包丁藤四郎と不動行光
大坂城を掘っている時はわりと審神者たちは暇だ。レベルの高い奴らは自分たちの引き時を分かっているので1振り引率につけてあとは低レベル帯を育てるための戦場代わりである。 なので、そう、何が言いたいかといえば世祖が暇すぎてぶっ倒れているのだ。 包丁藤四郎は言い難い話だが人妻が好きらしい。俺もジャンルとしては嫌いではない類だが、刀剣男士たちからすればそんなのって…!と潔癖を発する奴らといいよねーと頷く刀たちとご勝手にーと興味を示さない(もしくはそういった性癖にも理解はあるが共感はしない)刀剣男士とに別れた。ココ最近ずっと気持ちが沈んでいた一期一振は潔癖に属している。意外だったのは三日月が一期と同じ潔癖側だったことだろうか。爺と称するだけあって年の功はかなりあると思ったが、ネットでいうNTRに似た系統はダメらしい。なるほど。それと意外にも短刀たちは共感を示す側だった。その幼い見た目で人妻もいいよねーと言う彼らになんとなく悲しみを覚えたが実際に好きになる人は別だと言われてこれまた納得した。ズリネタと付き合う女が違うってのは普通によくあることだ。(イケメンの奴らは違うのだろうけど。) ここで全て発表するのも面白いが長いので割愛して、とりあえず出発させた。遠征に行かずとも潤沢な資源に、傷つく刀剣たちも少なくなったので遠征ガン回しはストップして今はみんなでお休みモードだ。そう、それで世祖はぶっ倒れている。眠くもないが何か面白そうなことも無さげだとアパシーに陥っているのだ。映画やアニメを見せても興味を示さず、いつもは禁止しているゲームを掲げても反応を示さない。 「世祖ー」 「ぅむぁー」 「うまー」 「んーん! ん! ぁあ!」 「いや何言ってるか分からない……。せい、わかる、ないー。ないー」 「びゅー」 「ぶー」 ダランダランの世祖を抱き上げると首に手を回してギューッと力を込めた。サルっぽいな、と思ったが言うと怒られるのでやめておく。そのまま虎徹の誰かもとに行くことにした。最近、奴らと世祖が遊んでいるのを見ていないのだ。 「蜂須賀ー」 「#名前2#さん」 内番の仕事で三日月と蜂須賀、それと三日月のお目付け役の厚が縁側に座っていた。干し草をゴミと一緒に燃やしているのだ。どこかに火が移らないように見るのは当たり前で、その時に休むのはよくあること。火に近づいた世祖は元気を取り戻して#名前2#の背中からずり落ちるとそのままパキパリと音を立てながら焼かれていく干し草の山に近づいた。 「世祖、危ねーって!」 「厚、面倒見るの頼んだ」 「はぁ!?」 俺も一旦休憩するわ、と蜂須賀の隣に座ると「三日月がまた吐血したらどうするんだい。彼の隣に行きなよ」と背中を押された。 「んじゃあ、邪魔するわ」 一度下ろした腰を持ち上げて三日月の横に座ると三日月はえへへとまるで少女のように可愛らしく笑った。こいつ爺じゃなかったか? 「最近、調子どうだ? 蜂須賀も三日月も何も言わねえし」 「俺の方は大丈夫だ。浦島だけじゃなく贋作もきちんと話しかけてくるからな」 「そっか」 「蜂須賀も昔に何かあったのか?」 三日月の言葉に#名前2#はにへらっと笑い、蜂須賀は恥ずかしそうに顔を俯かせた。そして「俺は、顕現当初しゃべれなかったんだ」と呟いた。 蜂須賀虎徹がなぜ一時期しゃべれなかったのか。その理由は世祖曰く本霊の穢だったのだがその穢は青江とはまた違うもので自尊心が膨らみ過ぎて周りが見えなくなったものというのが結論だった。鎧は一々煌びやかなのは当たり前で、そこにあえて兜が着けられたのは蜂須賀の本当の鎧であり見栄の具現化とも言えるものだったということだ。 今は同室となった浦島も長曽祢も蜂須賀に対して対等に接するように言っている。蜂須賀虎徹がどんな刀であれ、彼はこの本丸で唯一無二の存在なのだと知ら示すための会話なのだ。自尊心を守るためでもあるし、それが肥大しないためにも会話をする。