初めての恋をささげた
!多分女主攻めじゃないかな、分からない、ふわふわしてます デビーの恋人を撃退したいという話を聞いてけたけた笑っていた。いいじゃん、そんなやつぶっ飛ばそうよ!! アタシの言葉にルーは「まあ、その程度の男だったのよ」とタバコを吸いながら笑っていた。 「……ルーも、何かあったみたいじゃん」 「えぇ? やめてよ。わたしの話なんか面白くない」 「デビーだけじゃ可哀想だよ」 「私はまっったく可哀想だなんて思わないけど。でも、そうね。私が刑務所にいる間なにかあったんじゃない?」 アタシとデビーとで詰め寄ったらルーは降参、というように両手をあげた。何も持ってないわよ、という仕草は話すことがないという意味と同じだ。 「そこはグーであげなきゃ」 「降参なのに?」 「話す種を今から出すよって合図」 アタシの言葉にデビーはあははっと笑ってルーは「めんどくさいなあ」と言いながらも座り方を変えた。話す気になってくれたようだ。 「#名前2#は、そういう恋人じゃなかったと、思うんだけど」 「#名前2#?」 変な名前、と思ったのが伝わったのか「彼女アジア人だから」とルーが補足した。 「こっち来て、財布取られて呆然としてるアイツみたときに。不思議だけどその目にやられた」 「そんなに素敵な宝石だった?」 「宝石なんてもんじゃないわよ。あのダフネって女とかよりもよっぽど綺麗だった。少なくとも、あの時のわたしにとっては」 「……あぁ。ルー、その人とは?」 「言ったでしょ。恋人じゃない。2、3日会話したけどそれだけ」 「それだけって……」 「話を戻すけど。わたし、別に#名前2#のことを助けたわけじゃないの。その時は本当に見てただけ。ただ流れに流れて#名前2#のサイフをわたし受け取っちゃったのよ。もちろんお金もなくなった空っぽのそれをね」 「うっわ、悲惨。でもそれで会話したんだ?」 「中に入ってたカード見て、電話かけて、会おうってことになったわ。何が起きてもいいようにってわざわざ#名前2#の友達がバイトしてるところにして」 「学生?」 「ええ。社会人になってからの」 「頑張ってんね、その人」 アタシの言葉にルーはふふっと笑った。 「#名前2#、海外で生活したいからってそれだけの理由で大学に入ることにしたらしいけどね」 「まじ? ねえ、さっきの言葉やめにしよ」 「残念、しっかり聞いちゃったわ」 「あぁ……。最悪。そんで? その人に財布返したの?」 「返したよ、ちゃんと。疑われてたけどね」 「それで? ルーはそのファッションで怖がられた?」 「怖がられた。もちろん、盛大に。でも#名前2#ははっきりとわたしの目を見て「ありがとうございます」って言ったの。わたしが日本語覚えててよかったね、って思ったけど当てつけになっちゃうし。お金とかは全部なくなってたよって教えたら財布の中におまもりをいれてたからっていうんだけど」 「おまもり?」 「東洋では板、なんだっけ」 「ううん。#名前2#が持ってたのは袋だった」 ルーは目を閉じてゆっくりとその時会った#名前2#のことを語った。アタシたちはその#名前2#って人を知らないのにその特徴的な目だけは何度も言われるから勝手にイメージができていった。背はそんなに高くなくて、くすんだ茶色の髪の毛をしていて、ピアスなんか開けたことないような耳をしていて、合ってないメイクして着飾って、でもそれを見るのは嫌ではなかった、と。 「好きだったんでしょ、その人のことが」 デビーはルーに対して容赦がない。ルーは「この前のわたしの真似?」と笑った後「好きだったのかもね」と言ってのけた。いや、あの表情とかどう見ても好きだったでしょ。完全に惚れてたでしょ、とそう思ったけどデビーは何も言わなかった。じゃあアタシが言うことでもないかな、って思ったけどデビーはアタシに強い視線を投げかけてくる。えーー、言わなきゃダメなの? めんどくさい、とアイコンタクトを送っていたらルーがスマホをごそごそと取り出した。 「あー、やだやだ。わざと考えないようにしてたのに。あんたらのせいで好きかもって気づいちゃった」 ぽちぽちとタップした音がしたと思ったらルーはスマホの画面をアタシたちに見せてきた。 ――ねえ、今度もう一度会わない? 絶対、洋服には気を付けるから。 うわ、ルーってばティーンかよ。そう思うくらいにワルイ子のルーはいなかった。デビーは声も出せないくらいに笑っていた。いや、でもそんなルーも好きかもしれない。そう思って「応援してるから」とアタシも笑った。