やるせなき青
ナターシャとスティーブを乗せて#名前2#はようやく今回の騒動について聞く時間をとれた。 流されたまま行動していたが、話はさっばり見えてこない。というよりもUSBに入っていた情報を知る限り、どうやらインサイト計画にかかわりがあることしかわかっていない。 「? インサイト計画は、頓挫してないのか」 「さっきのデータを見てどう思ったらそうなるのよ。フューリーはインサイト計画に疑問を抱いた。それで、データを私に盗ませたの。それを知ったピアースがフューリーを殺すように差し向けたのよ。殺し屋、ウィンターソルジャーをね」 「ウィンターソルジャー? ……どこかで聞いたことがある」 「#名前1#が言ってるのはベトナム戦争の方だ」 「#名前2#、ウィンターソルジャーは凄腕の殺し屋よ。実力はキャプテンと同程度」 「ああ、オリビアが見たやつか」 「え? 君、知ってるのかい?」 「フューリーに一応つけておいたナノマシンが壊れてしまって仕方なくオリビアに搜索させたらキャプテンが男と戦っているのを見た。片腕が金属になっているやつだろう?」 「ああ、そいつだ」 「ナターシャが撃たれたのってそいつだったか」 「そうよ。追っても無駄なゴーストさん」 「なるほど。それを追いかける俺達はゴーストハンターか」 スコットがステレオからゴーストバスターズの主題歌、『Ghostbusters』を流し始めた。 ナターシャは微笑みながら「やめてよ、笑っちゃうじゃない」と#名前2#の肩を叩く。 あいにくながらスティーブの方はこのネタが分からずに拗ねたような顔をして 「イマドキのものかい?」と聞く。 「キャプテンにとってはイマドキかもしれないな」 「……#名前2#は、これでシールドを追われたとしてスパイに戻るの?」 「……いや。俺はもうスパイにはなれない。大事なものが出来すぎた」 「…裏切らない確信、とか?」 「そうだな、そんなものだ」 「ナターシャも#名前2#も、僕にはいい友人であってほしいと思ってる。それじゃダメなのか?」 「ダメじゃないわ。ムリってことよ。真実はいつだってねじ曲げられるものだもの」 「そうだとしても人はみんな変わるものだ。最後には死ぬことが決まってるがな」 話はそこで終わり、#名前2#たちを乗せた車はとある施設にたどり着いた。草がフェンスにからみついて人が入った痕跡はなさそうだ。 「ここがファイルの出どころ?」 「そのはずだ」 「僕もここから出てきたんだ。ここで昔訓練をした」 スティーブが昔を思い出したのかある1点で立ち止まった。ナターシャはそれに何も言わずに探し続ける。誰しも古いとらわれる過去というものがあるのだ。 #名前2#はスコットに命じて同じ金属反応を見させた。 「武器庫が怪しいぞ、#名前1#」 「わかった」 仕込みの拳銃で1発。錠前を壊して扉の中に入った。階段を下りた先に電気をつけるスイッチがあった。 パチリとつけられ明るくなった壁には昔のシールドの紋が描かれている。 「#名前2#?」 「ナターシャ、キャプテンを連れてきてくれ。どうやら凄いことになりそうだ」 「#名前1#、エレベーターだ」 「ああ」 棚を広げるとやけに古めかしいエレベーターが現れた。それに対して暗証キーの機械は新しい技術だった。 「見つけたのか!」 「スコットがいると楽ね。はやく乗りましょ」 ガコン、とエレベーターが動きさらに地下へともぐる。行き先へのボタンはひとつしかなかった。 扉が開くとたくさんのコンピュータが並ぶ部屋へとやってきた。いつの時代のものか、テープの巻取り式のコンピュータだ。 「ここはファイルの出処にしては古すぎない?」 「いや、合っている」 「スコット、何を根拠に…」 「ただの機械にしては情報がありすぎる」 スコットの言い切ったセリフにナターシャは仕方なくセンターに置かれたカメラ付きコンピュータにUSBをセットした。 ブロン、と動き出し画面に『コンピュータを起動しますか?』という文字が現れる。 「トム・リドルの日記帳みたいだな」 「やめてよ」 『YES』 文字は消え去り、カメラが順々に#名前2#たちを見て回る。 「スティーブ・ロジャース。1918年生まれ ナターリア・アリアノーヴナ・ロマノフ 1984年生まれ #名前2#・#名前1# 1979年生まれ スコット 君は金属生命体だ」 「なにかの録音ね」 「私は録音ではないぞ、お嬢さん。1945年 彼に捕虜にされた時とは違うが私は私だ」 知ってるの?とナターシャが声をかけるとスティーブは苦い顔でうなずいた。 「…ドイツ人科学者 アーニム・ゾラだ。