硝煙とガラス・狙撃手の心臓
「#名前1#、軍隊がもう来てる」 「気づくのが遅かったとしか言えないな」 スタークタワーの上には大きな通路がぽっかりとその存在を主張していた。中からぞろぞろと兵士たちが空を飛ぶ何かに乗って出てくる。 #名前2#は空を飛ぶ軍隊を引き付けたアイアンマンに軽く礼をのべてその首を撃ち落としていった。スコットは無言でライフルを構え確実に落としていくのだ。 「おいおい、ネストのくせにやけに派手な登場だな。その乗ってるのはなんなんだ」 「小型宇宙船だ」 トランスフォーマーの映画で見たやつだがお前は知らないだろう。バカにしたような口調で#名前2#は笑った。操縦を足でしながら#名前2#のマシンガンが音を吹き鳴らす。大勢を崩していくが如何せん数が多すぎて仲間を盾に逃げるやつも出てくる。命からがら逃げ延びたやつらは後ろから追いかけてきたジェット機が撃ち落とした。 「ちょっとネスト、撃ち逃しが多すぎるんじゃない?」 「ウィドウとホークアイのお手並み拝見したいそうだ」 「全く。お前は相変わらずの雑な仕事ぶりだ」 ようやく到着したジェット機からも銃弾が発射された。バタバタと崩れ落ちるその残骸にも住民は恐怖の悲鳴をあげ逃げ惑う。いつかの世界大戦のような悪夢が始まろうとしている。 「バナー博士はどこだ?」 「バナー博士?」 「来たら言ってくれ」 スタークはそう告げて巨大な魚のようなモンスターを引きつけるように飛び出した。 モンスターは追いかけながらも空を悠々と泳いでいく。その本体に攻撃する力があるわけではないのだ。モンスターの背中に隠れていた兵士たちはワイヤーアンカーをビルに撒き散らして颯爽と現れた。 「ジェット機は?」 「もう墜落してる」 「下はお前達だけで平気か?」 「そうね。スコットが私たちのところにいてくれると嬉しいんだけど」 ロマノフの物言いに#名前2#は笑って返答した。 「残念ながらうちは閉店だ」 「#名前2#。バナーの姿が見えた」 「スコット、本当か?」 「ああ」 スコットと操縦を代わり#名前2#は宇宙船から飛び降りた。スパイたちのような身体能力を持っていない#名前2#には高すぎた。どべしゃっと落ちた音がしたが気にせず駆け寄った。 「キャプテン、」 「ああ聞いていた」 キャプテンはこけた様子の#名前2#を見ても何も言わなかった。恥ずかしいと思いながらも#名前2#も黙っていた。後ろを見ると古びたバイクに乗ってバナー博士がやってきた。被害を見つめ、眉をひそめてそして申し訳なさそうな顔をしていた。 「ひどいもんだ」 「もっとひどいヤツもいたわ」 「……すまない」 「いえ、待ってたの。そーゆー、ひどいのをね」 「来たぞ、スターク」 「バナーに言ってくれ。スーツを着ろってな。愉快な仲間をつれていく」 アイアンマンのスラスターの音が聞こえて、後ろからビルを破壊しながらモンスターが現れた。ひきつけているのか追われているのか、事情を知らない人から見たらおかしな光景だった。 「どこが仲間なんだ」 #名前2#の言葉に笑ってバナー博士はハルクに変身した。緑色の肌の自制の効かない大男。それこそがバナー博士のもう一人であり、#名前2#たちの大切な仲間だ。 「スコット」 「ああ。了解だ」 地面スレスレに飛び込んできたモンスターにハルクとスコットが応戦する。頭を押さえつけられ急ブレーキのかかったモンスターはガチガチと関節が固まっていき中身の柔らかい部分が出てきた。 「そのまま」 アイアンマンの声に応じて頭を守る。散弾銃が撃たれ、モンスターの体が飛び散った。しかし上空からはまだ敵が出てくる。どう考えてもロキの呼んだ援軍だった。 「どうするキャプテン」 「扉を閉じるまで敵を抑えるんだ。バートン、屋上へ行って上から敵を見張れ。スターク、君は外側だ。3ブロック先から外に出たやつは押し戻すか灰にしろ。 #名前2#とスコットはまだ空を飛んでいるヤツらを。スタークの援護だ。 ソー、お前は援軍の妨害だ。出てくる奴らを雷で殺せ。 ナターシャは僕とここで戦闘を続けろ。 ハルク、暴れろ」 キャプテンの言葉を聞いた各々が駆け出した。「スコット、少しの間頼む」 「ああ!? ばっか、もっと早くに言えっての!!」 #名前2#をスコットが放り投げて敵側の乗り物に飛び移る。運転手を殺し、持っていた薙刀を振り回しながらビルに張り付いた兵士たちの首や胴体を切り離す。#名前2#の顔は残忍な兵士に成り果てていた。 「おいスターク! ケツを大勢が追ってるぞ」 「#名前2#はどこだ? 早く殺してくれ」 「少し待て。今、面白いものを考えた」 バートンの横をスコットのいる宇宙船に戻った#名前2#が過ぎ去っていく。ガシャン、と何かが肩に構えられていた。 「おい、待て。お前、まさか…」 「ロケットランチャーだ。敵の銃をもとに作った。試させろ」 どう見てもロケットランチャー以上のそれにバートンも怯えるレベルだった。 「いくぞ」 発射されたそれに音はなかった。ただバタバタと道に崩れ落ちていく兵士たち。彼らとて何が起きたかわからなかった。気づいたら体が八つ裂きにされていたのだ。 「おい、それランチャーじゃないだろ」 「ああ、思っていたのより違ったな」 #名前2#はさらっと言うがその顔は不満げだ。