コナンと
「#名前2#、これ」 「あ? すまん、今忙しいから後にしてくれ」 本丸が壊れた後に名探偵コナンの世界にやってきた、というのはまるで嘘のようだがホントの話だ。俺自身にはコナンとかあの高校生が小学生になったやつとかバーローのイメージしかないのだがいつの間にか世祖は組織の人間になってたし沖野はなんか色々と影で動いてるしで俺は1人で世祖のお守りをしていた。 防大じゃなくて普通の大学にいって世祖は今高校3年生。組織での名前はスプリッツァーだ。 よしっと今日の夕食を作り終わって振り向くと世祖の姿が消えていた。 「!!??」 必死になってまた歴史修正主義者の仕業じゃないか、とか調べてその痕跡がないと分かったら世祖のGPSを見てみると、 「トロピカルランド…? なんであいつ、……」 世祖は#名前2#のように考えなしに行動するタイプな訳ではない。日本にいる知り合いの全員に連絡をとって反応があったのは薬研だけだった。 RINEには薬研から一言、 「後輩が危ないって言ってたぞ?」 #名前2#はあーあ、という顔を隠さずに急いで車に乗り込んだ。 トロピカルランドの年間パスポートを持っていたことを感動したことはこれほどまでにない。どうやって世祖がここまで来たのかは分からないが今は探す方が懸命だ。と、GPSが移動しはじめたと光を放つ。 「警察が見つけるんだったよな、あれ…」 閉園時間はあと5分。それまでに2人を見つけなければ。#名前2#はチケット特典交換所の裏に回り込むと建物の裏を見るように走り始めた。 3分後、ようやく倒れていた2人を発見した。工藤新一はまだしも、世祖も同じく小さくなっている。本丸で着替えさせたりしていたので裸などは気にしないが問題は沖野がこの話をどう思うかである。 「あぁぁぁああ」 #名前2#は思わずうずくまった。 見回りの警備員たちに適当に嘘をついて工藤新一と世祖を回収したあと、俺は工藤を阿笠博士のもとに送り届けた。(そこでひと悶着あったが何とか押し付けてきた。)そこから先に関わる気はなかったのである。俺自身は。 車に戻ると世祖はようやく起きたらしくキョロキョロと辺りを見回して 「ジンはー?」 と聞いた。 「……ん!?」 「ジン、みるー。私にげる、わかた?」 世祖が組織の1員、スプリッツァーであることはボスしか知らず後の人間はみんなスプリッツァーが女子高生だなんて知らない。つまり。 「ジンの取引現場を見てる新一を、お前は助けようとして?」 「うん」 「それで顔を見られて?」 「うん」 「薬飲まされちゃったのか」 「ううん」 「自分で飲んだのか」 「うん」 「渡されたヤツをそんな簡単に飲むなよぉ……」 「ぬすむ、のむ」 「もっとダメだわ」 世祖は#名前2#の疲れた顔を見てきゃらきゃら笑って 「またおんなじ!」 と#名前2#の首に手を回してきた。#名前2#は本丸にいた時にはそれなりの年齢であったが彼女にとってはこの距離感がいいらしい。 本丸にいた時よりも重くなった世祖を抱えて#名前2#は沖野への電話の憂鬱を紛らわそうとした。 「あ、そうだ。沖野と一緒にボスにメール送らないとな。カーラースーなぜなくのー カラスの勝手でしょー」 わざと音程を外した歌い方に世祖は顔を大笑いして「やん! やん!!」と叫びながら#名前2#の足の周りを走り回った。まるで本丸に戻ったかのような振る舞いに#名前2#自身はカタルシスを感じていた。 沖野は世祖の行動を予測していたらしく「だと思ったよ」という言葉から始まりコナンと世祖の2人分の戸籍謄本や書類などを用意してくれた。#名前2#はそれを阿笠の元に送り小学生に転入出来るようにしてくれ、と連絡を入れた。 2つ返事でイエスと返ってきて少しほっとしたのは秘密である。 コナンと世祖が時期をずらして小学生として転入した。(2人ともクラスが変わるように、という配慮だった。世祖が小学生として通い始めたので#名前2#は安心して大学に通っている。世祖の成年後見人となるために勉強しているのである。この世界に居座る気はないが#名前2#は働くことも視界におさめていた。) と、ある日#名前2#は工藤新一の住む家に招かれていた。世祖を置いておこうとしたのだが、こんのすけのような便利なお助けキャラは家にいないし#名前2#の足についたままだったので仕方なく仲良く手をにぎって歩いてきた。 