少年という単語に囚われている
「#名前1#、任務が来ているぞ」 「oui」 手渡された書類には極小マフィアの殲滅と書かれていた。#名前2#は簡単な仕事だ、と思いながら相棒のスコットの頭をなでる。無言のままでも気持ちは伝わるのかスコットはくすぐったそうにその体をよじらせた。 「行くか」 結果。殲滅だけでなく、周辺地域一帯の家を壊してしまい#名前2#は怒られた。謹慎処分で済んだのは誰のおかげなのか#名前2#は知らなかった。 ある夜。謹慎中だというのに#名前2#はフューリーに呼ばれた。スコットもヒューマンモードにトランスフォームして#名前2#の後を静かについてくる。スパイの相棒のような雰囲気に周りはざわめくが#名前2#は振り向きもしなかった。 同僚の噂好きがにまにまと笑顔を浮かべてやってきた。 「#名前2#が呼ばれたの? 珍しいわね」 「ああ、……。そうだな。実力はないのに呼ばれるんだ。盾みたいな役割だよ」 「そんな事ないわよ」 「そうだな、君じゃ盾にもならない」 フューリーは#名前2#を嫌っていると思われている。エージェントにしてはパワーがないし、本当にスパイだったのか?と聞かれることもある。 つまりは周りからは使いにくいやつと思われている。 そのたびに#名前2#は無表情のまま「スパイが全員イーサン・ハントとでも思っているのか?」と聞き返す。相手が何かしない限りはおとなしい男だが、言葉は攻撃的なやつだった。 同僚は絶句したあと罵って去っていく。後ろでスコットが笑った。 「何がおかしいんだ」 「いや別に?」 「何でもないわけじゃないんだろう」 「面白いんだよ、#名前1#は」 面白いとは。#名前2#にとっては嬉しくない言葉だった。 フューリーのいる元へ行くと「遅かったな」と最初に言われた。すみませんと#名前2#は謝りながらもその顔は全く不本意だという顔をしていた。 「四次元キューブが暴走しているらしい」 「……」 「そこでお前に要請が入った」 「待ってください、俺はまだ謹慎中です」 「お前は謹慎中でもスコットは、違うだろう?」 フューリーの言い分も正論ではある。ただし、スコットに命令できるのは#名前2#だけだという点に目をつぶれば、だ。 #名前2#はため息をついて屋上へ向かった。着いてきたスコットが心得ている様に戦闘機にトランスフォームする。 「俺は先に行きますんで、後からゆっくりとどうぞ」 嫌味たっぷりに言って#名前2#は飛び出した。 件の実験場よりも少し離れたところで降り立ち、スコットがビークルモードに変わった。ブロロとエンジンを鳴らしてきた#名前2#のもとにコールソンが駆けつける。 「#名前1#! 久しぶりだな。これがスコットか……。噂にたがわず大きいな。もう少し小さくならないのか?」 「コールソン、噛み付かれても知らないぞ」 ボタンを押す音が鳴ったと思ったらプリウスはガコガコとKV-2に変わる。 「素晴らしい」 「……世辞はいらない」 コールソンはめったに人のことを褒めたりしない。しかし#名前2#とてそうやって褒められることに慣れていない。耳を真っ赤に染め上げて#名前2#は歩き出してしまった。 「避難は俺とスコットに任せてくれ。キューブについては博士とホークアイに任せる」 「お前は来ないのか?」 「嫌な予感がするんだ」 #名前2#はつまり逃げたいと言っていた。コールソンはそれを止めることも出来たがあえてしなかった。ミリタリーシャツの後姿からは何も読めない。コールソンはため息をついてフューリーを待つことにした。 「テスト試行中に暴走が?」 「いいえ、突然し始めた模様」 「エネルギーレベルは?」 「上昇中です。基地の避難は#名前1#とスコットに任せました」 「あいつらはキューブを見ないのか?」 「終わり次第こちらに来るように言ってあります」 「何分かかる?」 「30分ほどと言っていました」 「急がせろ」 「了解です」 そんな会話がされてきたのをスコットは聞いていた。コールソンのインカムと#名前2#のインカムは繋がっているのだ。#名前2#の元にも聞こえているはずなのに無視している。仕方なくスコットはしゃべりかけた。 