迷宮の十字路
寺の襖は薄くて助かる。聞き耳をたてればちゃんと話が聞こえる。茶屋から急に消えた2人を追いかけたら、なぜか桜さんの店にやってきた。その後は寺に帰って小五郎探偵たちに報告。桜さんが伊勢三郎だった、という報告だ。それ以上の収穫は見込めないので急いで自室へと走る。 「どうだった? 厚」 「ああー、桜さんが伊勢三郎だってことが分かった」 「へー。盗賊団、……名前忘れちゃった」 「え? あ、あー、俺も忘れたわ」 「源氏の人達、じゃ今剣たち被るしなあ。あ、そういえば今剣怒ってた? 盗賊団の頭領って義経なんでしょ?」 「それがさあ、怒りすぎてて#名前2#さんの手にも負えなくて結局無理やりインフルエンザかからせて寝込ませたんだよな」 「ひっどーい!」 「あはははは!」 「あ、それで盗賊団が村正さんの本体盗んだのは確かなんでしょ? 僕らはそれを奪い返せばいいんだし。犯人の元まであの探偵さんたちに頼めばいいんじゃない?」 「乱ー、それ#名前2#さんに怒られるぞー」 「だって、僕らじゃ暗号分かんないじゃん! 使えるものは使えって#名前2#さん言うしー」 揚げ足を取るような発言に厚は頭を振って「しゃあないなあ」と言った。 「やったあ、厚大好き!」 「お前に言われてもなあ」 「はあ?」 「ごめん」 ぴこん、と携帯が鳴った。誰からだろうか。 「厚、乱、もう寝なさい」 「はーい」 ゴソゴソと布団に入り、龍円さんに聞かれちゃったかな?と乱が笑う。それでもいいや、と厚も笑う。先ほどの連絡に面白くなりそうな予感がしたのだ。 『そっちにそろそろ行くから』 「あれ服部平次さんだ」 ちょっとした用事を済ませて歩いていたらコナンと西の高校生探偵と噂は聞いていた少年探偵団の子供たちとその保護者らしき人が集まっていた。かなり大所帯な雰囲気がまるで粟田口のようだったと厚は後で#名前2#たちに笑って言った。 「なんや、厚と乱やないか。どしたんや?」 「ちょっと住職に言われた用事ー。平次さんたちは?」 「俺らはこの少年探偵団の1人が迷子になっとるからにな。迎えにいくところや」 「へー」 「なあ、兄ちゃんたち誰だよ?」 「僕はミダレ。隣にいるのはアツだよ。信濃と後藤から君たちのこと聞いてるよー」 「んん?」とコナンが首をかしげた。聞き覚えのある名前だったのだ。 「あぁ! もしかして、エッグの事件の時のお兄さん達ー!?」 「そうそう。四藤コンビね! コナンくんもほんとは知ってたんだけど、一方的に知ってるんじゃ困るかなって言わなかったんだ」 四藤と粟口は親戚なの?と聞いたコナンに厚が頷いた。一応粟口が本家筋だが、自分たちの代ではそんな格差をなくそうとしている、と。 「けったいな家やなあ、東と西で分けるなんて」 「そうかぁ? 別におかしくなんてねーよなぁ、分家して領地二分とか」 「だよねー。あーもうずっと、ずお兄さんもばみ兄さんにも会ってないなあ。いち兄と一緒にいるのも楽しいけど疲れちゃうんだもん」 乱はそう言って歩美たちの方を振り向くと「髪の毛ぐらい好きな美容院で切りたいよねえ?」と笑いかける。 「うーん、私はお母さんに切ってもらうのも好き!」 「確かに美容院の方がいいわ」 対照的な2人の返事に乱は笑って「灰原ちゃんおちゃめー」と厚の方に駆け寄った。 「それに比べて厚ってばほんと髪の毛適当だよね…。三日月さんのところいるんだからもっと身なりに気をつけなよ」 「うるせーなあ。あの人はそんなの気にしないんだからいいじゃねえか」 2人は喋りながらいつの間にか服部から抜き取った眼鏡を見ながら歩いていく。え?え?と二度見三度見をする服部に厚が「へへー、話してる間にスられちまったなあ」と笑う。 「すごいねえ、乱くん!」 「僕はまだまだだよ。こうゆうことはね、もっと上手い人がいるんだ」 ニッコリと笑った顔がざわざわとした感覚を呼び起こした。背筋を伸ばした少年探偵団たちを厚の声で呼び戻す。 「#名前2#さんとかはプロっぽいよなあ」 「ね、ねえ! 厚くんたちはここら辺をよく知ってるの?」 「まあなー、職業柄覚えることが多くてな」 にっこりと笑った厚はどうみても小学生で光彦と歩美は首をかしげた。コナンと灰原はそんな厚を確認するように睨んだが。 「ああ、ここだな」 厚は指さした先に元太がいる、と教えて眼鏡をコナンに返すと元来た道を歩き出した。 