新一と

Note

#名前2#の留学→高校2年の時に1年アメリカで受けている。その後、ひとつ下の高校2年のクラスに編入。陸奥たちはそれに合わせて留年をした。

 入学したての頃、1年生だけを集めた集会があった。何の集会だったかーー。きっと学校からのお呼び出しだった。そこに来たのがあの人だった。集会とは名ばかりの、あの人のライブとも言える代物だった。あの人の中ではライブでしかなかったのだ。 「いいか、お前ら」  キーンと音を立てたマイクをつかみ、その人は話をした。着飾った服でもないし、声がいいわけでもない。顔もまあまあなのにその人がしゃべるとみんなその声を聞いてしまうのだった。 「高校生活は、勉強もはしゃぐのも両方充実させろよ! じゃないと、お前達はここのセンセーみたいに頭でっかちになるからな!!」  指をさされた先生はスキンヘッドの頭をパチンと叩いて「ふざけんなよ!」と叫んだ。確かに人より頭が大きいのは否めない。それでも、先生たちに向かってそんな発言をして許されるのかと思った。話はその後、学校生活について触れられた。  規則はそんなに厳しくなかったが、ハメを外しすぎると怒られるからという話をされた。自分の体験談を交えたそれは立っていて疲れていても聞いてしまう話ばかりだった。笑わせる集会。偏った考えからは出もしない集会だ。 「これで話はおしまいだ! 解散!!」  最後まで自己紹介をしなかった彼は生徒会役員でもない一般生徒と知ったのは園子から聞かされたからだった。#名前1##名前2#。陸奥吉行。中田清光。この3人組は俺達が中学生の時から有名だった。高校でも相変わらず有名なのは言うまでもない。でも、途中で#名前1#さんは留学をした。陸奥さんたちは彼を待つために、学校と直談判をして留年をした。#名前1#さんが帰ってきたらまた高校2年に編入されるだろうから、という理由だった。そして本当にその通りになった。#名前1#さんは陸奥さんたちを見て泣き笑いで抱きついた。お前らってほんとバカだよな!と叫びながら。  入学する前のことを俺がなぜ知っているのか。園子が男同士の友情に感動して俺に話を何遍もしたからだ。  俺が高校一年の時の春、#名前1#さんたちは高校三年生になった。  #名前2#さんと知り合えたのは園子のおかげだった。彼女はケラケラと笑いながら#名前2#さんの前で出会った時の話をした。同じ学年じゃないし、同じ部活でもないのにあんなに仲良くなれたのは#名前2#さんの人脈のおかげというか……。まあ、よくわからない自習室をお借りして#名前2#さんと俺たちは話し合ってたのだ。 「蘭の空手の大会を見に行った時に、#名前2#先輩たちと知り合ったのよー。#名前2#さんってばすごい叫んでるんだもん。すぐに分かっちゃった」 「俺の知り合いも大会に出てたからさー。ああ、男子の方だけど」  俺がコナンになった後で鳴さんを知って、その知り合いが京極さんであることを知った。園子のアクティブさには驚かされるが、まさか#名前2#さんと知り合いになるとは思わなかった。その時の俺はこの人があまり好きではなかったのだ。  俺が新聞で賑やかになるのは2年生になってからだった。1年の俺は学校の話題を即座に作る#名前2#さんが嫌いだった。その印象が変わり始めたのは#名前2#さんが案外読書家と知った時だった。  ミステリーの知識も深いし、ミステリー作者の歴史にも強い。本人は小説の読まず嫌いが激しいと言っていたけれど、読むべき本は大抵読んでいた。シャーロック・ホームズなんかも、パスティーシュまできちんと読んでいた。#名前2#さんはホームズよりも明智派と知った時は喧嘩しそうになったが#名前2#さんの方から謝ってくれた。この人はいつも大人な素振りを見せるから高校生で精神の幼い俺たちはいつもかなわない。  いつの間にかシャーロック・ホームズについて父親よりも話しやすい相手になっていたのは想像のついた話だ。そこから俺は段々と#名前2#さんのことを知っていった。妹についてはなんとなく話を聞いていたので世祖に会った時も驚きはなかった。本当に自閉症とサヴァンなんだなあと思ったくらいだ。