開発者としてはもっと別の物を期待していたらしい。後始末を頼むぞと言い残して魚のモンスターの方へ向かった。ロケットランチャーは宇宙船にもう1弾残っているのがバートンには見えた。あれをどこに撃つつもりなのか恐怖を感じる。 ビルの合間をうろついて時折その尾やヒレをぶつける魚のようなモンスター。それの弱点は#名前2#には分からない。外部の装甲は硬く、破るにはかなりの力がいる。アイアンマンの火力でも破れず先ほどはハルクの力を借りたくらいなのだ。 「となると、スコット。やっぱりアレか」 「だな」 「アイアンマン、俺達の方にひきつけてくれ。後はこっちでなんとかする」 「方法はあるのか?」 「死ぬかもしれん」 あっさりとした宣告にアベンジャーズの面々は往々と止まった。コールソンが死んだというのにこの男はさらに自分の命までも賭けるのか。 仲間たちの止めろという声も聞かずにスコットはモンスターの尾にワイヤーを絡めとる。 「これには内部からの破壊しかないだろう」 #名前2#はそう呟いてワイヤーにぶらさがった。モンスターに引っ張られ尾びれに体がぶつかる。風がゆらぎ顔を伏せたくなるがそんな悠長なことはしていられない。必死にしがみついて、ビルに体当たりしたのを機に蹴りあがった。 手首につけたワイヤーを痛がるモンスターの頭に取り付ける。と、そこでモンスターが体を大きくよじりながら旋回した。遠心力で#名前2#の体はビルにぶつかりひきずられまた宙に落とされる。 ゲホゲホと咳を吐きながら必死にリールの回収ボタンを押した。これを使うともうワイヤーを使えなくなる捨身のものだ。ググッと体が押し戻される反動にのってモンスターの口の中に入り込んだ。 そしてピンを抜いた手榴弾をばら撒きながら走り抜ける。ワイヤーはもうない。あとは#名前2#の体力次第だった。 後ろの方で爆発が始まり、#名前2#の背中が焼けるように熱くなる。それでも足は止めなかった。先ほどの尾びれに巻きついたワイヤーが亀裂を生んでいるはずだ。そこから脱出できれば、と走っていた。ガン、と足を取られる。触手のような何かが#名前2#の足に絡み付いていた。 「クソッ」 悪態をつく間にも時間は流れる。ピッと機械音がやけに耳に響いた。モンスターの体が四散した。#名前2#の体は爆風と共に外に押し出される。 「#名前2#ッ!」 スコットの操縦する宇宙船がなんとか火傷した#名前2#をキャッチした。 「生きられた」 「悪運が強いんだな」 たった一言の返事に#名前2#は笑った。俺、頑張ってるよなあとつぶやく。トランスフォーミウムが顔を覆い、バトルヘルメットのようになっていた。自分で動かしたかはわからないが、お陰で助かったことは事実だった。ただし体はもうボロボロで、平衡感覚も耳もイカれていた。#名前2#がこれ以上の無茶をしないようにスコットはスピードを速めた。飛びかかってくる敵には宇宙船に取り付けてあったマシンガンで撃ち落した。 宇宙船は飛び散ったモンスターの合間を抜けて空を飛ぶ軍隊たちを狙う。 「これ、苦手なんだが」 「そう言うな、スコット」 もう気力が薄くなってきた。先ほどの戦闘であまりにも疲労したのか視界が霞み、首が折れそうだ。 「みんな聞こえてる!? 通路を、ふさぐわ」 ロマノフの声が聞こえた。#名前2#もようやく終いか、と少しホッとしたところでスタークのストップがかかった。 「こっちにミサイルがくる。そこは丁度いい捨て場所だ」 「だがスターク。お前、帰ってこられるのか」 #名前2#の思いついたような問いかけにスタークは答えない。答えられなかった。戻ってこられる確証などない。だが、それは先ほどの#名前2#とておなじことだ。 「#名前2#。お前も同じだろう」 「いいや、違う」 インカムからでない肉声が横から聞こえた。ミサイルを持ったアイアンマンに並列するように宇宙船に乗った#名前2#とスコットがいた。 「スコット、お前はヘリに変わってマシンガンを撃て。スターク、それをよこせ。行くのは俺だけでいい」 「何言ってる、お前は!」 「スターク。コールソンにはチェリストがいたように、お前にはポッツがいる」 ぐ、とスタークは歯をかみしめた。脳裏にポッツの笑顔が浮かんだ。まるで死にかけの兵士だ。その一瞬の隙をついて#名前2#がミサイルを宇宙船にひっかけ、速度をあげる。生身のまま高度をあげたので耳からは血が溢れ息をするのも辛い。 「#名前2#!」 「俺はそんなに弱い人間じゃあない」 通路の入口で宇宙船に急ブレーキがかかり回転するままひっかけていたそれを外した。遠心力と今にも消える扉の向こうに吸い込まれるようにミサイルを投げ入れた。 「もう一つ、手土産だ!」 先ほど作り上げたロケットランチャーをミサイルへと照準を合わせた。 「閉じるわ!」 ロマノフが通路を閉じる。#名前2#はその言葉を聞いて安心してしまった。操縦用のレバーから手が滑り落ちる。体が落ちそうになった瞬間に、ヘリにトランスフォームしたスコットが扉をあけて#名前2#を受け止めた。 「スコット」 「よくやったな、相棒」 ヘリはゆっくりと仲間達のもとに下り立った。 「これで、勝ったんだよな?」 「ああ、もちろんだ」 #名前2#はゆっくりと微笑んでへたりこんだ。