「あ、ちょっと待ってよ! お邪魔しましたー、またお話しようね!」 スタスタ歩き出した厚の後を乱が追いかけていく。摩訶不思議とまではいかないが色々とよく分からない2人に残った面子はぽかんと背中を見送った。その後、迎えにじれた元太が道路に出てきて道端に佇むコナンたちを見つけた。 迷子だった元太の方が「途中で迷子になったのか?」と聞くのがあまりにもおかしかった。 山王寺に戻って料理をしていたら、推理ショーが始まるからと呼び出された。あの茶屋にいた人達全員じゃなくて千賀鈴さんと女将と綾小路警部と……誰か知らない人がいた。青いスーツの服の人だ。 小五郎探偵の推理は何ともお粗末なもので、さすがの厚や乱にも嘘だろ承太郎と#名前2#の真似をしたくなるほどだった。 「ねえ、厚……。僕ら、ここにいる意味ってある?」 「ない、と思う」 小五郎さんは知らないと思うが、綾小路警部は犯人扱いされるほど悪い人じゃないしシマリスを犯行には使わないだろう。 「あ、携帯鳴ってる」 「ん、俺のだ」 小五郎のシマリスを使った実験で騒いでる間に失礼しまーすと小声で呟いて近くの部屋にお邪魔した。 「もしもし?」 「ああ、厚か? そっちはどうだ?」 「源氏の盗賊団についてはお手上げだなー。だけど、高校生探偵たちが、っと!」 ぐいん、と乱に引っ張られた。転けそうになるのをこらえて、携帯の喋り口には聞こえないように「なにするんだ!」と抗議したら口を押さえられた。 「黙って見ててよ!」 「んー?」 小さく襖を開けると中には暗号と地図とを見比べながら何か言っている高校生探偵コンビがいた。工藤新一と服部平次。正しく『いいコンビ』だ。 「あ、ごめん、うん、ああ、大丈夫。何とかなりそうだ。また分かったら連絡する、うん、じゃあ」 ぴっ、と電話を切ってポケットにしまう。乱の口が「だれから?」と動いた。 「#名前2#さんたちだった」 「そっか」 襖をそっと閉めて自室に戻りすぐに動ける準備をする。住職の部屋に行って出掛ける話をしたら、「無茶はするなよ」と釘を刺されてしまった。どうやら、どうしてここに来たのかこの人にはお見通しらしい。 「ごめん、じっちゃん! 結果的に騙す形になっちまって……」 「ふふっ、それは構わん。お前達が遊びに来るのは面白いからな」 またおいで、と頭を撫でられて嬉しくなったがこうしえる暇もあんまりない。急いでコナンたちのいる部屋に戻ると「仏光寺だ……」という声が聞こえた。 何とかしてコナンたちより先に行こう、とアイコンタクトをした乱と厚は急いで走り出した。念のため、刀も持って#名前2#に連絡を入れておく。了解、というメールが届いた。 「仏光寺……だけど、なさげだね」 「だな」 念のため隅々探したが仏像も村正もなかった。うーん、と思っていたらコナンと平次の声が聞こえてきた。近くの木に登り身を隠すと正門近くの場所にあった玉龍寺跡の石碑に近寄っていった。 「玉龍寺、みたいだね」 「だな」 急ごう、と木から下りようとしたら平次が倒れるのを見てしまった。見過ごすことは出来なかった。「服部! 服部!」と声をかけるコナンに駆け寄る。 「コナン、お前は玉龍寺に行きな! 服部さんは俺達が病院に連れていくから!」 「乱!? 厚!?」 「何固まってるのさ! 早く行かないと服部さん起き出してまた勝手に動いちゃうでしょ!!」 弾かれたようにコナンが走り出した。救急車は来るまでなかなかに時間がかかったが病院までは早かった。 平次の付き添いは病院になぜか居た哀と交代して、厚と乱は急いで玉龍寺へ向かう。 と、電話が鳴った。 「#名前2#さん? よかった、玉龍寺だ! 玉龍寺に村正があるはずなんだ!」 「んだと!? 沖野が怒る前に回収しねえと俺たち殺されんぞ!」と#名前2#が叫んだ。 #名前2#の言葉に乱がうへえという顔をした。さすがにそれは嫌だ。厚は三条との事があるからあまり文句を言われないが他の刀剣たちに沖野という人は容赦がない。さらに付け加えて言うと沖野という人は#名前2#にはより容赦がない。ズタボロだ。 「俺もすぐ行くから、先行ってろ!」 「はいはい!」 山の中なんて走るのはへっちゃらだ。本丸にいる間だって裏山を駆け回っていたのだから。ウサギのように跳ねながら山を駆け上がる。短刀の時はもっと清々しく回っていたのに、なんで今はこんなにも体が重いのか。