兜が取れたのは長曽祢虎徹を迎え入れてから2ヵ月が過ぎたころだった。取れた時は呆気なく、兜の中に纏めあげていた髪の毛が風に揺られながら落ちていった。美しい姿に誰もがどよめいた。あの山姥切国広ですらも、だ。 「…… あ、」 「蜂須賀兄ちゃん。あせんなくても大丈夫だよ」 「ああ。お前は、真作の、蜂須賀虎徹なのだから」 「……っ、蜂須賀虎徹だ。贋作とは、一緒にしないでくれ」 「よーしく。りっち」 「よろしくなー、李徴ー」 その姿はまるで山月記のようで彼のあだ名は一時的に李徴となってしまったが。 「そんな事があったのか」 「あの時の蜂須賀はまじで西洋のやつでさ。演練でビックリするくらいに注目集めてんの。いつから西洋刀が顕現されたんですかー?とか聞かれてさ。さすがに笑ったわ」 おやつに置かれていたぬれ煎餅にかぶりつく。#名前2#はそれを3口で食べ終えるとゴクリと大きな音を鳴らして飲み込んだ。 「俺の話はもういいだろう。三日月殿はもう平気なのか?」 「まあな。世祖の霊力が穢と共に段々と入れ替わっているのを感じておるよ」 「そっか。なら良かったわ。お前の穢は結構強かったから心配だったんだよな」 ちょこんと三日月の頭の飾りの揺れを直して#名前2#は厚と格闘しながら火に近づく世祖を捕まえに行く。赤くなっていなくても熱いんだ、と言い聞かせているのに世祖は木をポコポコ振り回すのがお好きらしい。近づこうとしては厚に阻まれている。 「ほら、世祖。蜂須賀んとこにぬれ煎あるから」 「あついー」 「火の近くは当たり前ですー。厚、三日月のタオルがほつれ始めてたから新しく持ってきてやってくれ」 「タオル? 分かった」 三日月用にはまだ消毒したタオルを使っている。蜂須賀には#名前2#が帽子代わりに頭に乗せていたタオルを水洗いして渡した。まだビッチョリしているそれに蜂須賀は苦笑いして「仕方なく受け取るよ」と首にかけた。 「んじゃあ、行ってくるから。蜂須賀さんと三日月さん、火ぃ頼んます!」 「あい、わかった」 「それじゃあ俺も配膳手伝いに行ってくるわ。世祖、置いてっていいか?」 「土いじりさせても構わないなら俺達はいいよ」 「なら頼む」 厚の向かう方向とは逆の方向に#名前2#の背中が向かう。ばいーと世祖が手を振りながら蜂須賀と三日月の間に座ってぬれ煎餅にかじりついた。 「りっち」 「なんだい?」 「ち、や、ぁくだ、さい」 「……」 これは、離れて良いのだろうか。蜂須賀の頭がカシャカシャと動く。三日月がなにかするとは思えないが、世祖の方から何かしでかしたら……。ちらりと見た三日月はニッコリと微笑んでいる。 「世祖は茶が欲しいようだな」 「……ああ、そうだな」 ここは、三日月に任せてみよう。何かあった時は……その時はその時だ。 2人きりになって世祖は三日月と視線を合わせた。三日月も体を向けて合わせる。合わせた時間は1分もかけていないが、その間に三日月の心はまるで探られるようにジットリと、何かが蠢く。モソモソと虫が動く感覚だ。 「みか」 「ああ」 「#名前2#、すき?」 「……そうだな」 これはおそらく好きという感情と呼べるものか分からない。三日月にとって初めての感情なのだから。#名前2#に会いたい、隣にいたいと思う。でも、そこにはなんの欲もないのだ。 「……みか、」 「なんだ?」 「……ううん」 世祖はそのまま何も言わずにぬれ煎餅を食べた。三日月に対して止めろとも言わず、ただ真っ直ぐに前を見る。 「世祖よ。俺は、#名前2#のことを好きでいて。よいのか?」 「……」 世祖はやはり何も答えない。真っ直ぐに前を見つめる。そして、一言ぽつりと答えた。 「#名前2#、きめる。せい、いう、ない」 そう言った世祖の顔はやけに寂しそうにしていて、三日月までもが切なくなった。 「……そなたが嫌なら、俺は諦めるぞ?」 三日月のことばに世祖はまた首を振る。