だいじなあのこの悲しい顔

 寂しくて辛くて苦しくて。自分のこの時の気持ちをなんて表現すればいいのか分からなかったがとにかく泣いてしまった。ベッドに入りぐすぐすと鼻を鳴らして鼻水まで出して泣いていた。人生でこんなに幸せな時間はないと思っていた。それがたった少しの会話でこの世の地獄に変わるとは思わなかった。イピカイエー。魔法の言葉は俺を救ってはくれなかった。 「ごめんなさい、貴方のことは……その、そんなふうに見れないの」  俺が肉食動物だから?と聞いたら彼女は笑って答えた。 「いいえ、あなたがアマエだから一緒にいられないって思ったの」  ジュディのその笑顔は俺を突き落とすには十分な言葉だった。むしろ、彼女にとってはいつも通りの地続きの世界にいるのだと思う。俺ばかりが喜んでありもしない階段を昇っていただけなのだ。恥ずかしい。なんて大バカ野郎なんだ俺は。自分の家に戻ってその恥ずかしさとジュディにフラれたという事実で自分の体が溶けて消えるとか隕石落下で世界が変わってくれないかだとかそういうことを思った。何も起きてはくれなかった。  翌朝、チャイムが鳴らされて近所迷惑になる前にと思って外に出たらワイルドがいた。ジュディの相棒で俺の友人である。 「……なんでお前がいるんだ」 「ジュディがお前の代わりに休みを申請してたからさ」 「ああ? それでなんで……」 「#名前2#、バイクでどこか遠くにいかないか」 「バイク?」 「……風にあたって、どこか綺麗な場所でも見たらお前の気持ちも晴れるだろ」  そのために、お前、普段は自分で運転しないバイクを持ってきたのか? それって同僚のユーインのやつじゃないか。 今着替えるから待っててくれ、と言ったらニックはほっとした様な顔で笑った。相棒だからかな。その笑顔はやっぱりジュディに似ているような気がしてまた泣きたくなった。


ニック・ワイルドは悲しんでいた。#名前2#はなぜあんなにも馬鹿なのだろう。一緒に見た映画の告白シーンが好きだと言っていたからチューリップを#名前2#のデスクに置いたのに。 くそ、イライラしてくる。あれは妖精の贈り物じゃない、ニック・ワイルドの渡した花だバカ!