これが人間の重みらしい。 玉龍寺に着くとなぜか工藤新一と西条さんが斬り合い?をしていた。よく分からない事態だがこのままでは工藤新一の具合が悪そうだ。 「た、助けに来ましたぁああ!」 短刀を逆手に持ち替えて思わず敵と思われる面をつけた男との間に割って入り峰打ちでその腹に一撃を食らわせた。 「ほぉー、なかなかやりよるなぁ」 「え、その声は……」 「服部平次、押して参る!」 敵だと思った1人が面を外したら仲間でした、なんてどこの漫画なのか。でやあ!と叫びながら1人また1人と倒すその姿は凛々しく自分たちを率いた誰かさんに似ていた。 「厚! 気ぃ抜いてないで!」 「! すまん!」 気絶させないと終わらない!と戦っていたら西条さんにものすごい目つきで睨まれた。 「ボウズども! 二手に分かれるで!」 「はい!」 そっちの方が好都合だ。平次たちとは逆方向に走り出して茂みの中に入ったらそのまま短刀の機動を生かして枝から枝へと上に登っていった。 「村正、どこにあるかなあ」 「さあなあ……。ん?」 「どうしたの、厚」 「いや、この寺って…玉って字に似てないか?」 「はあ?」 「ほら、あそこが点で……こっちが上に見たらさ」 「あ、ほんとだ」 「見つからへんわ……。仕方ない、戻るで!」 「あ、敵さんたち居なくなった。厚、とりあえず屋根の上に登ろうよ」 「そうだな」 近くにあった棟の瓦屋根に登り、何処かに村正の気配はないか探してみると薄らと気配を感じ取った。 「あ、いた」 「はあ?」 いた、って何言ってんだよと厚が言おうとしたら乱の見る方向に村正を持って走る平次の姿があった。 「あ、本当だ……。って、やべえコナンに#名前2#さんもこっち来てる! おい、乱!」 「下降りるんでしょ、分かってる!」 ひゅおん、と風に乗るように降りるとそのまま部下の人に2人のしかかった。ぐへえ、と声がしたがそのま気絶してもらう。 「厚くん、乱くん!?」 「コナン、そのまま蹴っちまえ!」 「え? え?」 追いかけられていた和葉の頭を伏せるとコナンが焚き木を蹴って敵の1人にヒットさせた。ナイッシューと#名前2#が笑うのが聞こえる。 「#名前2#さん、囲まれそう!」 「はいはい!」 一撃で2人ものしてる。蹴りと打を上手く空中で当てるのはもはや#名前2#が人を辞めてるようにしか見えない。アクション俳優にでもなるつもりなのだろうか。 「おい、厚! 乱! 村正はどうした!?」 「平次さん持ってる!」 「はあああ!!? ふざけんなよ、アイツがまた脱ぐじゃねえか!! おい、乱! お前ちょっと上がって2人とも倒してこい!」 「何言うてんねん、アンタはぁ!!」 「#名前2#さん、洒落にならないから!!」 ギャーギャー言いながらも敵たちは確実に減らしている。乱が#名前2#さんの手を足場にして空へ跳ね上がるのと同時に西条さんが毒を塗ったという小太刀を平次に見せた。 「そんな勝負で、刀を、侮辱するなぁああ!」 鞘ごと投げた短刀が小太刀を持つ左手首にあたり小太刀が落っこちる。くるん、と回りながらもそのまま西条さんにかかと落としを食らわせた。 「え、あ、は……?」 「フーッ! 平次さん! その刀も盗難品なんで返してください!!」 あの時の服部平次の顔やばかったな、と#名前2#は下で爆笑しながらも戦っていた。 ゲンジボタルに盗まれていた盗難品はきちんと回収されて、その中の村正は#名前2#たちが受け取ることとなった。指示を出した沖野がそのまま何かするのだろう。(そして#名前2#はきっと村正本人に嫌味を言われながら脱ぐのを止めなければならない。) 平次やコナンには厚と乱は何者なのか!?と問い詰められたがただの小学生だとしか答えられない。勝負を邪魔したのは悪かったが、あんな勝負のやり方で大事な銘ありの刀を使われるのはこちらも困る。 投げやりな返事に2人はふてくされたが、#名前2#の苦笑いに深くは突っ込まなかった。 京都からは帰らずに奈良に一旦戻ると言うとコナンにまた怪しまれた。が、荷物は置きっぱなしなのだから戻らないと帰れない。厚と乱も一緒に連れていくことになったので住職に挨拶をすると見透かされたように「またおいでなさい」と言われた。頭の上がらない人だ、本当に。 お題セリフ「刀を侮辱するな」 村正実装されたので絶対やろうと思ってました。