周りからは仲のいい兄妹と思われているようだったが実際は兄妹というよりも赤ん坊とナニーのようなものである。 そして訪れた工藤邸では男子高校生1人ということでホコリは少しあったが問題ないだろう、と#名前2#は世祖を適当なイスに座らせて持ってきたぬいぐるみをつかませた。 その光景を見ていたコナンはほうけたように口を開いたがすぐに顔を戻した。 「それで、#名前2#さんはなんであんなところにいたんだよ?」 もと工藤新一、いまは江戸川コナンという名を名乗っているらしい。ネーミングセンスないよな、これ。覚えやすさは天下一品だけど。 そのコナンは俺の前に座ってイライラと話してきた。イライラしてるのはこっちも同じだと視線で訴えたが全然きづいてもらえなかった。 「うるせえなあ、世祖に言われたんだよ」 「世祖って、あの女の子だよな?」 ちらりと後ろを向くと世祖はこんのすけに似せて作ったぬいぐるみとプロレスごっこをしていた。俺が教えたのはMAのはずだが残念ながら覚えてくれなかったのだ。まあ、MAをこなす小学1年生とか恐怖だが。 「ああ」 「あの子……黒ずくめの組織にいたのか?」 「あ? なんで分かるんだよ」 「あの子にズボン引っ張られて、逃げようって。でも俺が先に捕まっちまって……。そうか、逃げられてたならよかった。博士もそんな子知らないって言ってたしよ」 ということは、世祖はコナンよりも前に薬を飲んでいたらしい。となると世祖はジンに殺されても仕方ないのだがもしかしたら自分が探しに来たのを知ってやめたのかも……。いや、そんな希望的観測よりもリアルを考えよう。恐らく世祖は脳を開放させたあの能力を使ったんだろう。あれ程使うな、と言ったのに。 「あの子も薬飲まされたんすか?」 「いんにゃあ自分から飲んだ方」 「…ふーん……。それで、あの薬について知ってます?」 「そんなの知らねーよ! さしもの世祖も何十年かけられたプロジェクトじゃあ覚えてなんかないさ。俺が聞きかじったのはシャーロックホームズにちなんだ名前ってだけだ」 「シャーロックホームズに? ていうか聞きかじってるって……」 「……まあ、俺も少し関係あるくらいだけどほとんど知らない。プロジェクトはシェリングフォードとかシャーロックとかそんな感じだ」 それより、お前の方はどうなんだよ? 世祖は上手くやってるのか? コナンになった工藤新一に#名前2#は連絡を送っていた。帝丹OBとしてよく高校に出向いてつないだコネクションがここで生かされるとは……、と#名前2#だって驚いている。 さて送った連絡というのは妹の世祖をよろしく頼むというものだった。世祖は帝丹高校ではなく障害者向けの学校にいたのでどうせ知らないだろう、とタカをくくったのである。 休み時間になると顔を見せに行ってはいるが世祖は相変わらずクラスを困らせているようだとコナンが答える。目の前にいる名探偵は苦笑いして「あいつ、アメリカとかで飛び級させたほうがいーんじゃねーのか?」という。 「こんなことにならなかったらするんだがな」 「なんだよ、その言い方は?」 「こっちにも色々あんだよ」 本丸には戻れないし、すべての刀剣たちがどうなったかも分からない。出会ったやつらもいるが、沖野さんに聞かされただけでちゃんと連絡の取れてないやつらもいる。しかも世祖はコナン同様にAPTX4869を飲み児童化してしまっている。とてもじゃないが外国なんてそのまた夢だ。 コナンには世祖が組織の1員であったことといまは抜けていることだけを話しておいた。命狙われてないことだけは確か、と言うと不穏な視線をもらう。へたに情報を与えて事態が好転するとも思えず、必要最低限だけを言ったのである。 「世祖から組織のこと聞きだすっつーのは……」 「残念ながら世祖は組織の仕事をネット経由で受け付けるのがほとんどだったからなあ。無理だろう」 「……ちぇ。それで? あの子、いまは普通の小学生になっちまったから仕方なく学校につっこんどこうって訳か」 「保護者のいこーだ」 「その保護者も変な人だな」 頭の中に沖野が思い浮かぶ。あの男は自分たちが世界に帰れるように話をさっさと終わらせた方がいいとFBIに行ってしまった。どうやら日本政府や防衛省とも話をつけての行動らしく、アメリカへはなんかすごい飛行機に乗っていってしまった。 「ああ、変な人なんだよ」 悪い人でもあるんだけどな、と#名前2#は笑った。