三日月と#名前2#とが一緒にいることを嫌とは最近は思わなくなった。だけど、それとこれとは別なんだろう。 「……難しいものだな」 厚と蜂須賀の歩くあとが聞こえてきた。世祖は本日3枚目のぬれ煎餅に手を伸ばした。 皿配るからな、と宣言してから#名前2#は大机をガコンガコンと組み合わせて皿を配る。今日はラーメンを食べるので小皿と椀を1人ずつ配っておくのだ。 ぽんぽん置きながら#名前2#は三日月、最近変わったよなあと先ほどの彼を思い浮かべる。 三日月宗近。 最初あった時は穢にまみれていて、真っ黒で、そして目だけが爛々と光り輝いていた。欲が渦巻いていて人間を見つめていないような……そうそう、世祖が#名前2#と視界を入れ替えた時のようなあんな感じだったのだ。 だが今はそんな陰りは見えていない。いい傾向だ。鼻歌でも歌いたくなる。#名前2#は未だにファンのピンクレディーのSOSを鼻歌交じりに小皿を置いていく。チャルメラのマークのこの小皿セットは前にオークションで競り落とした。あの本丸内で白熱したオークションはまだ覚えていて、刀剣たちはいかにネットというものが素晴らしいのかを知ったはずだ。(あの時いた刀剣たちだけだが。) その日のラーメンは塩ラーメンなのにチャーシューたっぷりでなぜか脂が多かった。 「包丁藤四郎だぞ! 好きなものはお菓子と人妻! よろしくー!」 ……。人妻。 oh、と言いたいところだが性癖については誰も文句は言えまい。とりあえず、この本丸には人妻はいないからAVで我慢していろと言って近侍にした不動を連れて世祖の部屋へ行った。書類の郵送は終わらせてあるのであとは沖野とのビデオ通話だ。 専用の機械のボタンを押すとアップデートされたらしくパネルの表示のされ方がヒュンッとかっこよくなっていた。後ろに控える不動も楽しそうだ。 「やあ#名前2#くん」 「どうもっす」 「世祖の調子はどうだい?」 「最近はダルにしてましたが、馴染んできたのかかなり普通にしてますよ」 「確かに、ココ最近は顕現がハイペースだからね……。ああ、刀剣男士のカゼの報告だけどあれは政府(こちら)での流行だから気にしなくていい。それと、今週中にこんのすけを戻してくれ」 「こんのすけを?」 「渡したいものがある。プロテクトが硬くて転送出来そうにないからこんのすけに持たせるよ」 「あー、なるほど。了解です、金曜日は世祖と風呂に入れてるんで木曜でいいっすか?」 「ああ」 「ほら、世祖。沖野さんとお別れして」 膝の上に収まっていた世祖はわいばいと手を振った。沖野も手を振り返して消える。通信が切られたのだ。 よし終わり。と#名前2#が呟く。ある意味の合図に近侍はきちんと気づいたらしい。 モゾモゾとしていた不動がおそるおそる#名前2#に近づいてきた。顔を真っ赤にしながら、緊張の汗をかいている。 「あ、あああ、あのさ!」 「どしたー」 「……! そ、その…」 「ん?」 「俺もなんか機械が欲しい!」 「……ほう?」 首をかしげた#名前2#と世祖に不動はわたわたとしながら話をする。万屋で見た別の本丸の山姥切国広がスパイごっこのようにワイヤレスマイクとヘッドホンを使っているのを見てからどうしてもそう言ったものが欲しくなったらしい。話を聞く限りそんな山姥切国広の方が気になるのだがそこはなんとか抑えて、どんなのが欲しいんだ?と聞く。面白そうだったら買ってやるが、全く誰も楽しめそうになかったら誉を取り続けたご褒美に回されるのだ。 「! 拳銃がいい!」 「拳銃かあ」 実弾はかなりきつい。不動のような体では肩がいかれてしまう。今のところ、日本では入手するのは簡単だがエアガンやペイント弾を使うもののみだ。あとは陸奥に頼むか。いや、でも#名前2#の手元近くに置いた陸奥は嫌だと言うようにガタガタ鳴らしている。 「ペイント弾のやつなら簡単に用意できるが」 「ぺいんと弾?」 