黒鉄のサブマリン
パシフィック・ブイというインターポールの施設へと#名前2#たちは呼ばれていた。インターポールとの繋がりはあのルパンを追いかけている銭形との繋がりしか無かったのだが、その銭形の推薦もあってのことだというのは呼ばれてから知った。ルパンゲームの時のあの手伝いを彼は覚えていたのだ。 いつものように世祖の付き添いとして#名前2#が行くことになり、そして海の中で何かあったらまずいと古今伝授の太刀がついていった。古今伝授でいいのか!?と周りは焦っていたが本刃は何処吹く風である。北谷菜切たちの琉球刀だっているのに、と言ったが本人は「電子機器に強いので」とゆずらなかった。 パシフィック・ブイに到着するとまずはメンバーの名前を世祖に覚えさせるところから始まった。局長の牧野、このシステムの創設者とも言えるエンジニアこと直美(本人からアルジェントではなくそう呼ぶように言われた)、グレース、レオンハルト、エド……。古今伝授の太刀は自己紹介を求められ、「細川デンジュです」と言う。それでいいんだ、と思ったが周りは何も言わなかった。 最初のうちはなんで子どもがいるんだ、と周りは怒っていたが世祖の仕事ぶりを見たあとは何も言わなくなっていた。ざまあ展開というものですね、とインターネットから知った言葉を古今伝授は嬉々として使った。 防犯カメラの画像を元に世界中で顔認証が可能になるという技は、実はパシフィック・ブイなどという作業がなくとも本丸のあった未来では当たり前のように行われていたし世祖もその技術を持っている。だからこそスプリッツァーというキャラクターを作り出せたのだ。どこに組織の人間がいるのかという告発はことにうまくスプリッツァーを組織へと潜り込ませた。 まさかその技術をこの世界でも使いたがる人間がいるとは思ってもみなかったが。沖野さんはこの装置はこの時代には早すぎるとして、何とかして潰したいと思っていたようで丁度いいからと#名前2#たちを送り出したのだった。 与えられた仕事はこなしながら、世祖とどのように壊していくかを相談していたら組織からメールが入っていた。送り主はピンガ。世祖ことスプリッツァーを目の敵にしていた男だった。 ピンガは元々単独行動による荒さが目立つ男で、スプリッツァーがよく始末を命じられていたのだ。世祖は組織の人間たちも味方と思ったことはなく、毎度本当に殺すつもりで攻撃していたのだが、その度に彼は口八丁手八丁で乗り切り、幹部として未だに名前を連ねていた。スプリッツァーのいない今、彼はのうのうと過ごしているはずだ。それこそ、自分を狙っていた人間に依頼をかけてもよいと思えるぐらいには。 「……仕掛けてきていますね」 「古今」 「……ユーロポールで組織が動いたという報告があがっていましたよ。沖野さんからの情報なので確かでしょう」 「パシフィック・ブイを使ってとにかく情報を得たいってことか」 「撹乱させろという命令が来ていません」 「ん!?」 「……秘密が明かされるなら、そのように、と」 沖野さんがどこまで考えているのかは分からない。だが#名前2#はそこに反論する立場を持っていなかった。一時の感情で動いていては、彼らのコマになれない。だが……。狙われているのは恐らくシェリーこと宮野志保である。彼女を放置するのも#名前2#には酷な話だった。 「な、何とかならないかな世祖」 世祖は返事をしてくれなかった。 仕事をしていたある日、警察がここに視察にくるという知らせが入った。世祖は我関せずという顔をしていたが#名前2#は念の為に誰が来る予定なのかを聞くと白鳥と黒田という二人だという。 「あの二人が? 捜査一課のはずだけど」 「君、知ってるのかい?」 「ははは、米花町にいるとお世話になることが多くて……」 牧野は納得していたがほかのメンバーはベイカチョーが何を意味するものかよく分かっていないようだった。さすがに世界にまでその地名は轟いていないらしい。 警部たちを待っていたら、牧野の電話に子どもがひとり迷い込んだという。古今が「あなた達の……」というので「多分同じ人物を考えてると思う」と笑った。 メインルームで待っていると、思った通りの人物が来た。#名前2#さん!? 驚いたように叫ぶコナンに#名前2#はふるふると手を振った。 どうしてここにいるの? 世祖がちょっと呼ばれてるから保護者みたいなものー。 会話をする二人に牧野は「知り合いだったのか?」と聞いてくる。 「世祖の友達です」 「そうだったのか……」 直美はコナンにまだ話しかけたいようだったが、コナンの方はこちらに話を聞きたくて我慢しきれないようだった。 メンバー紹介も終わったところでコナンは#名前2#を捕まえて「本当に世祖が仕事を?」と聞いてくる。 「銭形警部っていたじゃん?」 「ああ、ルパンを追いかけてる……」 「その人の推薦だったんだ。ルパンゲームの時にお世話になったからって」 「全世界でルパンを見つけようってやってたあれのこと?」 「そうそう。銭形警部をその時手伝ってたんだけど、なぜか推薦されてた」 沖野さんとしても渡りに船だったことだろう。 「ねえねえ、#名前2#くん、コナンくん。コーヒーいらない?」 「あ、いります。デンジュは?」 「わたしはアイスティーを作りに行きます。世祖の方はカルピスですかね」 「僕もお手伝いする!」 「あら、ありがとう」 「俺は世祖の見張りがあるからここにいるわ」 カタカタとパソコンをいじっていた世祖は突然顔を上げると#名前2#の方をじっと見つめた。むむむっと顔をしかめっ面にしたあと、パソコンを閉じて走り出した。 「世祖!?」 慌てて追いかけるが世祖の足ははやかった。世祖! 声を上げて角を曲がるともう世祖は立ち止まっていた。古今伝授がなにか世祖と話している。わかりました、と頷いた古今伝授は「あとはお願いします」と洋服を脱ぎ捨てて反対方向に走り出してしまった。 「あ、おい!」 「いー おねがい、する」 「お願い?」 世祖はそれ以上は何も言わなかった。 メインルームへ戻ると、コーヒーをいれにいった直美がまだ戻らないという。デンジュもいない、と言われる。二人が最後にカメラに映っていたのはコーヒーを入れたあとのタイミングだという。 「ね、ねえ。あの清掃員たちの持ってるカート! 人がいれられるんじゃない?」 「一人は入るかもしれないが、もう一人は……」 「デンジュが裏切り者という可能性は?」 「なっ……!」 「ナオミがトイレに入っていくタイミングで連れ去られて。デンジュも一緒にいないんじゃあいつがいちばん疑わしいでしょ」 エドの言葉にコナンはじっと#名前2#のことを見てくる。有り得ない話だ 直美を連れ去るならば、刀剣男士たちに頼んだ方がはやいし仕事が捗る。犯人は別にいる。だが、世祖がわざと古今伝授を犯人として仕立てようとしたのも確かだ。 「……俺も、デンジュが怪しいと思う」 #名前2#はそう返すしかなかった。