効かないアスピリン
「それで、どこに? マンダリンの本拠地か?」 「いや。キリアンを探す。エクストリミスで爆発事故が起きた。そして事故はマンダリンのテロとほぼ同じ。偶然だと思えないだろう。オリビアに渡したデータには隠しファイルが入ってる。衛星映像からキリアンを探し出せと書いたファイルだ。ロキを探すときよりも楽な仕事だろう」 「なるほど」 思いのほか#名前2#が冷静に動いていることに安心してスコットはタイヤを走らせた。コンチネンタルとなってから久しぶりのバトルの任務だ。自分自身もテンションがあがっている。 「スコットさまですか?」 「ジャーヴィスか。どうしたんだ」 「#名前2#さまも。ようやく回線がつながって助かりました。Ms.ポッツがさらわれました。座標を送ります。海の上のタンカーです」 「oui」 ナビゲートシステムに座標を確認させてスコットはパトカーにトランスフォームした。サイレンがうなり車を追い抜いていく。 長官であるフューリーからは怒られるだろうが今は仲間の危機である。何もかも気にせず走り続けた。 ** 「おい、どうするんだスターク!」 「援軍が来る」 「援軍?」 「そら、来たぞ。お前が見たがっていた実写トンラスフォーマーだ」 ガタン、と大きな音を立てて#名前2#とビークルモードのスコットが飛び移ってきた。 「金属生命体の依頼料は高いぞ」 「もちろんだ。言い値で払おうじゃないか」 「トランスフォーマー、……」 ローズが車に触ろうとするのと同時に#名前2#が車から降りてスコットはロボットモードに変わった。 「でかっ!?」 「ああ、俺もこうやって下から見るのは初めてだ。……でかすきじゃないか?」 「そうかもな」 立ち上がったスコットの周りを今までスタークによってつくられたスーツの数々が飛び回る。自動操縦になっているらしくそれぞれがジャーヴィスの言うとおりに動いていた。 スコットの元にもジャーヴィスの指令が届いているのだが、#名前2#の言うことしかきけない設定になっているのですべて無視されていた。 「おっと、お前のスーツの登場を台無しにしたかな」とスコットがおどけたように笑った。 「ふん。図体だけがデカい機械め」 スタークは憎まれ口をたたきながらも#名前2#とスコットの応援に嬉しそうな笑みを浮かべた。 ヒーローとして#名前2#ことネストは目立った活躍はしていない。元スパイとして地味な仕事を引き受けていたし、トランスフォーマーを作ったエンジニアとしてしか世間は見ていなかったろう。 ローズもそう思っていた。スタークがそんな褒めていても、と思っていた。だがーー。目の前の男を見ているとそうも考えていられない。 柄の長い槍のようなー彼はナギナタと言っていたーものを使ってどんどん切り捨てていく。文字通り、切り捨てる。 昔の日本には「切り捨てごめん」という言葉があったらしいが本当にそんな感じだ。首がとんでいったり胴体が裁かれたり。骨がきれいに継ぎ目で斬られているのだ。……おそろしい。 「ローズさま? いかがなされましたか?」 背中合わせに着地した何体めかのアイアンマンスーツが話しかけてきた。どれがスタークかなんてわかりゃしない。これは執事のジャーヴィスのようだ。 「いや、なんでもないさ」 余計な考えは振り払ってこぶしを構える。軍人仕込みのパンチは重い一発だ。うまい具合に決まるとちゃんと倒れてくれる。勿論殺すことなしに、だ。 「大統領!」 「う、うぅ……」 アイアンパトリオットを着せられた大統領を助けてコンテナの上に降りようとしたら敵がもう集まってきていた。自分はまだスーツを着ていない。こうなったら大統領だけでも、と思った瞬間に体が浮き上がった。 「平気か?」 「ネスト!」 腰ベルトにつけたワイヤーアンカーで救出してくれたらしかった。片手で俺の腕をつかみ、片手にはなんかスプリング?つきの銃で威嚇のように打ち鳴らす。 別のコンテナに降りて、ネストが大統領に頭をさげた。 「俺はシールドの職員でエージェント:ネストと言います」 「ああ、聞いていたよ。……君が、トンスフォーマーを作ったとね。そうか、あれがーー…」 大統領の視線の先にはその剛腕を振るって敵を海に突き落とすトランスフォーマーが見えた。主人よりも殺さないだけマシだな、と思う自分がいてもはや洗脳状態だ。 「ありがとう。礼を、しなければいけないな」 「それはどうぞ中佐の昇進でお願いします」 ネストの爆弾発言に俺はマジでぎょっとした。大統領もビックリした顔で笑い始めたし。 「それじゃあ」 そういってネストはコンテナから飛び降りた。思わず下を見たらトランスフォーマーのケーブルに乗っていたらしくサーカス団員のように空に飛びあがり拳銃を構えて見せた。 あいつはただのエンジニアじゃなくて、本物のヒーローだった。 ** ペッパーが燃え盛る炎の中に落ちそうだ、と視認したときに#名前2#は迷いなくスコットに飛び乗った。 スコットも心得たように腕を振りかぶって投げる。巨大なタンカーの上空を飛び、叫んでいた。 「ペッパー、捕まれ!!」 落ちていく彼女の手をつかみ引っ張りあげる。 ペッパーの細い腕にケーブルの先をからませて「GO!!!」と言うとスコットが急スピードでペッパーの体を引き上げた。 「#名前2#!」 ペッパーとトニーの声が重なり落ちていく。炎の中に生身の体で#名前2#が沈んでいった。 「……」 スコットは黙ってペッパーの体を静かにトニーのもとに連れていった。 「スコット」 「……人間はみんな死ぬもんだ」 スコットはそう言ってバトルマスクを被った。 ガシャンと音をたててトニーとペッパーを狙うかのようにハンドガンが構えられる。 「ま、まて!」 「待たない」 3発。撃たれた弾はトニーたちではなく後ろにいたキリアンが狙われていた。 「く、そ……」 「安らかに死んでくれ」 ああ、と安堵の息をつくトニーにスコットが「ポッツのエクストリミスはいいのか?」と尋ねた。 「あ、ああ、そうだったな。おいジャーヴィス、12時の方向にいるのは敵じゃない!」 「了解しました、トニーさま」 「……ねえ、スコット?」 「なんだ」 「#名前2#は、……本当に死んだの?」 「さあ。トランスフォーミウムが足りなかったら死ぬだろうな」 まあ、生きてるだろうさ。悪運の強い男だからな。 スコットの言う通り、#名前2#はきちんと生きて帰ることになった。シールドの方から海の搜索命令が出てナターシャ、クリント、オリビアの3名が動き出したのだ。とある船員に助け出された#名前2#は顔に大きなヤケドの後を作り「トランスフォーミウムも改良の余地があるな」と笑っていた。