「当たった人には色がつく玩具だな。最近のやつは当たるとわりと痛い」 「……それじゃ、選択が面倒だな」 「だな」 うーんうーんと悩む不動になんだか#名前2#も昔のことが思い出されてきた。そういえば、ペイントではなく水で本丸中の者達と戦ったことがある。水鉄砲というのは舐めてはいけない。本気でやればかなり楽しいのだ。 「なあ不動」 「はい?」 「水鉄砲ってのはどうだ?」 「……はいぃ?」 なんかすごい顔で返されてしまった。 とりあえず楽しいからやってみろよ、と手渡された水鉄砲に不動はため息をつく。やはりダメ刀だからこんなもので満足しろと言われているのだろうか。廊下を歩きながらジロジロとポンプを装着するタイプの水鉄砲を見ていたら縁側の外から声がかけられた気がした。 「……俺のことか?」 「なんだ、聞こえてるんじゃないか! なあなあ、そこの刀さん! いいもの持ってるな! 貸してくんない?」 「刀さんじゃなくて不動行光だ」 「あっそう。俺は包丁藤四郎」 「知ってる」 「ふーん? なあ、その水鉄砲貸してくれよ。畑仕事ってつまんないんだもん」 「……」 なぜか貸す気が起きなかった。不動はぎゅっと水鉄砲を握りしめて「嫌だ」と言う。 「えー、何でさ? これからそれで遊ぶの?」 「遊ばねーよ」 「ならなんで?」 「何となくだ」 「答えになってないよ。そりゃないよ!」 「うるさい!」 これは、俺んのだぞ!! 思わず力強く言ってしまい顔が真っ赤になる。水鉄砲ごときで何を熱くなっているのか。 「……なら、俺も#名前2#さんに頼もーっと」 「…なんで、これがあの人のだって」 「兄弟達から夏には水鉄砲で合戦したことがあるって聞いてたもんね!」 「ふん、そーかよ」 織田組のやつらは教えてくれなかったが、あいつらはそういったタイプではない。どうせ水鉄砲合戦でもすぐに負けたのだろう。不動と同じ、負け犬だから話さなかったのだろう。 「一番強かったのは意外にも左文字三兄弟だったんだってー」 「……」 何なんだ、宗三のやつは……!! 不動の頭の中に『勝者はひけらかさないのが美しいのですよ』と笑う宗三が現れた。その通りかもしれないが奴が言うとなんだか腹が立つ。 「江雪さんが給水ポイント知り尽くしてるから#名前2#さんたちも勝てなかったんだってさ」 「こら、包丁くん」 ぽかりと包丁藤四郎の頭が叩かれた。縁側に近寄ったまま喋り続けていた彼に、同じ畑当番だった大和守安定が連れ戻しに来たのだろう。そう思っていたら彼は不動の手を引っ張り座らせると自分も座った。 「休む時は声かけてよ。それに水鉄砲の話もして」 「あはは、ごめんなさいー」 ひょい、と包丁の方も不動の横に座る。あれ、なんだこの状況。不動が気づいた時にはもはや彼らから逃れられなくなっていた。 大和守安定はその名前の字から#名前2#には「あんてい」と呼ばれているらしい。最初は慣れなかったけどもうずっとそれだからねと笑う彼はどう見ても”安定”した精神はしていない。不動は知っている。彼がゴキブリという虫に対して遺憾無く暴力性を発揮することを。しかも怖がりながら。しかもやり方がえげつない。安全ピンでぎゃああああと言いながらも仕留めて世祖のところに持っていき酸素過多で殺すのだ。怖すぎて泣くかと思った。 「そうだ、不動も考えてよ」 「何がだよ…?」 「包丁藤四郎のあだ名! ホウチョウって呼ぶのはなんか変でしょ?」 確かに台所にある包丁と被るかもしれない。本人は気にしてないらしいが、包丁藤四郎という名前で畑に回されたんじゃなかいとは気にしているらしい。#名前2#さんのことなので十中八九そうである。 「#名前2#さんだと、面白いあだ名つけるけど分かりにくい時あるしね」 「まあ、確かに」 蜂須賀を間違いにしても李徴と呼んだのには驚いたし一時期あの長谷部を紫と呼んだのにも驚きだ。刀にとって名前はかなり重要なものである。