この胸からは歓声がきこえる
トランスフォーマーを作っている間、たまにティチャラが話しかけにきた。キルモンガーとの戦いの傷は大丈夫か、と聞くと苦笑いで「もう治った」と言う。気になってヴィヴラニウム製の長刀をひっぱってくるとティチャラは「おいおい、やめろ」と逃げた。#名前1#はすぐに戻すとタオルで顔をふいて「どこかカフェに行くか?」と誘った。黒いTシャツにぼろぼろのズボンの服の男と王族として気品のある衣装を着ているティチャラは一緒にいっていいのか、と思い家の中に入ることとなった。 「何を飲む?」 「家に何がある?」 「インスタントコーヒーとオイルとビール」 「……コーヒーにしてくれ」 「わかった」 #名前1#が慣れた手つきでコーヒーを入れているのを見て、ティチャラは「お前もそんなことができるんだな」と感慨深いような顔をする。 「うちにいたときはもっと拙い動きをしていた。コイツが本当にヒーローか、と思ってたんだ」 「ティチャラって何気に失礼だよな……」 「……すまない」 「いや。王様っていうのはそれぐらいがちょうどいいよ」 #名前1#はそう言って笑うがティチャラとしてはもう少しその距離を縮めたかった。ありていに言えば仲良くなりたかった。#名前1#はまるで気にした風もなかったが。湯をわかして入れただけのコーヒーがティチャラの前に置かれた。食べるか?と一緒に出されたチョコレートをおそるおそる口にしてみる。うまい。ただ、いつもの上手さというよりはシュリなどが好きそうなジャンクなうまさだった。 向かいの席に座った#名前1#はどぼどぼとミルクを入れて「ごめん、ミルクの方がよかったか?」と後付けのように聞いてきた。どれにせよコーヒーを選んだだろうと思ったティチャラは曖昧に笑うだけだった。 「お前のとこのさ、オコエとかの護衛ってみんな女性なの?」 「ああ。そういう伝統なんだ」 「伝統か……。俺は国についてよくわかってはいないけど、そういうのってすごく大事なんだよな」 「もちろんだ。先祖に、国を作ったことへの感謝と、未来につなげてほしい気持ちがある」 それで、お前のことを守るやつがあんなに多いんだなあと#名前1#は感慨深そうに言う。先ほどとは逆の光景だった。ティチャラは一瞬、#名前1#が何を言いたいのかよく分からなかった。 「だってお前って死ななそうだ」 「? ヒーローだろうといつか死ぬときは来るだろう。不慮の事故というものもあるかもしれない」 #名前1#は脳裏によぎったロボットたちを押しのけてティチャラの目をしっかりと見た。自分のいれたコーヒーのせいで何か起きてるのかと思った。彼は本気の目をしていた。コビンツの話があるからだろうか。いや、彼のことはティチャラのせいじゃない。それは何度も伝えたはずだ。 「……あのさあ、これは俺が言わない方がいいと思うけど、でも世話になったからちゃんと言う。あんまりそういうこと平気な顔して言うなよ……。国民は、お前のために命を尽くしたいって奴もいるだろ」 ティチャラは#名前1#の言葉が分からない、という風に見つめる。コーヒーをすすり「何か間違っていたか?」と言うのだ。間違っているかどうかは#名前1#は決めることができない。正しいかどうかはその人が決めることだ。だが、#名前1#はこれをして親友という男に怒られた。お前を大事にしている私の気持ちを踏みにじるな、と。身をもって教えられた。 「……私も自分の国民を守りたいと思う」 「その気持ちはすごく分かる。俺も自分のトランスフォーマーが大事だったし、仲間たちを失いたくなかった。でも、お前が誰かを守りたいって思うのと同時に、お前の国民だって仲間だってお前を守りたいって思ってるんだ。俺が死んでもいいやって思うのは、周りのそういう気持ちを殺すことになる」 「……それは君が体験した?」 「この前の大ゲンカで嫌って言うほどに」 #名前1#は肩をすくめてチョコレートを口にする。これ、甘ったるくて俺は苦手だけど近所のガキたちは喜ぶんだと#名前1#が笑った。 「……私も君に生きていてほしと思うが」 「奇遇だな、俺もお前にそう思ってたところだ」 ティチャラは目をしばたかせる。ふふっと笑って「まずいコーヒーを飲ませるのは確かに友達か仲間しかいなな」と言った。 「……やっぱ、お前って失礼なやつだ」