存在のかけらをひた走る
戦いはトニーとペッパーが始末をつけた、と後からスコットに聞いた。#名前2#はそれでいいだろう、とうなずく。自分で蒔いた種なのだから自分で始末をつけるべきだ、と。 スコットはその後トニーはスーツをすべて壊して、ただの人間に戻ったと言う。エクストリミスで超人となってしまったペッパーも治療され、トニー自身もリアクターを外すことを決めたそうだ。 「これはトニーとペッパーからだ」と言われて見るとあの趣味の悪いウサギのぬいぐるみ(30分の1スケール)を渡された。 #名前2#は黙って「オリビアに渡せ」と言う。スコットは笑いながら「お前には似合わない代物だな」と言うのだった。 また、事件もきちんと処理された。マンダリンを騙っていた役者の男や、黒幕のキリアンが報道され世の中はにぎわった。何より驚かされたのが副大統領がそのキリアンと手を組んで暗殺計画を行おうとしていたことだ。 シールドもまさかこんなことになるとは思わず#名前2#の処分は国を救ったということで少しだけ軽くなった。本来ならばトランスフォーマーの製造禁止や過酷な任務でもかけようとしていたが情状酌量の余地あり、と委員会が判断し#名前2#は半年の内勤任務が命じられた。 無言で#名前2#、スコット、オリビアの3名が頭をさげて自分のラップトップの前に座る。スコットとオリビアはテロリストの壊滅に向かい、#名前2#がそれをサポートする形となったのだ。 それがとても目立つことになった。回線に入り込んでジャーヴィスやトニーが用件を伝えてくるし、ナターシャやクリントもその姿を笑いにやってくる。一番面白かったのはキャプテンの反応で、「君はもうヒーローをやめたのか!?」とがくがく肩を揺らされたことだろうか。 その光景にはフューリーもマリアも笑わずにはいられなかった。昔の#名前2#を知っている分、こんな風に構われる彼を見るのは珍しく面白おかしい。 #名前2#自身はとても嫌がっていたがスコットもオリビアも助けるようなマネは見せない。 アイアンマンことトニー・スタークはどうやら一皮むけたようだが#名前2#はただの迷惑な事件となった。 ** 君を愛してるのかと聞かれたら愛してると答えられる。だけど、それは大事なパートナーであって結婚相手とかいう人生を共にするような…そんなものじゃないとは思う。 トニーはベッドの上でペッパーにそんな事を言った。セックスしようが一緒に住もうが心は変えられない。 「分かるわよ、それくらい」とペッパーは笑った。目の前の男とずっといたのだ。イカれ具合もちゃんと分かっている。 「貴方は愛が欲しいのよね。お父さんとの思い出が少なくて色んなことを求めてる。スーツを作ればいい父親にでもなれると思ったの?」 「……僕は、家族を持つことが怖いんだ」 「そうね。……でも、#名前2#たちは違ったわね」 息子でも娘でもない、家族としてか相棒としてか気持ちを相互に預けて。実際、その姿を見ると羨ましくなってしまった。 「私じゃ、なれないわね。そんな、相棒には」 「ペッパー、」 「分かってる」 「君は本当に最高の女性だ。誇っていい」 「ええ、ありがとう」 「そんな女性と結婚してもらえる僕は幸せなんだ。……でも僕は友人として#名前2#たちのそばにいたい。おかしいかな?」 「ううん、おかしくないわ。全然。おかしくなんてないわよ」 ペッパーは泣き、トニーも涙を流していた。 天才、金持ち、女たらし。 そんなの持っていても本当の愛を見つけるのがこんなにも遅くなってしまった。 「大事だと思ったよ、#名前2#が」 彼がペッパーの代わりに落ちたとき、胸が潰れるかと思ったんだ。愛は見えないくせにとで重いものなんだな。 「そう。……そうね。私も、彼のことが大事よトニー」 彼が生きていたと聞いた時本当に泣いてしまいそうだったわ。命の恩人とか、そういうのを飛び越えてるの。彼が助けてくれた時言ったんだもの。『トニーと仲良くな』って。私は、彼の信頼を受け取ってしまったんだわ。それのお返しには信頼じゃなくて、愛を送りましょう。 今度は2人で会いに行こう。それか呼び出してもいい。どうせAIが欲しくなったら来るんだろうし。 そうね。友人として、笑顔で会いに行きましょう。 ** 「ーー…というわけなんだよ。ああ、よかった。これだけ話すと心も軽くなったよ。リアクターとったからじゃないよな、この気持ち」 「……。そうかい、…あー、それは、よかったね」 バナーは急に来た友人の話を聞いてとても眠たくなっていた。自分はセラピストになったつもりもないのだが。なんとか眠らなかったのは、友人が連れてきたあの鳥型トランスフォーマーが膝の上で合いの手を入れていたからだ。その声でなんとか眠らないようにしていた。 トランスフォーマー、オリビアはトニーの話をすべて聞いて笑いながら言ってしまった。 「トニー、あなた話長いわね!!」 「…なんだって?」 「長い、って言ったのよ!! #名前1#が嫌がるのも仕方ないわね!!」 「ふんっ、僕の話を聞きたいというから来たんだぞ!」 「そうだけどー」 なんで自分が話を聞いてるんだろう、とバナーは思わなくもなかったがオリビアのような小さな少女はえてして可愛いものだ。食事しないし、場を読んで騒がしくもしないオリビアはとっても可愛い。短気さを押えてくれる。 「いいでしょ、あたしバナー博士に会いに来るの大変なんだもの。まだ空を飛べるような機能はないんだもの」 「だからスーツを作れと言ってるだろう!」 「いやだ!! かわいくない!! どうしてあのぬいぐるみみたいに作れないの!!」 いつの間にかトニーの昔話からオリビアとトニーの喧嘩になっていた。バナーはそっと部屋から抜け出してラボの方に行くことにした。あの2人の喧嘩はスタークがロジャースとする喧嘩よりも長い、ということをバナーは知っていたのだ。 そっと扉が閉じられた。