この手を離してくれるな
ツイッターでフォロワーの皆様とお話していた家具屋さんのサメのぬいぐるみの夢小説です、ナマモノ(物理)です。トチ狂っています。気を付けてください。 このぬいぐるみが流行ってたのは聞いているがまさか手元に置くことになるとは思わなかった。家のソファにでん、と存在感を放つ海の生き物をみながらそんなことを思った。擬人化?みたいなことをするのが流行っていたらしい。いや、今でも写真を撮る人はいるか。 手に取って見てみると可愛い顔をしている。今日からうちに置いておくサメである。 事の発端は母がサメが可愛いとこのぬいぐるみを買ってきた。しかし、家には既にいくつものぬいぐるみと抱き枕がある。IKEAのなんて他にもゾウやらクマやらヘビもいるのである。他にまだ買うのか、と父がキレた。人の趣味に口を出したくないのだが、母は飽きたらいらないから、と捨てるのである。父や俺にとってはそれが当たり前になるのだが、ぬいぐるみともなると捨てるのも忍びない。早くも飽きの姿勢を見せてきた母に勘づいて父は俺にサメを寄越した。なぜサメだったかと言うと、比較的新しいため母への恨みも少ないだろうという父の判断である。 サメは予想以上にデカかった。そしてモフモフしていた。うん、可愛い。可愛がれる気がする。ぬいぐるみに対して愛着が湧くという言葉が合ってるのかは知らないが、とにかく俺はこいつが気に入ったのである。その日の夜はサメをベッド脇に置いて寝た。真正面から見ると目が合わないが横からならこの目とバッチリ合う。可愛い、と撫でてから寝た。母に捨てられたぬいぐるみだが、愛情たっぷりに育ててやらねばという使命感を持っていた。 「あれ、#名前1#さん。ぬいぐるみですか」 「ああ、ちょっとな」 母からのおさがりだ、というのも変な話なので流行りに乗って買ったよということにした。後輩はへー、とサメをチラチラ見ていたがそれ以上は何も言わない。自分も買いたいと思ったりしたのだろうか。 「あんな」 「はい?」 「このサメ、いいぞ。すっごい可愛いしふわふわしてるし、横に置いておくとちゃんと目が合うんだよ。デカいから擬人化させて遊ぶのもなんか分かる。ていうか、サメのギザギザ歯からかっこいいんだよなあ。でかい腹のもふもふ具合もよかったよ、昼寝するの良さそうだった。あと値段安いなあ。子ども用のおもちゃって言うより、独身の寂しい大人のパートナーみたいなもんだった」 「あの、#名前1#さん、#名前1#さん」 「ん??」 「えーっっと、えーっと」 後輩はソファに移動させたサメをチラチラと見ながら俺に向かってなにか言おうとして口をパクパクさせている。 「褒め殺しやばいっすね、#名前1#さん!」 言った本人も訳分からないと思ったらしいが何だか俺には面白かった。 「あっははは、ずるいぞお前、それ。なんだよ、褒め殺しですねって」 「あ、あははは……」 後輩はずっとサメの方を見ていたので「IKEAでもう買えるぞ」と教えると「知ってますう」と泣きそうな声で言われた。きっと買うんだろうな、と思いながら「おうおう、安いし買ってこいよ」とオススメをしておいた。 サメが怖い。正確に言えば先輩のうちでみたサメのぬいぐるみが怖い。昔から変なものが見えることがあったし、怖い思いを体験したりもしたがなにか別のベクトルであのサメは怖かった。先輩が俺の名前を呼ぶ度にギロリと睨まれる。あのふわふわの歯がなぜか俺には凶器に見えた。でも先輩に言ったところであの人のことだから「あはは、冗談だろ~~」とサメを撫でるだけだろう。あの人、危機感がないというか何かそういう所がある。 先輩がサメのぬいぐるみを褒めていた時の嬉しさと言ったらなかった。サメも嬉しいし俺も睨まれなくて済むからウィンウィンである。先輩からサメをオススメされたけど絶対に買うことはないだろうな、と思いながらお暇させてもらった。あんな怖いの買う気にはなれない。