言わないでいてほしいことばかり

「アベンジャーズの基地……ヘリキャリアなんて聞いてないんですが」と仰々しく#名前2#は怒ったそぶりを見せた。彼はヘリキャリアにいい思い出がない。どうも相性が悪いらしく不運なことが起きるのだ。海に落ちたり、エンジントラブルに巻き込まれたり。故障の原因になったことなど数え切れないくらいある。 「#名前1#」 「分かってる」  たしなめる声が上からやってきた。コールソンにあんな風に言われれば仕方ない。スコットに抱えてもらい#名前2#はジャンプでヘリキャリアに着陸した。駄々をこねて乗りたがらなかった#名前2#が最後らしく、周りはせかせかと中に入れようとする。高いところが苦手な#名前2#はそれに従おうとするのだが、スコットは面白がって道をふさごうとする。お見合い状態をしばし楽しんで#名前2#はスコットのまたぐらを通り抜けた。 「ずるいぞ、#名前1#」 「大きい自分を恨め」  軽口を叩きながら中に入ると入口付近でバナー博士が手持ち無沙汰に立っていた。白衣を着ながら少しだけおどおどしている。まるで手違いで来させられたと言っているかのようだった。 「HELLO」 「あ、ああ。……えっと、君は、」 「#名前2#・#名前1#。エージェントネストだ。よろしく頼む」 「君がネストか! 金属生命体を作ったんだって?」 「ああ」  握手したままバナー博士は嬉しそうにしゃべり出した。もう1人の自分が騒いだ時にネストとトランスフォーマーが助けてくれたと聞いていたらしい。ちなみにこれは半分嘘で半分本当だ。#名前2#は最初ハルクを殺しにかかっていた。だがスコットの方が殺されそうだと判断してハルクのことを止める方向にシフト変更したのだ。本当ならば彼に微笑まれるような存在ではないが、#名前2#は黙っていた。わざわざ言うことでもない。 「トランスフォーマーはいまどこに?」  #名前2#はへたくそな苦笑いを浮かべて外を指さした。スコットは外で武器の点検中だ。 「なるほど。名前とかあるのかい?」 「ああ。相棒はスコットだ。他にも試作品はあるんだが」 「試作品もあるのかい? わぁ、すごいな! 見せてもらっても?」 「もちろんだ」  トランスフォーマーについての会話が今までにないほど弾んだ。トランスフォームすることの大変さや、自我としてのAIの組み込み方などバナー博士にとっては興味深いことばかりだった。  すると「現在、ホークアイを探してカメラを使って捜索中」と職員の声が聞こえた。衛星を使われたものから膨大な情報をとろうとしているらしい。#名前2#とバナー博士は顔を見合わせて職員に近づいた。 「範囲を狭めよう。スペクトルメーターでガンマ線を計算して、集中地点を見つけるんだ。どこで作業したらいい?」 「エージェントロマノフ、バナー博士をラボに連れていけ」  ロマノフに腕をとられたバナー博士に#名前2#は声をかける。 「ではまた後で」 「ああ、頼むよ。トランスフォーマーには興味があるんだ」  サヨナラをした#名前2#にフューリーがにやけた笑みで話しかけた。 「スターク社だけでなくビッグガイまでも手懐けたのか?」 「フューリー長官こそ」 「そうか? 俺には手懐けたというよりも手綱をとった感触しかないぞ」  確かに#名前2#たちはフューリー長官のもとで暴れまくっている。馬と言われても仕方ない。 「それもそうですね」と話題から逃げることにした。ふと向けた視線の先に写真で見た男が歩いてくる。いや、写真というよりは美術館で紹介されていた彼のことをという意味だが。 「なあ、外で車が暴れてるんだが……。あれって新しい生物兵器かなにかなのか?」 「それは俺の相棒です、キャプテン」 「君の?」 「エージェント。#名前2#・#名前1#。呼び方はネストでも#名前2#でもどちらでも」 「あの車は一体なんなんだ?」 「金属生命体、トランスフォーマーってやつですよ。フューリー長官、俺ちょっと出てきます」  追求を避けるように外に出るとスコットは人型のままのんびりと空を見ていた。暴れていたようには見えないのでトランスフォームでもしていたのかもしれない。隣に座ると、しゅるりとケーブルが伸びて#名前2#の体を固定してくれる。 「ありがとう」 「お前に飛ばれるのは目覚めが悪い」 「なるほど」 「そっちはどうなんだ」 「なにが」 「大変そうじゃないか。個性の殴り合いで」  思わず笑ってしまいそうなのを押えてスコットをなぐりつけた。装甲からして#名前2#の方が痛いのだがまったく気にした様子はない。 「おかしな男だな、お前は」 「ああ…。そうかもな」  #名前2#はぐっと伸びをした。そして微笑んでまた中に入っていく。スコットもアベンジャーズ計画で呼ばれた面子が危ないとわかっているならそれでいい。  中に入るとあわただしく人々が動いている。近くにいた職員に話しかけるとピピッと画像がピックアップされた。 「どうかしたのか」 「ネスト。ロキがドイツに現れたんです。今、ウィドウとキャプテン・アメリカが向かいました」 「また呪われるんじゃないか」 「アイアンマンも呼んだようですし、大丈夫でしょう」 「なるほど」  それじゃあ自分には関係ない、というそぶりで#名前2#はあてがわれた部屋の方に行ってしまう。仲間を信頼しているようにも、見放している様にも見える背中だった。