映画ルパンVSコナン

 次元とコナンはエミリオの部屋に行きたいというので途中で分かれて東都タワーに向かった。遠いなあと思いながらもなんとか走り抜けると数珠丸は要望通りすでにチケットを用意して待ってくれていた。お金は後で請求しますよ、と微笑んだ彼に#名前2#は「後でな」と返事をする。展望台へ急ぐと、世祖は人混みの多さにぐっと顔をしかめる。変に泣き出さないように世祖と隅に向かった。数珠丸にエミリオたちを探すのを任せて#名前2#は端に寄って世祖と顔を合わせた。 「世祖、深呼吸」 「う゛う……」 「ほら、こっちに来ていいから」  世祖は大人しく俺の胸にしがみついた。よしよし、と背中をさするとぐずった声が聞こえてくるが暴れるのまではいかなかった。大きな子供になった世祖を抱きかかえて数珠丸を探しに行くと人混みができていた。慌てて窓ガラスに近づくとなんでそこにいるのか?と思うようなところに蘭ちゃんと数珠丸がいた。園子ちゃんの頭も離れたところに見える。ああ、どうしよう。急いで階段を駆け下りる? いや間に合うか、これは? あそこにどう行けばいいかもわからないのに。  悩んでいた#名前2#に世祖の小さな手が当てられた。世祖は小さくぐずりながらも「いこ」と声をあげた。 「……ああ、すまない。世祖、案内してくれ」  今悩んでいる時間の方が無駄だ。世祖をおぶり#名前2#はスタッフオンリーと書かれた扉に飛び込んだ。階段を駆け下り、世祖と共に走った。世祖に止められた階で扉を開けるとごうごうと風が顔にあたった。園子の姿が見える。世祖をおぶったまま#名前2#は急いで数珠丸に駆け寄った。 「数珠丸、手ぇ離すなよ!」  答えは聞かずとも分かっている。数珠丸が必死につかんでいる腕を肘まで引っ張り上げた。蘭ちゃんの手にはエミリオがくっついている。隙間から見た世祖は人助けのためだと言って少しだけ力を使った。蘭たちに使うと変に思われるかもしれないので、数珠丸と#名前2#をほんの少し後押ししたくらいだ。二人にはそれでも十分だった。元々数珠丸は刀剣男士で人間離れした力を持っていることもあり、エミリオと蘭をずるずると引き上げたのだ。美しい姿をした男の泥臭い勝利だった。#名前2#は倒れ込み口を大きく開けて空気を吸い込んだ。 「ご、ごめんなさい……」  エミリオが言ったのはたったそれだけだった。#名前2#は何か言いたいことがあった気がした。怒ることもできたはずなのに、口から出たのは「助けるの…げほっ、遅く、なって、……はぁ、すまなかった」と何とも情けない言葉だった。エミリオは叱られることを覚悟していたのに想定外の一言で涙がこぼれた。エミリオはただライブを中止にしたかっただけだ。自殺なんて全く考えていなかった。 「ごめんなさい。ごめんなさい、本当に…ごめんなさい」  エミリオにはただそう言うだけしかできなかった。数珠丸はうっすらと微笑みかけて「大丈夫、貴方の願いはかないますよ」と言うのだった。彼の声は#名前2#よりも疲れている素振りがない。やっぱり人間じゃねえな、と背中を見ながらそんなことを思っていた。 「#名前2#さん!」 「コナン……。次元さんも」 「おいおいお前本当に人間かよ。二人も引っ張り上げるなんて」 「…まあ、訓練受けたことあるんで」 「どんな想定してやがる……」  エミリオのことを叱ったのは蘭だったが、その行動に許しを与えたのは誰だったのだろうか。#名前2#はエミリオのマネージャーやスポンサーと関わりがあるわけではない。彼等がその後どうしたかよりも筋肉痛になるだろう自分の体の方が心配だった。エミリオたちと別れた後、数珠丸と共に電車に揺られて米花町へと帰る。おんぶされた世祖は#名前2#にずっとしがみついていた。  普段から二人しかいない家なので部屋に入ってもがらんと静かなものである。数珠丸が食事の準備をしてくれるというので、#名前2#は風呂の準備をすることにした。するとソファーに置いていたはずの世祖がぽてぽてと近寄ってきた。どうした、と声をかけると何も言わずに#名前2#の服をつかむ。どうしようか、と思って#名前2#は世祖を前に抱きかかえそのまま湯船に入ってしまった。  ちゃぷん、と湯に浸かった少女はもごもごと口を動かし湯にもぐった。すぐに#名前2#が抱き上げるとぴゅっと口に含んだ湯をかけられた。きったな!と叫ぶ#名前2#に世祖はニヤリと笑い「ばぁーか」と言う。  風呂から上がると、数珠丸がポトフを作って待っていてくれた。私も入っていいですか、と声をかけるのでタオルを渡して見送った。皿を出すのも面倒になって、普段から味噌汁用に準備している椀にポトフを入れた。世祖の前に置くと#名前2#と椀とを見つめてフォークでもぐもぐと食べ始めた。 「うまいか」  世祖が小さくうなずく。それを見ていた#名前2#も腹が減って自分の分を用意した。世祖と#名前2#とが楽しそうに食べるのを見て仲直りしたんですか、と数珠丸が聞く。#名前2#は首を傾げた。何の話か分からなかったのだ。 「兄弟げんかでもしていたかと」 「いや、まったく?」 「お風呂場でやけに騒いでいた気がしたので……」 「あれは世祖のせいだからなあ」  ちらりと世祖を見る#名前2#に世祖はむぅっと顎をしゃくらせた。#名前2#はすぐに笑ってしまう。そのままポトフを食べ続ける二人に数珠丸は兄妹とは難しいと心の中で呟いた。  翌日、コナンに言われてエミリオたちに会いに行った。命の恩人だから、とチケットを頂いたが沖野さんからの仕事内容的に見ることは叶わない。誰か行きたい人、とメッセージを送ると意外なことに山姥切と秋田の二人が手を挙げた。先着二名と言っていたのでその二人には後で家に来るように言う。 「ありがとうございます、チケット」 「こちらこそ……。エミリオを助けていただきありがとうございます」  マネージャーの言葉に#名前2#はなんと言おうか迷った。助けた、というのは自分たちに向けられた言葉なのか分からなかった。