転入性として同じクラスじゃなかったので学校の授業がどうかは今も知らないのだが持ち前のあの雰囲気は小学生にも通用するらしい。  卒業式の日なんかはサッカー部の先輩との別れよりも泣いたかもしれなかった。先輩たちの名誉のために言っておくが、#名前2#さんとの別れに涙したのは俺だけでなく色んな人が泣いていた。先生方も「すぐに戻るなよ」と自分の心と矛盾した話しをしていた。大学生になってもすぐに高校に顔を見せてくださいねと何回言われたのだろう。俺もそういった一人だが……。いや、しょうがない。いつものあの時間がなくなるって本当にしんどかったのだ。 「今生の別れじゃないんだしさあ」  対して#名前2#さんはげらげらと笑って携帯で写真を撮りまくっていた。俺たちの泣き顔をなんだと思ってるのか。それでも相手の携帯と自分の携帯の両方で2回ずつ撮ってくれたのはあの人なりの気遣いだったのだろう。合計4回の写真を繰り返して撮った。俺は泣いた顔のまま撮られるのは嫌でどうしようか迷っていたが、結局#名前2#さんに無理やり写真に入れられた。陸奥さんはけらけらと笑って「撮るぜよ」と声をかけた。後で見た自分は泣くのを我慢した変な顔だった。それほどに俺はこの人との別れを嫌がっていたのだ。陸奥さんは明るくて俺も何度か話したことはあったが、中田さんはクールで俺とはほとんど話さなかったと思う。  入ってた部活は似合うというか不思議というかパソコン部だった。色んな部活の助っ人をしているのを見たことあるが、在籍したのはパソコン部だった。陸奥さんはバイトのために部活は入ってなかったらしいけど。  それが今となってはこの人とまた高校の時みたいに話してるんだから不思議に思う。江戸川コナンになった時に一緒にいた女の子は#名前2#さんの妹だったのだ。彼女は不思議な女の子だ。灰原よりも分かりにくい性格だ。でも#名前2#さんに対しては甘えたで素直で変な感じだった。別に#名前2#さんに甘えたいと思ったことは無い。それなら相手は蘭がいい。  ただ、#名前2#さんが世祖のことを甘やかして叱って育てている事実が自分の中でしっくりこなかった。#名前2#さんもこういう事するんだな、と驚いたのかもしれない。#名前2#さんが妹のために小学校に迎えに来てるなんて初めて見たのだから。 「コナン、おい、コナン!」 「え、あ、何……? って、#名前2#さんか」 「どうしたんだよ、変な顔して」 「何でもないすーー」 「ふーん? 少年探偵団たちは今日は一緒じゃないのか」 「今日、俺、本屋行きたくて」 「ああ、なんか新刊か?」 「うん」  昔の#名前2#さんならすぐにその新刊がわかったろうになと悲しくなった。勝手に期待して勝手に失望しているのだが、それでも期待しないわけにはいかない。あの高校での#名前2#さんにまた会いたいのだ。ピリピリして、でも楽しむことは忘れなかった彼に。 「今月ってなんだっけなあ。あれか、やる気のない弁護士のやつか」 「ううん、左文字のやつ」 「あー、左文字か」  そう言って#名前2#さんは苦い顔をした。そう言えば読まず嫌いだと言った本の中に左文字シリーズがあったことを思い出す。#名前2#さんを見つめると、ポリポリと頬をかいて「タイトルがなあ」と呟いた。 「タイトルがどうかしたの?」 「左文字って言うと、俺にとっちゃ刀の名前だからなあ」 「ああ、義元左文字のこと?」  俺の言葉に#名前2#さんはヨシモト…と呟いた。左文字で刀と言えば重要文化財の義元左文字のことだと思ったが違ったのかもしれない。 「……そいつもあるが、なんだかなあ。左文字の刀が不遇だったりしてるから読むのを躊躇うんだよなあ」  まるで左文字の刀を人のように言って#名前2#さんは世祖の元に顔を近づけた。ひそひそ話でもしそうな近さだがそれがいつも通りの二人だった。 「本屋行くか、俺達も」  コクリと世祖が頷いた。腕から降りた世祖が俺と手をつなごうと手のひらを見せてきた。 「えっ」 「握ろうぜ、コナン」  にひひっと笑って#名前2#さんは俺の横に来てもう一本の手を握る。まるでおかしな図だったし、やっぱり蘭と繋ぎたかったとも思うけど嫌なわけじゃなかった。 「帰りにアイス買ってやるぞー」 「ううー!!」  たまにはこう言うのも悪くないと思ってしまった。