、スターク」 スーツが嫌だと言い張っていた俺のためにスタークが背中を貸してくれた。文字通り、その背中に乗っていいと言うのだ。馬乗りと言うか、まあそんな感じ。 スーツの上は硬いからタオルをひかせてくれ、と言ったらスタークが本気でビームを出してきそうだったので口を閉じた。マスクに赤ペンでばってんを書いてつけたらスタークに変な目で見られてしまった。クール・ジャパンの文化の一種と聞いていたのだが違うのかもしれない、と思った。 「何なんだ、それ」 「ふがふが」 「言えよ」 べいっとスーツをつけた手で顔を殴られそうになって怖くてマトリックスのように上体を逸らしたらなぜか喧嘩に発展していた。変な話だ。 しゅんっ! しゅんっ! ぴょーい! スタークの手を避けてビームをジャンプして飛んでいく。あ、なんか今空飛んでる気がする。 「スターク!!!」 「……なんだ!!」 「俺!」 「ああ!」 「空飛んでね!!?」 スタークからの攻撃が止んで俺は一回転して地面に降り立った。おお、地面に足がついているという感覚だ。スタークを見ると馬鹿にしたような目で俺を見ていた。 「ああ、そうだな…!」 「お前、なんだその笑い方はぁ!!」 腹が立ったので喧嘩の第二段階になった。めちゃくちゃ空を飛んだ。 友人の#名前2#は昔から空が好きだった。なんで人間には翼がないんだよぉ!!と怒るのはいつもだった。その度に私は人間の進化に翼はいらないんだ、と言ってやらなければならなかった。 彼は「空を飛べる」と宣言して崖を飛び降りたことがある。彼の父親は#名前2#を叱らなかったが唆した私と友人をやめるように言った。当時の私は#名前2#が大好きなのに大嫌いだったのだ。#名前2#が私ではなく翼を追いかけているのが好きになれなかった。まさか、ひねくれた私が軽く言った言葉を真にうけて飛び降りるとは思ってなかった。 そんな彼は運動神経がないよな、と形容されるような愚鈍な男だった。彼に関しては私のような頭脳もなければアベンジャーズのようなヒーローにもなれない男だったので彼はただ空を飛ぶために頭を働かせなければならなかった。 彼は怪我をし続けたが1度も怖いと怯えたことがない。そんな彼が羨ましいやら憎らしいやらで私と彼との友情は捻くれ回っていたと思う。でも彼は私のことをずっと友人と言っていたからそうなんだろうな、と思っていた。 友人の私ではなくカミサマのソーに期待したというのにはさすがに腹が立った。私が言ったにしても、だ。#名前2#は私を選ぶだろうという自信が崩れ去った。彼にとって私は手段の一つでしかないという事実が痛いくらいに胸に突き刺さったのだ。 #名前2#はきっとまた空を飛びたいと言うだろう。今度は自分の力で、だ。私はその時になったら彼の中からいなくなるだろう。私という乗り物はいらなくなるのだから。 私は、その時のために彼を飛べないように差し向けるだろう。それがどんなに残酷だとしても。