他の刀と分けるためにあって、その名前を冠することは自分の名声を背負うということでもある。それを、……うん。何も言うまい。 「包丁…」 「ほっち、とか」 「ホッチキスみたいじゃねえか?」 「なら不動はなんにする?」 「ツツミン」 「ピクミンみたいー。粟田口ピクミンっていそうー!」 「……包丁って英語で何だっけか?」 「包丁だから……ナイフ?」 「あ、かっこい!! 俺、それがいい!」 「ナイフ藤四郎。……字面ひどくね?」 「そう? 僕はかっこいいと思うけど。包丁も気に入ってるんだしそこから攻めようよ」 そう言って安定は小石を拾い上げ地面にカタカナのナイフとアルファベットのknifeを書く。なぜnの発音でkがいるのか不思議であるがラテン語の考えてる事はよく分からない。 「ナイフ…。ナイフ、」 「ナイフかあー」 呟いていた不動の両隣は突然ぴったりと動きを止めて顔を見合わせる。間に挟まる彼の気持ちはなんなのか。 「ナイフするって動詞ありそう」 「あー、ありそう」 「お前らあだ名から飽きるの早くね!!?」 「えー、別に早くないよ。それに、ナイフスってかっこよくないかな?」 「かっこいー!! ナイフス藤四郎ってイケメンみたいー! 人妻に人気ありそうー!!」 「……お前らがそれでいいなら、それでいいよもう」 畑仕事に戻るという彼らを見送り不動は水鉄砲を見つめる。これから話が始まったのになぜかナイフス藤四郎が生まれるとはこの世って分からない。 「あ、不動ー」 「? #名前2#さん。どうかした、!?」 #名前2#に呼ばれて振り返ると彼はなぜかびしょ濡れになって立っていた。しかもご丁寧に足はタオルで靴のように結んである。そして不思議とガショガショ音がする。一瞬魔物かと勘違いしてしまった。 「いやー、お前を追っかけて小型水鉄砲持ってたらさっき宗三に見つかってさー。ちょっとバトったらこんなんになったわ。お前もやる?」 ぶんぶん首が千切れるのではないかというぐらいに振った。そんなのやってたら殺されそうだ。主に髪の毛が。 「あ、そう。残念」 「……」 なんと言うか、不動はこの本丸でビックリする位に浮いてる気がする。ここは基本が自由だ。最終ラインの世祖と#名前2#さんに怒られることをしなければ基本的に許されていることが多い。こうやって水鉄砲で遊ぶなんて普通の刀はしない……と思う。 こんな時、どうすればいいのか分からない。甘酒を飲んで忘れても次の日には酔いと共に忘れきれなかった思いが蘇って辛い思いをするのだ。 「なあ、不動」 「……なんすか」 「そんなに気負わなくてもさ。お前、うちの刀なんだから」 「……」 「織田信長んとこいた時には出来なかったことやりゃあいいんだよ」 「でも、俺は下げ渡されたダメ刀だ」 「ここは下げ渡される場所だぜ? みんな、そうだ」 「は?」 「ここな、ブラック本丸から出てきた扱いきれない刀剣たちを収容すんの。だから皆ちょっとおかしいヤツらばっかり」 「……」 「お前や太鼓鐘みたいに政府特設んとこから出てきたやつは違うけどな」 「……だから、何だって言うんだ。俺はやっぱり混じりきれないじゃないか」 「? 混ざらなきゃいけないのか?」 それは、どうだろう。 刀は他の刀に混ざらないように名前があって切れ味を保証する名前をつけられるのに。混ざらないはずの存在なのに。なんでか#名前2#はそう言ってるような気がした。さきほどまであだ名の話をしていたから余計に。 「お前がそんなに閉じこもってても、誰も何もしないかんな?」 #名前2#はまた歩き出す。ガショガショとなる音は腰につけた小型水鉄砲がぶつかる音らしい。 閉じこもらない、なんて。じゃあ何をすればいいんだ。 機械が欲しい。誰かが俺を見つける目印になるような。拳銃が欲しい。大きく音を出せるし、戦いにも使えるから。俺は、俺も、あだ名がほしい。誰かが俺を待っててくれる気がするから。