死んだ」 「訂正しよう。私はスイス人だ。そして、私は生きている」 「脳だけ、だ。ヒドラはシールドの中で生きていた。ドクター・ゾラが言いたいことはそうゆうことじゃないか?」 「エージェント:ネストは結論を急いでいけない。だがまあ、そのとおりだ。歴史が逆らえば歴史を変えた。人間は安全のために自由を捨てる。ヒドラにすべてを委ね、新しい世界秩序をつくる」 「スコット、スキャンは終わったか」 「大体は。アルゴリズムはとれた。逃げよう」 「残念ながらそれはできない」 ゾラの言葉通りエレベーターのドアを頑健な盾がおおっていく。 スティーブが自分の盾を投げたがそれも虚しく弾き飛ばされ返ってきた。 「ミサイルがこっちに来るわ。あと30秒後」 「誰からだ?」 「シールド」 #名前2#はUSBを回収しスティーブとナターシャにどこかに隠れろ!と叫んだ。 「君はどうする!?」 「外に出てできるだけ威力を相殺する。スコット」 #名前2#を乗せてスコットはロボットモードで飛び上がった。 「彼らは何を、」 「戦闘機モードだわ。ミサイルがある」 ナターシャの言葉を最後までは聞けなかった。激しい怒号とガレキが流れてきたのだ。スティーブは必死に盾を構え続けた。#名前2#はどうなっているのだろうか。 ** 道を歩くスティーブとナターシャを見つけ、スコットは下り立った。空中でトランスフォームするのは初めてみせたかもしれない。 カマロが道路にくると同時にスティーブが窓から#名前2#の喉ぐらを掴んだ。 「なんて無茶をしたんだ! 一歩間違えば死ぬところだったぞ!」 「別に平気だ」 「平気かどうかは結果だ! そうなる根拠もなしに!」 「キャプテン、やめて」 「#名前2#! 君は、命をなんだと思ってる!」 「わからない」 「わからない!?」 「トランスフォーマーを作ってから命が分からなくなった。勝手に作られた命と俺の命の違いがわからない。オリビアが死んでも悲しまないシールドと俺が死にそうになって怒るキャプテンの違いはなんなのかわからないんだ」 スティーブは#名前2#の言葉を聞いて彼を座席に戻した。スコットはトランスフォーマーだから、という言葉では表せないなにか苦しいものが胸にあった。 自分が#名前2#を大事にしたい友人なのに、どうしてスコットは違うと言えるのか。そんなの、--。 スコットはトランスフォーマー。#名前2#は人間。どうしたって同じ人間を優先したいのはおかしいことだろうか。 スコットは無言で助手席と後部座席のドアを開けた。トランスフォーマーだから、消耗品のように扱われていいなんて。あるはずがないのに。 「すまない、変なことを言った。もう無茶はしない」 #名前2#はそれだけ告げてハンドルをなでるようにさわった。スティーブとナターシャにとってはただの金属であるこの生き物は、#名前2#にとっては大切な家族なのだ。 車に乗ったスティーブは沈んだ声でこれからのことを言った。 「サム・ウィルソンという男がいる。彼なら助けてくれるかもしれない」 「わかった」 ** 「Hey man.」 「すまないがしばらく身を隠させて欲しい」 「みんなに狙われてるの」 「…みんなじゃないだろう。俺がいる」 ナターシャとスティーブはシャワーに行かせて、#名前2#はサムと朝食づくりをすることにした。 「お前さん、テレビで見たことがある。みんなが憧れたトランスフォーマーの製作者だろ?」 「そう言われるのはありがたい。あそこに静かにしてるのがそのトランスフォーマーだ」 「まじで言ってる? だって、あんな人形みたいな……」 「ああ。名前はスコットだ。さっきやりあったときに喉がやられてしゃべられないんだ」 「……あんた、名前は?」 「#名前2#・#名前1#だ」 「おれはサム・ウィルソン。トランスフォーマー、よくなるといいな」 「残念ながらそれは無理だろうな」 「え?」 「スクランブルエッグとベーコンが完成した。あとはトーストでも焼いてくれ。俺はこのままここを出る」 「いや、ちょっと待てよ! キャプテン・アメリカがまだーー」 「スコットがやられた時に発信機がつけられたみたいだ。このままじゃ危ない。前に妨害したことがあるからまだ時間の猶予はある。スティーブとナターシャを助けてやってくれると嬉しい。ああ、そうだサム。2人はよろしくと伝えてくれ。それじゃあ、さよならだ」 #名前2#はサムの止める声を無視して早口でまくしたてるとスコットを連れ出した。カマロではなくプリウスにトランスフォーミウムし、軽快に滑り出す。 彼は1度も振り返らなかった。