「#名前1#、早くしないとフューリーにも怒られるぞ」 「わかってる」 「……コールソンがもう言いに来てる。はやくみんな運ぼう」 「そうだな」 そういうと#名前2#は荷物を持ち上げた。スコットにはたくさんの家族が背中に乗せられて顔は「面倒だ」と訴えている。口と顔が一緒になっていなかった。 #名前2#は面白いものを見たという表情を浮かべる。 「早くやれ、スコット」 「わかっている」 二人して似たようなセリフを言った。不思議だったが面白くて少しだけ笑った。コールソンにこの非常時に笑うなんてと怒られたが#名前2#たちは気にしなかった。 職員、家族の避難を終えてあとは荷物だけだ、という時に怒号が鳴り響いた。コールソンからの連絡だった。 「#名前1#!!」 「oui」 「早くキューブの方へ! あとは私の方で引き受ける」 「ああ、わかった」 「バートンッ!」 施設の中に入る途中でヒル副司令官の悲痛な叫び声が聞こえた。それと同時に銃弾がこちらにも飛んでくる。スコットが戦車から変わってロボットモードになり、ワイヤーをひっかけた。 「ありがと」 #名前2#はわっかのワイヤーに手をかけてホークアイの後ろの車に射線をひいた。いける。感覚的に打ち込んだのはただの銃弾ではなく発信機をつけたナノマシーンだ。しかし車の荷台に乗っていた杖を持った男がはじきとばした。 彼はあざ笑うように「なんだ、今のは。ここの虫か?」とあおってくる。それには答えずに#名前2#は体をひねりあげた。ホークアイの弓がギリギリのところをかすめてくる。 「#名前2#だめだ」 「だな」 スコットのワイヤーが回収され、落ちそうになった#名前2#は天井のコンクリートにナイフでとびついた。 「行くぞ」 そのまま男とホークアイは車に乗って去っていく。飛び降りた#名前2#をスコットが車に乗せてエンジンをうならせた。 「キューブを取られた! やつらを逃すな!」 「oui!」 フューリーの声が耳に響いてテンションがいやに上がっていく。#名前2#は力いっぱいにアクセルを踏み込んだ。スコットがラジオで叫びながら前を走る車にワイヤーをひっかけた。 足元にタイヤ。右手に#名前2#をつかみ、左手にはワイヤー。へんてこな格好でスコットは水上スキーでもやってるかのように引っ張られていく。見送るヒル副司令官はあぜんとそこに座っていた。 「スコット、副司令官はどこにいる?」 「フューリーがやられてそっちに待機のようだ。今、追ってるのは#名前1#だけ」 #名前2#はため息をついてスコットに車に戻るように指示した。「いいのか?」とスコットは確認する。これでワイヤーをほどいたらもう追うことは不可能になるぞ、と言いたいのだ。それを#名前2#自身もわかってうなずく。 「わかった」 #名前2#の体が放り投げられてスコットが一回転と共にプリウスに変わっていく。ガシャン、と落っこちた#名前2#を助手席に沈めて体からマシンガンが2丁装着される。いわゆるステルスフォースだが、スコットも使うのは初めてだった。 「いけるのか?」 「やってみないことにはわからないだろう」 「だな」 鋭い音と激しい乱射戦が始まった。向こうのバリアが硬くて実のところ消耗戦に近い。なんて面倒な杖なのか。 それでも、少しずつヒビを入れるように車のスピードを上げたところでスコットが叫んだ。 「危ない!」 トランスフォームしたスコットが#名前2#をつかんで走り出した。 「何するんだ、スコット!」 「下を見ろ」 やけに機嫌の悪い声でそう言われて#名前2#は仕方なく下をのぞいてみた。どこぞのマンガか、と突っ込みたいレベルの地割れが先ほどまでの道を貫いている。というか、もはや地盤落下。どこのハリウッド映画か、と突っ込みたい。 「お前、あそこにいたら死んでたぞ」 「だな、ありがとうスコット」 スコットは照れくささを隠すように一回転してビークルに変わる。またホークアイたちを追いかけた。 ガシャン、とミサイルを用意する。発射よーい!というところでフューリーから連絡が入った。 「#名前1#。もういい、追跡はやめにして救助活動に戻れ」 スコットも#名前2#も黙って座り込んだ。なんというか、思っていたよりも情けない終わり方だった。