爆弾処理班と
※#名前2#が中学3年生、世祖が中学1年生の時 「バンバン!」 「は?」 ショッピングモールですれ違った男に爆弾って……何言ってるんだ? 世祖は男のもとに近寄ろうとする。男は後ずさる。まるでネズミを追い詰めるネコのようだが世祖のポーズはネコというよりカバディだ。俺だったら世祖の背中にカバディカバディって書き込むね、絶対に。 「バーン、バーン!」 「おおおお、お前! 何を知っている!!?」 「#名前2#、ばーん、ばぁんて!」 「世祖、そろそろ黙れやさー。すんません、こいつ最近爆弾テロのニュースみてからこんな感じでしてね……」 まあ、そのテロリストに狙われたのはあんたみたいのようですけどね。 俺の言葉に男は脂汗をかいて腹に手を当てた。腹に巻くとか古典的な手だな……。だが残念ながら俺は爆弾の解除法は知らない。ここは警察に任せるしかないだろう、と電話をとると男は焦ったように携帯を叩き落とした。 「やめてくれ、アイツらは俺のことをどこかで監視してるんだ…。ここで俺がやらないと、娘が…娘が殺されちまう!!」 男の言葉を聞いて世祖がピンと背筋をのばしこれまたピンと指さした。 「#名前2#、あそこ!」 「んー?」 「あそこ、行く!」 指さされた場所はモデルとかがよく名前に出すアパレルブランドの店。一瞬迷ったが世祖は買い物したいわけじゃないだろう。仕方なく行くことにした。 「お、おい!」 「おじさん、すぐそこのフードコートんところに天パでグラサンかけた人がいるからその人に解除頼んでよ」 「え、あ、何を…?」 「死にたくないんじゃないの? 時間どうなってんのか知らないけど時は金なりって言うしやった方がいいとは思うけどね。それじゃあ俺たちはテロリスト捕まえに行くから」 男は慌てた様子でフードコートの方に走っていく。テロリストっていうと公安の管轄か……。俺はそこにコネクション持ってないからなあ。なんて考えながら階段をかけのぼった。自衛隊での訓練に比べればこんなの楽勝だな。 店に入ると女達は楽しげに服を見て回ってる。世祖が俺を引っ張って窓側のマネキンのところに連れてきた。何の変哲もないマネキンだ。強いていえばこの洋服はイマイチだ。 「首!」と、世祖に言われてネックレスに触ってみるとチェーンのところに極々小型のチップがあった。 「チップ?」 「ちょっと、アンタそれ…!」 店員らしき女が危機迫った表情でこっちに歩いてくる。その距離500メートル。服の置かれた棚は倒され、ショッピングを楽しんでた女達は消えていく。すまんな、姉さんたち。 「世祖、あれは?」 「バンバン! ダメ!」 「オーケー、倒してよさげだな」 先に仕掛けてきたのは向こうだった。ヒールだってのにすごい脚力で空に飛び上がって俺に後ろ回転蹴りを決めようとしてきた。と、こんなふうに説明できるのは世祖が後で教えてくれたからだ。 ぶっちゃけ相手が来たら倒すって言うのが体に染み付いててすぐさまその飛んできた脚を拳でたたき落として体を前に動かし掌底で女の腹を殴った。 まあ勿論女はそれでやられてはくれなくて、後ろに反ったまんまで足を俺の顎めがけて振ってきた。なんとか顔を逸らせたのだがほっぺたにヒールがこすれてかすり傷になった。女のヒールって怖いなあ。 そこからはファイティングポーズを決められちゃって仕方なく本気で戦うことになった。あんまり騒ぐと後処理が大変になるのだがいまはこいつを俺のもとに留めておくことが大事だ。 まずは右で一撃くりだすと女の体は下に沈み足を払われた。ギリ片足だけで済んだが上半身のバランスはもう崩されてる。尻もちをつくように落ちそうになったが、女の手に小型拳銃を発見してなんとか前に倒れた。女の手を俺の腹へと向けてそのまま一緒に倒れたのだ。体を突き抜ける音がして、血が流れていく。貫通したようだわ、よかったー。とか思っていたらようやく警察がやってきた。 世祖の泣き叫ぶ声がようやく聞こえてきて、やっぱり本気でやると周りが見えなくなるからダメだななんて俺はちょっと反省をした。 でも警察に捕まって話を聞き出されそうになって病院行かないと!となり店を出る頃にはもうそんな反省忘れて後始末のことしか考えていなかった。 ** 後日、待ち合わせの人たちとまた会った。あの後の爆弾処理はそんなに難しくなかったそうで、ちゃんと娘さんとも再会出来たそうな。 「お前、ほんと何やってんだよ……」 警察病院でチップの話を聞いたり、警察嫌いでこっちに来ない世祖の通訳になったりしてた。と答えると「そうじゃねーよ! てめえが何でそんな爆弾犯とバトったのかを聞いてんだ!!!」と力強く返された。 「まあまあ、松田。そんなに怒るなよ…。世祖ちゃんも#名前2#君も反省してるだろうし。まあ、確かに銃弾を腹にわざと当てるのはねえ…?」 「あー、…すんません……」 松田陣平と萩原研二。沖野さんが取り持ってくれた爆弾処理犯の人で、前にも世祖が爆弾を見つけて以来のお知り合いだ。珍しく世祖が警察関係で嫌がらないので俺はよくあてにして連れ出しているのだが、すぐに怒りやすい松田さんと宥めながらも俺を怒る萩原さんという似たもの同士なお二人。大切にされてるんだなーとは思うが、どうも本丸に帰らないとという思いがあるので線引きなども考えてしまう。2人はそんは線を飛び越えて世祖と仲良くなっているのだが。 「ほんとーにすんません、待ち合わせの場所も近かったし丁度いいかなって」 俺の言葉に松田さんはまだ中学生なんだから気をつけろよ、とタバコのにおいが残る手で俺のほっぺたをペチペチ叩いた。病院内ではくわえタバコができないからヘビースモーカーのこの人たちにとっては辛いだろうに。 「そっすねー」気をつけようとは一応思ってるんすけどね。世祖に言われると動いちゃうんすよー。 この世界でも世祖のサヴァンと自閉症は健在だ。そして脳の解放された力も。沖野さん曰く、世祖は元からそういう体なのでどこの世界にいても力は持ち続けるんじゃないかということらしい。 世祖はその超人的な記憶力と論理的思考もあいまって黒の組織でハッカーとして所属している。最初は監視もついていたが世祖がすぐに逃げる、殺す、精神崩壊させる、というリアルSAN値0のことを何回もやるうちに監視は消えてそのまま依頼されたことだけやるようになった。 組織もまさか幹部クラスの男を使い物にならなくしてボロボロになった人間を返されるとは思ってなかったらしく今じゃほとんど会うこともない。自由になった世祖はやっぱり奔放でこうやって俺を事件に巻き込むことは多々ある。 元自衛官でMAを習っているとはいえ攻撃をすべて防げるわけじゃない。そんなわけで俺はいまこうやって入院する羽目になっている。 「#名前2#君も毎度無茶をするね」 「無茶なんかじゃないっすよ。俺はただの動く駒っすから」 俺の言葉に松田さんも萩原さんも複雑そうな顔をした。口の中にたまった煙を吐き出したいような飲み込んでおかなきゃいけないようなそんな顔だ。 松田さんはわざと眉をよせて口をひねり曲げてしゃべりだした。 「お前がどう思ってんのかは知らねーけどさ」 ――お前が傷ついたら誰かが悲しむってことそろそろ分かれや。 松田さんはそう言って病室を出ていった。萩原さんは苦笑いして「あいつ素直じゃないからな…」と頭をなでてくる。 「だがまあ、俺も同感だよ。君はもっと大人を頼るべきだ。俺も松田も、心配で眠れなかったよ」 俺はちょっと黙って「それは、すんませんした」と謝った。 そうか、心配する人たちのことを考えると俺はもう少し頭で考えて行動するべきなのかもしれない。いつもは世祖に判断を任せっぱなしだった。 「はは、やっぱりイエスとは言わないんだね」 「…まあ、俺は無茶してるとは思うんすけど……。でも、あそこで戦わなきゃ世祖が狙われるなーって思ったんで」 「世祖ちゃん?」 「俺、約束したんすよ。今度こそ世祖と離れないって」 ーーだから世祖が死んだらその約束は反古になっちまうでしょ? 萩原さんはそっか、と言ってじゃあ今度は#名前2#君が死んでもその約束が反古になるって気づくべきだね。なんて笑って部屋を出ていった。 あー、なるほど。そんなこと思いもしなかったなー。 俺はうんうん、と頷いて「ありがとうございます!」と扉の奥にいるであろう男の人たちに声をかけた。 まあ聞こえてなくても変人扱いされるだけだから気にしないけどさ。